260 名前：1/16 ：11/02/18 00:07:36 ID:42+Y3652
今は昔、アルビオンの大陸の奥深く、風の谷といわれる精霊の住まう地の近くに、一人の青年が住んでいた。
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ヽ 、 l | ｌ l / .／ ／
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家族もなしに谷に一人で住んでいたその青年は、精霊を奉る祠の管理という大役を担っていた。
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／ ─ ─＼
／ （一） （一） ＼
| （__人__） | 精霊様の胸がおおきくなりますように、ですヲ……
＼ `_⌒ ´ ／
. ノ / ）ヽ く
( ＼ ／__ノi ） , )
. ＼ ﾞ ／ ヽ ヽ/ /
＼_／ ＼_ﾉ
風精霊の大いなる加護が失われてしまえば、浮遊大陸はたちまち海の中へと沈んでしまう。
精霊の機嫌を損なわないように、精霊が望むのならその首を差し出すことを厭わない覚悟さえ
必要な重大な任務だったのさ。
261 名前：2/16 ：11/02/18 00:07:52 ID:42+Y3652
風の吹くまま、気の向くまま。
昔から風精霊は大変気難しい性格で知られている。
機嫌がよければ雲ひとつない好天を恵んでくれるし、雲を呼んでは大地を潤す雨を降らせてくれる。
春の訪れを知らせる暖かな風を吹かせてくれたり、夏の暑さをやわらげる涼やかな風を吹かせてくれたりもする。
かと思えば、雲を吹き飛ばして雨を降らせずに大地を涸れ果てさせたり、雲を呼んで嵐を巻き起こして洪水を起こしたりもする。
木々を枯らす木枯らしを吹き荒らさせたり、極寒の吹雪で大地を凍てつかせたりもする。
＿
..-‐／｀ヽ ￣_ ‐- .
／｀ヽ,.::´ ､ ヽ. ｀ヽ,.ィ⌒ヽ、
′ .／ ／ ./ ヽ. ﾊ.-‐..:Y⌒.､ ﾊ
l :/ ./ / :l: |ｉ､ ｉ:ﾊ. l:.::-‐{／ l i l
. l＼.′ ′/ ／|:.|i || |＼l､.| |:.::／ /: | |
lヽl l .ﾊ/‐-|:ﾊ. |ｊﾉ-─-| | 》 .／:::.:| | べ、別にヤルヲ（仮名）のことなんて、
| .:| | |､＿_,|! ＼| ､＿__, | |《／:|:ヽ: :! | な、なんとも思ってないんだからねっ！！
| ::| ヽ.|｀￣´ ｀￣´ | |::.::/'| : ﾊ: |
| :ﾊ. |八/// ' ////,.′ .:l／ | : :.:l:. |
|/:∧ |:| 丶 {｀) ,./ ,':.::人 | : :.:|: iﾉ
| /: ::ヽ|:| ｒ‐＞:..__ ..:＜:/ /:/|'￣｀ | : :.:!: |
|,'::::ｉ::::::::|__,}lミ|匝||三彡|,ｲ:/={、 | : ;ﾊ: |
| : ::|::::/´i 〈 ,ｲ:{l}::ヽ} ￣ 〉"￣ ｀ヽ | / l:.|
＿＿__
：／ ＼：
：／ _ノ iiiii ＼. ＼
／ （○） （○） ＼
： | （__人__） |： す、すみませんヲ……
＼ ｀ ⌒´ ／
/ ⌒ /⌒Y⌒ヽ ヽ
：| ＼| .i ｲ |
|＼ ／ 人 .＼!
| ＼___／ ＼__/：
| /
| /
全ては風精霊の機嫌一つ。
青年は風精霊の機嫌を損ねぬよう、毎日毎日祈りを捧げ続けていたのさ。
262 名前：3/16 ：11/02/18 00:08:07 ID:42+Y3652
精霊は青年を気に入っていた。
気に入っていたからこそ、敢えて青年に無茶ばかり言っていた。
＿_
.. -‐ ￣ ｀:..ｰ- .. _
／ ＼ ...｀ヽ.
/ ::.､::.‐-ﾊ=-‐ ､
-‐,′.:' ,': .::.. ﾊ::.. l:ヽ:.. ﾊ
/ :ｉ i . /: ,'.::l:::::.. ｉ:. l=-‐'l､: i: l
ｉ . .:| l '::. /' ,' /.::ﾉ｀ヽ:::. |:: |:: :/:l::ｉ::|: |
「 ‐- | .:| ｉ: /l / /／ }:::ｉ|:: | -‐ ￣/ |
＼ 》| ::| |/‐|‐'/ｊ／´ `ｰ─ﾉノ'|:: | 》 ／::i: |
. | ヽ | ::| |,ｨ==ミ､ ',ｨ==ｚ､|::,' |,.イ:;ハ::::|:,..|
| .: :l ::| ｉ: ﾄ弋zﾘ 弋z:ﾘ 'l,′ l:: :i,' |: ,:':: | もう……二人っきりの時は
| : :i: :| ::| |::ﾊxxx xxxｘ/ ,'::..:| l/::: : | 名前で呼んでよ……ばか……
l : :|: :| .:| |:l:人 ` /,.ｲ:./ｊ人| /::,':: : |
,′::|: :| ,'| |:|::::::::..、 (⌒ヽ ..イ::::|/::ﾉ ,':::::l:::ﾊ |
/ ::ﾉ: :| ::/ヽ:lｒ‐､}三三三|l￣￣l|三{ ,.‐- .. {::::.::l::| } |
/ ,':::/: ::ﾉ|:/／ ｀ `ｰ-,===ll__TT_ｊ|==,/ ┌‐｀ヽ::::|::lﾉ..|
. / /::/::::'´::／ ￣ 7 / /:/ .{{_}} |:{〈. l V::: :. |
,' :::,':.::: :::/ / / /:/ :|{.ｊj |:| ::. ＼ l:､: :人
l : :l:: :ｉ ::,′ ／ / _/:/_ _|:|__:.､ ＼__|:::ヽ:: :.＼
| : :|:: :l:〈. ＼／／> /ノ::,.‐ ､:ヽ. /::,.‐.､::ﾊ <ヽ〈::::::ﾉ＼: :.丶
| : :|::.:|: :〉 ／／ /.::／ }:::} {:::l l∧:::.. ＼l:::/ ヽ:: :.＼
＿＿＿_
／ ＼
／ ＼
／ ＼ ニンフ様を名前でお呼びするなんて……
| ＼ ,＿ | そんな大それたこと、できませんヲ。
/ ｕ ∩ノ ⊃―）／
( ＼ ／ ＿ノ | |
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
青年が自分の為に奔走してくれる、自分の為に尽くしてくれることが嬉しかったのだろう。
この世界の根幹を成す超常の存在ともいえる精霊も、人の姿を模していてはかわいいものさ。
現に、その青年が風精霊に尽くしていた時期には嵐や、日照りや、吹雪が起こっても、
不思議と人的被害が起きない程度に留まっていたのは、現存する気象観測記録からも確からしい。
263 名前：4/16 ：11/02/18 00:08:26 ID:42+Y3652
青年と精霊は仲睦ましかった。
だからこそ、悲劇が起きた。
青年を愛してしまった精霊。
精霊に想いを寄せながらも、自らに課せられた責からその想いを胸に留めざるを得なかった青年。
若い二人の気持ちはすれ違い――
＿
_ .. -‐ ￣ ￣ ‐- .. _
／ ,:'´ ／ ＼｀:.､
ｒ-./_ .:/ ／ .／:. / ﾊ:ハ-‐､
/ :/::ヽ..,′ :/: ／:::. ∧ :i:.. l:: }ヽ l
ｉ {､: ::/ .:,' ／ .:/::. / ∨ l､:. |:;ﾉ|:: |
| l: :V .::/,.イ:: .:;ｲ::..;/ ∨;|. ｉ l:,'ﾘ:: |
l ‐- V:| ::,.':＼,'ｊ／/／′ ／:|: |､ |: -‐ ￣l
＼ 》| .::/: ／ ＼., ´ ､／ | |: | l |《 ／
|｀ ＜| .:/:'´l,ｨ‐=ミ、 ,ｨ=‐-､| |: | | |,＞'´|
| ｉ:::ｊ,ｲ:ｉ: |://// //// jﾉ::.| | l::i:: |
| |:: ::i| |: l、 __' _ ,.:|::i:.| jﾉ::l:: | どうしてわかってくれないの……
ﾉ ﾉ ;八|: |::..､ （´.::::ｊ .ｲ:::|::|:.l l::|:: :,'| ヤルヲの……ばかぁ！！
／ ,.:'´ :,.' ,.‐| ｉ ﾄ三≧=====≦三ｲl/ /-､|::|::/::|
. ／ ／ :.:／ / :|人l三三|l r==ｭ l|三ｨ/,.ｲ:. ﾊ､l':. 人
. ／ ／ .::／ l :冫´,'￣l￣ {lｊ}'￣/￣'´V:: l ヽ::.､..＼
. ／ ／/ :.:'′ | :′ ヽ {lｊ} / l::. | ＼::.､.丶
／ ／ ,' ::/ | ::l ｉ:. ＼／ .:,': |:: | ｀ヽ＼:＼
／ ￣￣￣ ＼：
：:／ j :::::＼:::／＼;ﾟ：
;： | ｡<一>:::::<ー>| ：
＼...::::::｡ﾟ~（__人__）~ﾟj （申し訳ございませんヲ……ニンフ様……）
r " ;゜.｀ ⌒´,;／゜
i::: |:::: |::|：
：|::: |::::. :|::|：
：_|::: |::::. :|.´：
：{::: ）::. :',.：
゛‐-.` i：
青年は愛した精霊をこれ以上傷つけたくなくて、故郷を後にした。
精霊の想いに応える事は容易いことだけど、人の身である自分が先に逝ってしまう事はどうしようもない。
寂しがり屋の精霊を一人残してしまえば、その後ずっと寂しい思いをさせてしまう。
独りよがりの拙い思い込みだったかもしれないけれども、その決断は青年なりの精霊への愛だったのさ。
264 名前：5/16 ：11/02/18 00:08:38 ID:42+Y3652
そうして、青年は大陸へと渡り、とある湖に辿り着いた。
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,.(.;；:｡;:(.,⌒.;；:⌒.⌒):::::::::::::::::::::::::::::::::::-:::::::::::: : : : : : : : : : : : : : : : : :::::::::::::::-::::::-:::::::,(.;⌒
故郷から遠く離れたこの地でなら、自分が死んでも精霊がそれを知ることはないだろう。
＿＿＿_
／ ＼
／ _ノ ヽ、＼
／ （○） （Ｏ) ＼
| || （__人__） ..| （ニンフ様……生まれ変わったら、
＼ ﾉi ! |. ／ ヤルヲも精霊になりますヲ……）
/ し' ｀⌒´ .ﾉ
| .／ .／
青年は精霊を悲しませた自分が生き永らえるのを善しとしなかった。
最初から死ぬ場所を探しての、死の旅立ちだったのさ。
265 名前：6/16 ：11/02/18 00:08:51 ID:42+Y3652
顔を洗って、身なりを整えてから死のうと思ったらしく、青年は湖の水を手ですくって顔を洗っていたらしい。
／￣￣￣＼
／ ─ ─ ＼
／ （●） （●） ＼
| u （__人__） |
＼ ｀ ⌒´ ノ⌒⌒ヾ ﾌｷ
／ ` ー─γ ）） ﾌｷ
| ヽ ((
| ） ヽ
（
青年は生まれたときから精霊の存在に慣れ親しんでいた。
ごく自然なものと受け止めていたし、ごく身近なものだと思ってさえいた。
精霊は畏れられるその力を受け止めてくれる、青年のその自然な態度に救われていたし、
特別扱いしてくれないその自然さに惹かれていたのさ。
|! 1 '、 `ｰ-‐′ ｌ │ ｛
│ '、 ﾍ /′ ,' ,'
'、 '、 ﾞゝ、 _／ ,' /
'、 ヽ `ｰ..,,＿ ___,,..-''′ ﾉ′ ｌ 丿
丶 ヽ、 ￣￣´ ノ 丿 ｌ
ﾍ ＼ ／ 丿 /
､ ＼ ﾞ' ､_ _..‐′ ,／ /
丶 ﾞゝ `'‐..__ _..-''´ ／ 丿
ゝ ＼、 `ﾞ'ｰ-....＿＿____＿..--‐" _／ ／ 、
＼ ﾞ' ､_ _..／ ,／ ／
＼ `' 、 ﾞﾞ‐.._ ／￣￣￣.＼ ヲっ！？ _..-'′ ／ ／
ヽ、 ﾞﾞ ､ ﾞ'''-..,,__ ／ .＼ _..-‐'" _／ _／
ﾞ＼ ｀'‐､_ .／ .＼‐"" ..‐'´ ／
`' ､_ ﾞ''-､_ | | _..-''" ,,／
`ヽ､ ｀`ｰ-..__ ＼ ／ _,,..-‐'" _..‐"
／ ＼
だから、湖面の異常に気付くのに遅れたらしいのさ。
湖に精霊が居るなんて――風精霊以外の精霊の存在なんて、考えたこともなかったから。
266 名前：7/16 ：11/02/18 00:09:10 ID:42+Y3652
やあ （=ω= )
ようこそ、ラグドリアン湖へ。
このラグドリアンの美味しい水はサービスだから、まず飲んで落ち着いて欲しい。
／: : : ,./: : : : : : : :/: : : :/: : , '/!: : : : : : |: : :|: : : : : : : : :
, ': : : :／/: : : : : : : :/: : : :/＿/ / l: : : : : : :|: : :|: : : :l: : : : : :
/: : :／ / : : : : : : :/: : : :/´: :/ l｀ |: : : : : : |: : :|､: : : !: : : : : :
. /: :／ /,ｲ: : : : : /: : : : /: : / !:::::::l: : : : : ∧: : ! ＼: :!: : : : : :
/／ // |: : : : : :!: : : : ,! :::/:::::!:::::::::::!: : : :/ ヽ: :| ヽ｀ヽ､ : : : :
!' l: : : : : l: : : :/.|: ,':::::::!:::::::::::::!: : : !:::::::l: |:::::ヽ: ヽ: : : : :
| : : : : |: : :/ !|/'ｰ- |､::::::::::::::l: : l:::::::::', l:::::::::ヽ: ヽ: : : :
| : : : : |: :/l:::::|__ |::::::::::::::!: |:::::::::__'|:::::::::::ヽ;!､: : : :
|: : : : :,!: !: l:::::r ' i !:::::::::::::::| |:::::::::::/｀''―- ､ヾヽ: : :
!: : : ｲ|/: :,!:::::!ヽ-'/::::::::::::::::::l:!:::::::::::!_ /l: :∧: :
',: : l l |': / ｀ ｰ' | r‐' i ./ ! :/: :! : :!
ヽ:| | |: :{ l､ ヽ.ノ,. ' /:/ : : | : l
'.| | |: : ＼ ､__ ` '´ /:/ : : : ,!: |
| |: : : : |ヽ､ __,.、 `ｰ' /:/: : : : :/!/
| |: : : : |: :／／ ヽ ,.. /:/: : : : :/´|: :
| |: : : : |/ / / ,'‐;!ー――,.i' ´-.//: : : : :/ : :|: :
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| |: : ! |／::::::::::::::::: , ': : : : : , ': : : : |: :
うん、『まってた』んだ。済まない。
水精霊の顔もって言うしね、謝っても許してあげようとも思っていない。
でも、この湖の水を飲んだとき、君は、きっと言葉では言い表せない
『ときめき』みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中で、そういう気持ちを忘れないで欲しい
そう思って、この湖で網を張っていたんだ。
じゃあ、結婚しようか。
267 名前：8/16 ：11/02/18 00:09:25 ID:42+Y3652
精霊に好かれる体質だった青年は、湖面に映った水精霊に恋をする呪いを受けた。
_＿＿＿＿_
（⊂二二二⊃）
￣￣￣￣
＿＿＿_
／_ノ ' ヽ_＼
／（≡） （≡）＼
/ /// （__人__） /// ヽ
.| |r┬-| | 喜んでこの湖に身を投げますヲっ！！
＿＿＼ ｀ー'´ ／＿＿
／YYYY / _ノ（ξ）、_ ＼YYYYY＼
.|YYYYYY（＿＿／ ＼＿＿）YYYYYY|
∨ { } ∨
{ }
{ }
ヽ | /
ヽ | /
∪ ∪
浮遊大陸に住んでた精霊がわざわざ自分の湖に、邪魔な風精霊も連れずにやってきたのを
水精霊は好機と捉えて、青年を捕らえるつもりだったらしい。
湖の底で青年といつまでもいつまでも添い遂げるつもりだったんだろうね。
268 名前：9/16 ：11/02/18 00:09:41 ID:42+Y3652
でも、青年は精霊を本当に愛していた。
無論、水精霊ではなく、風精霊をね。
: : : : : : :／ : : : : : : : ヽ: : : ヽ: ＼ｰ-≧x
: : : : : :/ : : : : : : : : : : }: : : : ﾍ: : :＼
: : : : :/ : /: : : :_＿:/: :ﾄ､: : : : |ヽ__: :ヽ
: : : :/ : /: : : : : : :/i＼i_,∨: : :|: :', ＼ ﾍ
: : :/ : :{ : : : : :/:/ :|: :/ } : : j: : ﾍ ヽ}
:.∨ : /|: : : : /:/ Ⅳ │: :/: : : |
∨: :/ :| : : :/:/≦三三, | :/ ヽ: : |
｛: :/⌒| : : {:/{│ { j/ |ヽ| : :j
:Ⅴヽｰﾍ : :∧ﾍ| ､＿j､__ ∨ } ://^ｰ― ､
＞-､＼ﾊ: {: ﾍ ∨ / / j/^Ｙ ｀ヽ 待ってぇ～！
: : : : :¨¨ Ⅵｰ:ヽ}､＿ ﾉ ／ { }
: : : : : : : : : : : : :＼_ｊ／ ＼ .
_;_;＿: :イ´￣｀ヽ : :ヽ、 ｀ｰ┐ |
＼ : ', } |
',: :} ﾉ j
＿＿＿_
r⌒ヽ､ . ／ノ ヽ､_＼
/ ＼ ＼. ／ （ ○）}liil{（○）
_/ / ヽ ／ （__人__） ＼
〈__／ . | | ヽ |!!il|!|!l| / | ｽﾍﾟｰｽ ﾗﾝﾅｳｪｲ ｲﾃﾞｦﾝ！
/ .＼ i⌒ｪｪ| /
./ ／ ⌒ヽ, ＿.ヽ .＼／
._＿ r ／ |／ｰ､＼ ＼
."ヽ | i, ﾉ .＼＾ i
.| ヽ./ ヽ､_../ / . ヽ､__ノ
.i / ／/ .／
.ヽ､_.／ ./ ／
./ ／
.ノ.＾/
|_／
だから、水精霊の呪いすらも振り切って、一目散に逃げ去った。
風精霊の想いに応えられなかったのに、水精霊の求愛を受け入れるのは裏切りだし、
なによりもほんの刹那でも心が揺らいだ自分が許せなかったんだろうね。
そうして、その後の青年の行方は杳として誰も知らないのさ。
269 名前：10/16 ：11/02/18 00:09:59 ID:42+Y3652
（
丶～'⌒'〇'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'⌒'～'´
Ｏ
o
_＿_ ＿
.‐::::二´::イ:ｉﾄ､‐=-｀::.､_
／:::／／::::,:ｲ::ｉ:ｌ:ｉ::::､:::::｀:､::｀:.､
:::／／/:／/:ｉ: |:!:|:ｉ::::丶:::: ヽ丶＼
/:::/:::/´::〃ハ:ｌ::::!:!ｉ:::: ｉ丶｀:!ヽ:ヽ::ヽ
: /:: /::::/:ｉ::::: ﾊⅣ:;､!:::: ｌ::::ヽ!:::ｉ:::::::::::.
/ｉ: /:: /ｉ::ｌ::: /ｉ::ｌヽｌ::丶:::ｌ::::::ﾊ:ｉ|::ｉ: ｉ:､::ｉ
!:|ｉ:ｉ::: ｉ:ｉ:ｌｌ:::/∧:!:::ｌ｀ ､:ヽ!:ｉ/:::ｉ:ハ!::ｌ::ｉ ｌ
::|l::|::::|:|::ｌ: '/ ヽ: l ｉ::::!:!ﾄ､:!::::ｉ:ヽ! ! | これが、アルビオンとトリステインに伝わる
::!:|:|::::!:!: !/ィ示ヽ:! !ﾊ /ヽ !ヽ:ｌｉ:ｉ:N:::! 青年と精霊の昔話さ。
::: |:|::::ヾ:::!｀ヽ::ﾉ_ ' /' |! .ィ､ ｌ:!::|:!:: '
､ｉ:|:Ⅳ:::ｉヽ! !く:::ｿ ! !::::!' / 青年のその後だけど……
: ﾄ､!:! ヽ! , ｀ ´ /|::,':/
: !ｉ:N ｀ ノ /ｉ:!:'/ 一説には風も吹かず、水も携えない
:､:!|ﾊ _ /::!:/′ 大地の割れ目に身を投げたとも聞くし、
小:!. ヽ ￣ ｀ 'Ⅵ' 灼熱の火口へと身を投じたとも聞くよ。
::::ﾘ. ＼ ｀ ／
Ⅵ. ヽ､ ´
｀ ー _ T ´ 『土精霊の元で土に還って、風精霊の元に帰って、水仙の花を咲かせた』とか、
､ ｀ ー ､ 『火精霊に身を焼かれて生まれ変わって、また風精霊に仕えた』とか、
｀ ､ ｉ 青年を哀れんだ後世の人の創作なんだろうけど、
. ､ ＼. ｌ 救いがあって僕は好きかな？
.､ 丶 ＼. !
＼ ＼ ヽ ｌ＼
ヽ ヽ | ヽ
＿＿＿
／ ＼
／ ⌒ ⌒＼ やる夫もその意見に賛成だお。
／ （ ⌒） （⌒）＼
i ::::::⌒ （__人__） ⌒:: i せめて御伽噺の中ぐらい、救いがあっていいと思うお。
ヽ、 `ー ' ／
/ ┌─┐
i 丶 ヽ{ .茶 }ヽ
ｒ ヽ、__)一(_丿
ヽ、___ ヽ ヽ
と_＿＿_＿ノ＿ノ
270 名前：11/16 ：11/02/18 00:10:14 ID:42+Y3652
_,､ｒ'´:::‐､｀ヾ‐､｀丶、
／:::::l､:{⌒ヾヽ::ﾄ､:ヽ:::::ヽ
//!:::i:ｌ:!::ヾ､::::::ヾ::!｀ヽ:ヽ:::::ヽ
〃:!:l::::l!:ﾄ､::::liヽ､:::ﾘ:!::i:::ヽ:ヽ::::i
i:!::!i::i::::i::!:i:ヾ!:i::::!:､:::!:::l:i:!:ヽヽ:l:!
ｌ!::!:!:iﾄ:::!:i:j/代トﾄ､ｌ:ﾊ::升ﾄ!:l::!:!lj
ｌi::l::N{:ヾVﾍ｢￣｀ lﾊ ｿｒ‐ﾃﾊ!:l/
!:l!:ﾄ､ｌ::l{｀ ! j川/ あ、これって昔話だけど、
ヾﾄ辷N! ‐ノ !:l/ 本当にあった話だよ？
Yｌ:ﾄ､ ヾ＝＝r ﾉ/
iN ＼. ｀ ニ′／}' 青年が姿を消した時期に、
丨 丶、 ／ アルビオンで風が泣くように吹いて、
ノ￣´"''‐ 、 ｀¨´￤ トリステインで雨が泣くように降ったのは事実だし。
. 丿＼ /癶V⌒!=|￣￣￣￣￣|
,.._,､-':､-'｀､'´`:.､ /‐''"_, -ヘ｜ ｜
<:::::::::::::::｀:::､::::､:::｀ヽ/ ´ _,,厶ﾍ ∧- ､
i｀:::｀:::､::::::::::::::::＿_/ ＿,）ヽ＿＿＿/:::::::::::'::､_
/::::::::::::!:::: ,'´/ /::/ _,ノ >､｀｀､:::､::::::::::::,'::::::::/
＿＿＿
／ ＼
／ 一' ｀ｰ＼ 流石はファンタジー世界だお。
／ （ ○） （○）＼
i （__人__） i 魔法がある世界とはいえ、
ヽ、 |r┬-| ／ 精霊との恋物語があるなんて……
/ `ー'ｒ─┐ うらやまけしからんお。
i 丶 ヽ{ .茶 }ヽ
ｒ ヽ、__)一(_丿
ヽ、___ ヽ ヽ
と_＿＿_＿ノ＿ノ
271 名前：12/16 ：11/02/18 00:10:32 ID:42+Y3652
＿＿＿_
／ ＼
／ ─ ─＼ ﾆﾝﾌ ﾅﾙｷｯｿｽ
／ （●） （●） ＼ そういえば、やる夫の故郷でも精霊の求愛を拒んだ青年が、
| （__人__） | 水溜りに写った自分の姿しか愛せない呪いを受けて、
/ ∩ノ ⊃ ／/ ∩ノ ⊃ 想いを遂げられずに水仙の花になるっていう御伽噺があるお。
( ＼ ／ ＿ノ ＼／ ＿ノ
.＼ “ ／ . ＼ “ ／
＼ ／ /＼／
＼ ＼
＼ ＼ ＼
> > > ﾅﾙｼｽﾄ ﾉ ｺﾞｹﾞﾝ ﾀﾞｵ
／ ／ ／
,...::´:.ｲ:::::i:::＼:::::｀:..、
／.::／.:::!i:::::i::::::::ヽ::::::::＼
,.':/::/::::i:::::!i::::::!:::ヽ:::::!:::!:i:::.:ヽ
.. /::/::::!:::!::i:::::!i::::::!::::::::::::!:::!::!::i::::!
i:::i::i:::|:::i::::.::::i:!:::::i::::::::::::i::::!::i:::i:::i
|:::i::i:::|::::ヽiヽﾘ､::::!::::::::i::|::::!::i:::i:::!
!ヽ::ﾄ､!ヽ:::ｊｨ赱ﾊ::!:j::i:::i::! ヽ::i:::i::ﾄ へぇ……それは興味深いね。
ヽﾞ7 ´ ﾉﾉ |::i/:::! j:::i:::iﾘ
〈 _ i/ ヽiイ:!::i:::i' 意外とどこの世界でもよくある話なのかもね。
. ヽ_.. _ / ﾄｊ:::ｉN 人と精霊の報われない恋物語って。
. iｰ ／ ／::::::::::::'..,_
ゝ--ｒｒｆ´ ／::::::_:,:‐::':´:::::'..,
,'::ﾄi´／:::::::::::::::_,::-:‐::':´::｀'.,
,': i !j:::_:,::-‐:':´:::::::::::::::::::::::::::::'.,
,'i/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
;ﾊ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'.,
. { {i.',:｀'､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',
{i {i .',:::::｀'､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'.,
{i {i. ',::::::::｀'､_::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'.,
272 名前：13/16 ：11/02/18 00:10:46 ID:42+Y3652
＿＿＿_
／ ＼
／ _ノ ヽ､_.＼
／ （●） （●） ＼ 御伽噺といえばそこまでだけど……
| （__人__） | やる夫はやっぱり精霊にも、
/ ∩ノ ⊃ ／ 精霊に愛された人間にも、
( ＼ ／ ＿ノ | | しあわせになって欲しいお。
.＼ “ ／＿＿| |
＼ ／＿＿＿ ／
,:'. /／／ // // iｌ ｌ::::ｌ;;;;;;;
,:' ／／ /l|| ///i l ,'::::i.i;;;;;;;;;
,' / / ,ｿi |. i i ! l i /:ｌlンｉ;;;;;;;;;
,' ; .l ｌ ｌ !iｌl !i i:/ ﾒ､ｌ;;;;;;;;
,' ,: /| ｉ ｌ ｌ. iｌｌ. i ! ,i l;;;;;;;;
,' / / l ｌ. il|ｉ ｌ ∧ﾒ !;;;;;;;;
,' ,' . ,'ｉ lﾊ ', i. iｌｌ X ',､:;;;;;;;;
,'f ,' ,' i i i! ! ｉ l i ｉl i i l.l! iヽ;;;;;;;;
li'} ﾊ: ,'i i､! ', ' ヾi i i ｉ ｌ l l ! i:;;;;;;;;;;
i!.i ｿ il ir !ﾐ、､ i !､ ', ! ',l ｉ ', ',',;;;;;
l i ,' ﾊ i !! 廴ﾂ､ヾ ':､ i i i !ヽゝ;;;;;
!.li!.l|!| リ ` ｪ､..ヾ ヾ､ ヽ:､ i ! ﾊ､!ｌ ヾ､;;
! !从 """ヽﾞ:､ヽﾞ: ､弌itｰマ､:ヽi
.､､へ ′ i .:: ヽ ｰ`=.公､`:i
｀､'"'''ｰ-､､、 ,へ, _,r::::i rｰ-‐ '''' ー ‐ --:: ､:ヽ;;i
:ヽ : : ＼ ｀｀｀,'" ,'"-‐ー''''''' /:::'. ｀`¨':':‐;;;;;;:-:;;;;;;;､_ ヽ;;;;l
: : 丶: : :: : ヽ: : : : : ::,´ ./" ﾞ:, ﾞ､ ヽ､,..;;;;;;;;;;;;;;;／ , ` ､ `
: : :,｀: : : :'､ : : : ' : : : ',::､ ﾞヽ ､:_:;;;;;;;;;;r ;´ ' ヽ､ ` -､
: :ヽ : : : :ヽ : :: :l ',:::､ `'':;;;;;;;;;;;;;; ' i ヽ､,
: : :ヽ : : : ヽ､| , ',::ヽ ;;;;;;;i _ -t^ヽ､_ ﾞ`
: : : : ヽ: : ,:| i ヽ::`:ー ';;;;;i .ﾉ:i ﾉ;;;;;;;; 〉
: : : : : : : : :ヽ: ::＼ l ,.ゞ＝ｰ'"ﾒ /;;;;ﾚ;;;;;;;;;;;/
ヽ: : :__ : : : : : : : : : ｀､: : : : :| l _ ,ｨ ´ ヽ ｰヽ;;;;;;;;;;;;;;/ ……ふ、やる夫はやさしいな。
: : : : : ｀: : :､ __: : : : : : : : ヽ: ＼ l ,イ:::::i ﾉ､ ヽ;;;;;;;;;/
: : : : : : : : : : : : :｀ : __: : : : ｀､:│l ´ l＿＿/ ヽ. ';;;;;;;;i その甘さ……行為に値するよ……
: : : : : : : : : : : : : : : : : : ｀: : :丶:＼ ／／ │| ヽ /;;;;;;;!
:｀ : -: : ､ : : : : : : : : : : : : ｀､: : 丶: ＼／ | | ヽ , ';;;;;;;;;i ｷｬｯ ﾀﾞｲﾃ！
273 名前：14/16 ：11/02/18 00:10:59 ID:42+Y3652
・ ━ ━━ ━━━ ━━━━━━━━━━━━ ━━━ ━━ ━ ・
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…… … ──────── … ……
￣￣￣￣￣
274 名前：15/16 ：11/02/18 00:11:14 ID:42+Y3652
_,=''''''^~~~~~~~~~^''''=,,,,
,-='''~ -=^~~~^-^~~~^==- '=,,,
<~ -==^~~~^ =^~~^=-=^~~^'=-~'=,
ヽ'^' __,,,,,,i~~~l===|~~i==|~~|＿,,,,,..ﾉ
ヽi~ | |＿_レ、l--l--ﾚ.;---i i-、
r'^~~~~l l | :| ∩ ∩|,-=,__,-,_| |~i^i,,
l^^|,,,,--==.i~~l~~~~~~~~~~| i l .|~^''''l~^i,,,,
／i~~i' l ∩∩l .ｌ ∩ ∩ l |__| .| .∩| .| l-,
,,,,,='~| | |' |,,=i~~i==========|~~|^^|~ ~'i----i==i,, | 'i
| l ,==,-'''^^ l |. ∩. ∩. ∩. | |∩| |∩∩| |~~^i~'i、
,=i^~~.| |.∩.∩ |,...,|__|,,|__|,,|__|,,|__|,....,||,,|.|,.....,||,|_|,|.|,....,| | |~i
l~| .| | ,,,---== ヽﾉ i ヽﾉ~~~ ヽﾉ ~ ソ^=-.i,,,,|,,,|
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ヽ 、 l | ｌ l / .／ ／
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｀:.＜. V∧| ::| .::|:/ _ｊ/__､|.:::..:／/:/ ,.＿ l:: !:|:. :i. l7／ .＞:´|
. ∨::|｀ ＜..| ::l..:.::,イ爪_,ﾊ`ｊ:／ /'´'ｲ爪ﾊト:l |:: :|i:.|＞:´: i:.:.:.|
V::| . :.:| ::.V:.:.､い匕ﾘ i匕ゾｊﾉ| |:: :||::|:.:.: .:. |:.:. |
. | :| :. :.::!ﾊ::.ヽ::| ゛ー ' :. ー '"/::| l:: :|.|:|､:.:. :. l:.:. ! やる夫……
| :l ::..:.:::l ｊｲ:::ｉ人 //// ′//// .:::::ｊﾉｉ:: ::| |:| ｉ:.: :. |:.:,′ 今度はちゃんと素直になるから……
| :| ::.:.:::| l::::|:.::ｉ:::..､ -‐ .イ:ミ:､::::|:: .:| |:| |:.:. : |:.ｉ
| il ::.:.:.:| ヽ:|:.::|ｲ l,≧:.. ＿ .:≦＿ヽ. 》》:l:. .::l |:l. |::.: l:.| 私を名前で呼んで……ね？
| l| ::.:.::| ,'´ .|:.::liﾐ三「:|￣￣￣￣Τ|三ｨ:,'::..::ﾉ.ｊ;ﾊ.|:: |:|
|八 : :.:::l ｉ :l:.:::lミ三l::| 「:l__ｒｭ_ｊ´| | |三:/: .;.' :i::i: |:|
. | :.::､: .:.:| | :|:.::| | |'└‐|_,ﾆ{ :{ﾆ_ｊ‐'┘:/:／ 八|:: !|
| .:.::ﾊ:.:.:l. ､ ヽ::| | | ｒLlｭ :/'´.:' ,′ |:: :|
| :.:::ｉ i:.:.:| ヽ ｀ﾉ人 | {｀} | ,'.::: / |::. ::|
275 名前：16/16 ：11/02/18 00:11:27 ID:42+Y3652
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i: : : : : : : |: : : : : : : : :/ｲ : : :.ｲ::::/i::l;!::j ヾ::!
. l: :: : : : : :|: : : : : : : :/'┤: :./ !:;ｲ:ﾊ:ﾘ::l ｀:! 風精霊の側に居てもいいから……
!:.:: : : : : :j: : : : : : :/'{. !: ; ':.!j/ |/ !:/
l ::: : : : : :j: : : : : : :.:: |7ｲ: : | ,! !' 怒ってくれても、叱ってくれても、嫌ってくれてもいいから……
. l:.::: : : : : :.|: : : : : : .:: |'_!|: : :|‐'′ あの時、やっくんを傷つけたことを謝らせて……
j: ::: : : : : :.!: : : : : : ::: !/7 ヾ:|
i: :::: : : : : :|: : : : : : ::::.|/ /´`:!
,!:.::::: : : :.|: l: : : : : : :::::ｌ' / ｀、
!.:::::::: : : l: :!: : : :.: : :::::l / i
j ::::::::: : :.i.:.l.: : : :.: .:::::::l ｌ |
276 名前：分数 ◆BUNSUx8T/6 ：11/02/18 00:12:39 ID:42+Y3652
ハルケ世界にやる夫が生まれていたとしても、ハルケ世界の常識が邪魔して、
精霊たちと添い遂げられなかったこともあったんじゃないかな、という妄想でした。
逆を言うと、ハルケ世界の常識に外れた異世界のやる夫でしか成就は望めそうにないですし。
設定ムジュンとかその辺は生暖かくスルーしてください。
277 名前：名無しさん ：11/02/18 00:13:04 ID:f8XCgdS5
あらら、今回はうまく生きそうｗ 乙乙～～
278 名前：名無しさん ：11/02/18 00:32:08 ID:X/A5F5z8
乙乙ｗ
『人として死んだヤルヲは、晴れた日には雲に乗ってアルビオンに。
雨の日には雨粒となってラグドリアン湖に降り注ぐのでした･･･』
なんて童話風の後日談を作ってみたり。
土精霊と火の精霊がイメージ涌きませんなぁ･･･
火の精霊は火の鳥のイメージが固まりつつあるけどｗ
風精霊は「ソラノオトシモノ」が原作でしたっけ？
古本売ってないかな～
