318 :靖国ネタ:11/08/25 22:49:51 ID:gAzv32vY
いえふー。靖国ネタ3かいめいきます。 
おそらく大地雷を踏んでいます。1000年後と設定がアレだという場合、すたれたんだよ、で脳内保管をお願いします。 


319 :靖国ネタ:11/08/25 22:50:36 ID:gAzv32vY
同時刻。ロッタ家主城、その城下。 
そこには人の流れがあり、営みがあり、戦乱をやっと忘れつつある民衆が暮らしていた。 
城の主は軍曹。ギーコ・ラ・ロッタと呼ばれる男である。 

城門へと続く通り、そこにじろじろと見られる姿が会った。 
その先に見えるのは小柄な、しかしいかつい印象の少年。 
そして長身で衣服を整え、旅支度を済ませた青年だ。 

だが、彼らが見ているものはその2人ではなかった。 
旅支度をした成年の荷物と思われるものを背負い、少年の傍らを歩く虎。 
しかも巨大な牙をむき出しにして見せたその存在が彼の傍らを歩いていた。 
彼の使い魔である。 
彼…ナオエは少ししょんぼりとしていた。 
彼はサモンサーヴァントにおいて虎を召喚した時に怖い印象がまったく浮かばず、 
目の前にいる相手に対して浮かんだのが『可愛い』 
そして契約の際ににゃあ、とないたところから、猫と呼ぶことと決めた。 
名前は別に決めるとしても、こいつは、僕の使い魔、僕の猫だと。 

そして、母に報告した。猫を召喚したと。 


320 :靖国ネタ:11/08/25 22:51:16 ID:gAzv32vY
「何度聞いても貴様が悪いとおもうがね」 

話し相手になっている青年は実は平民である。 
ナオエよりも少し年嵩であり一つ二つ上。髪を撫で付け、米神の部分に 
白くメッシュが入っているのが特徴的だ。本人曰く生まれつき、らしい。 
メイジと平民。本来相反するどころではない身分の差だが二人は実際仲がよかった。 
理由の一つは、青年。ミコトの父が、ミヤビ一行の逃避行中に付き従って、 
倉門隊の戦闘にも前線で参加していた武官だということ。 
そして戦乱が収まってからロッタ家に仕えることになり、授かった息子が程なく 
ロッタ夫人が授かった末子、ナオエと年齢が変わらなかったため、守役に選ばれたことだ。 

ギーコは本来貴族としてはあってはならないことだろうが、メイジと平民を表立っては区別しなかった。 
式典においては流石に差を設けたが、平時においては魔法を使わぬ、使えぬ者。という区別ではなく 
優秀か、優秀でないか。為しえるか、為しえないかで判断した。 
そして常にそのことに異を唱えるものはいたが常にこう答えたという。 

「メイジが優秀ならばそれを証明してみせよ」 

メイジであることが関係ないこと。 
例えば計算を含む事務、教育(特に礼法など)、料理、技術開発。 
などといった要素に関して差を設けなかった。 
軍事であってもついこの間まで、メイジと平民が共に戦っていたのだ。 
この時期のフリースラントにおいては、いまだ戦友という意識が一部にあった。 

このことはそう時が立たないうちに廃れることになるのだが。 



321 :靖国ネタ:11/08/25 22:53:27 ID:gAzv32vY
「やはりそうか…?しかし…」 
「いやしかしもクソもなく。猫といわれてイメージするのはやはりあの小さな子猫だな。 
 こいつが出てくれば驚く。悲鳴も上げる」 

使い魔を見ながら話すミコトに、ナオエはなおさらしょんぼりしてみせた。 
そのときに彼の『猫』を始めてみたロッタ夫人は、悲鳴を上げ、警備の兵士達が臨戦態勢で集まったという。 
まあ先日、友人達に手を回して用意してもらった 
劇団フロンティアの『ユアネーム』のチケットを父の分と提供したところ、喜んで貰えたが。 
父のほうはかなり困った顔だったけれど。 

「今度はどちらだったか?」 
「北だ。今度は長くなりそうだな。もう、向こうも世代が変わる」 

ミコトの任務は野に下った、フリースラント指揮体制に加わらなかった、元倉門隊の懐柔だ。 
倉門隊に参加した平民は当時かなり多く、戦術によって、銃によって平民がメイジを打ち倒した。 
本来銃による力であるそれではあったが、中には 
「戦術をもってすればメイジに勝利しうる」そう考えた者達もいた。 
そんな者たちがメイジに対して反逆、あるいは市井のメイジと結びつき、他国と結びつく。 
そんな報告がいくつか為され、それに対して交渉を行う。 

それが、ミコトの任務だった。 

「あちらも現役で戦闘に参加していたものたちはだいぶ年をとっている。 
 本人であれば妥協点も見つけやすいのかもしれないが…世代が変わっているとな」 
「戦える、という伝聞のみが先行し、なぜ戦えたのか、を体験していない世代か」 
「まさに、な。であるがゆえに妥協点を引き出しにくい。とはいえ…亡命されるわけにもいかん」 



322 :靖国ネタ:11/08/25 22:54:07 ID:gAzv32vY
はあ、と息を吐いたミコトは、ここに来るまでに購入したライスプレートを一つかじる。 

「またじっくりという羽目になるだろうな。今回はメイジも多く結びついているらしいし… 
 私としては大人しく嫁でも取って暮らしたいのだが。世の中そううまくは行かないらしい 
 メイジという奴は、あらゆる意味で厄介だ…まるで…」 
「他で口にしたら首が飛びそうだな。物理的に。…まるで?」 

「まるで竜と戦っているような、そんなイメージだよ。 
 途方もなく巨大な力。相手の気まぐれで私の命など消し飛ばされる。 
 戦術もそういう意味では同じだ。メイジと対して変わらないよ。私のような戦闘未経験者は」 
「だが、お前は立ち向かう」 
「それが仕事であり、為すべきことだからな。父の名に泥を塗るわけにも行かないし。 
 そう、全ての竜と交渉するような、そんな気分だよ。終わりのない、竜との交渉だ」 

クク、と二人で笑い会った。 
丁度タイミングよく、城門まで2人はたどり着いた。 



323 :靖国ネタ:11/08/25 22:56:10 ID:gAzv32vY
「私の仕事など、フリースラントの歴史に残ってはいけないことだ。 
 太祖グラモン公に付き従いし兵士達は、戦乱が終った後もことごとくがその元に残った。 
 こうでなければならない。 
 ナオエ、以前君は反対したがやはり残すべきではない」 
「ミコト?」 
「私の名を公式文書に一切残さず、君に使える従者Aとすべきだ 
 公式に置ける私は…名前は要らない。名前を持っていないものがなにをしても、 
 それは歴史に残らない。歴史に傷はつけない。 

 だから…私は、ジョン=ドゥでいい。私の名を残す時は、そうしてくれ」 

ナオエの使い魔から荷物を受け取ると、城門の先で待つ彼の仲間に向かって歩いていった。 
その姿はひら、と背後のナオエに向かって手を振りながらのものだった。 

 しょうがない…か…そう思いながらナオエは来た道を戻ろうとするが、そうはならなかった。 
 彼を呼び止めるグラモン到着を伝える先触れの声は、すぐそこに来ていた。 


324 :靖国ネタ:11/08/25 23:00:32 ID:gAzv32vY
以上です。 
最初のジョンドゥとロッタ家が抱えていた問題。 
実際、礼法を教えるようなものがいないとか 
倉門隊経験者の賊徒化とかはあったんじゃなかろうか。 
その吸収,回収の為の交渉役として存在したのが最初のジョンドゥと言う感じで考えたり。 

ちなみに 
ライスプレート→せんべいのこと。多分早晩平民食になるか、すたれるか。 
ユアネーム→『君の名は」トリステイン版。既出であれば申し訳ないです。 
         一応ざっとのシナリオも考えてはありますが。 


325 :靖国ネタ:11/08/25 23:03:27 ID:gAzv32vY
平民が弓剣でメイジに勝てるか、という質問に無理、と答えられていたので 
メイジに隠れて平民相手の山賊家業に…とかそういう風になってしまったという報告が来たので、 
責任もって倉門一派が主導して吸収に当たったと。そんな感じで。 
殲滅してまたにがしたりもっと大事だからね!ではまたいずれ。突っ込みどころ満載なのは気にしないでください。 


326 :名無しさん :11/08/26 17:53:05 ID:50IYunch
乙。 
確かに、一度メイジに勝利できた事の本質を理解せず、 
「あれ、平民でも勝てるんじゃね?」的にとち狂う輩はいただろうなぁ。 
雑兵物語のやる夫も、メイジを見たことが無かったこともあって、世の中舐めてたし・・・ 


327 :名無しさん :11/08/27 16:26:11 ID:G+kT9LKX
乙。 
人は忘れてしまう生き物なのですね。 
しかも恐ろしい事に忘れた事は伝えられず最初から知らない事になってしまう。 




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