『現代合衆国召喚』15


 グルップス帝国の降伏後、突如としてアルゲフト王国がフォマルグ共和国及びアメリカ合衆国に対して宣戦布告し、国境を越えて進軍を開始した。その兵力は、片っ端から動員を行い掻き集めた結果、十六万という大軍だった。米軍主力部隊は、グルップス帝国へ行ってしまっており、この電撃的な侵攻作戦は成功するかと思ったが潜入していたダークエルフにより知られていたため、フォマルグ共和国軍が待ち構えていた。その数は、八万。アルゲフト王国軍の半分だが、地の利をいかして激しく応戦している。実は、フォマルグ共和国軍にはこれまでの戦争でアメリカが鹵獲した大量の武器、防具、魔道砲、戦竜、ワイバーン等が供給されていた。このため、充実した軍備を誇っており、猛反撃を行っていた。士気も高かった。

 一方、僅かに残っていた米軍も戦闘に加わっていた。さらに沖合いに遊弋している第七艦隊の空母から発艦した艦載機もアルゲフト王国軍を何度も爆撃している。空軍もやっと例のレーザー兵器がアルゲフト王国には、無いという情報をダークエルフの諜報活動から入手して、地上攻撃機を派遣して、爆撃を敢行している。

 フォマルグ共和国軍と米軍の反撃により、アルゲフト王国の侵攻は食い止められている。そこにグルップス帝国へと出払っていた米軍主力部隊が、帰還した。直ちに米軍は、大規模な反撃を行った。各地でアルゲフト王国軍は敗北し、押し返されていった。アルゲフト王国軍は、一旦撤退して、戦力を整えるとノビスカート平原に全戦力を集結させた。その兵力は、十万。六万の犠牲をこれまでの戦いで出していた。アルゲフト王国は、この戦いに全てを賭けていた。これに対して米軍もグルップス帝国軍との戦闘の時と同様の戦力を派遣した。

 両軍の戦いは、砲爆撃から始まった。米軍は、前回のグルップス帝国との戦いに懲りて、予備攻撃を徹底させることにした。猛烈な爆撃と砲撃が情け容赦無く行われた。爆撃を阻止しようとしたワイバーンは、護衛の戦闘機に片っ端から撃墜された。砲撃戦も米軍の砲撃は、アルゲフト王国軍の魔道砲を軽くアウトレンジしてしまい勝負にならなかった。しかし、アルゲフト王国軍側も塹壕や地下陣地に籠り、この攻撃から必死に耐えた。それでも、残ったのは僅かに二万。勝敗は、決したも同然だった。グルップス帝国軍の時と同じ陣容の米軍地上部隊が進撃を開始した。抵抗する王国軍を難無く撃破して進撃する。

 その途中で、米軍対空部隊のレーダーが接近する飛行物体を探知した。

「何だこれは?ワイバーンにしては、速過ぎるぞ。時速八百キロは、出ている…。味方の航空機じゃないしな。」

レーダーを見ていた兵士が訝しがる。その方向を双眼鏡で見ていた上官が双眼鏡の丸い視界の中一杯に見える光り輝く物体に気づくと大慌てで命令を出す。

「正体は、分からないが撃墜しろ。俺達に向かってきてるぞ。」

命令通りにミサイルが舞い上がり次次に光り輝く物体を撃ち落していく。それでも余りに数が多過ぎた。百は、越えていた。生き残った幾つかの光り輝く物体が米軍地上部隊に突入する。直撃を受けた装甲車が爆発炎上する。同じ様に他の車輛もやられた。

戦闘終結後にまたしてもダークエルフに尋ねると正体は、対地型魔法の槍とのことだった。名前通りで、地上の敵を攻撃するために開発された物だった。本来は、戦竜や強固な陣地を攻撃するのに使用するとの事だった。欠点は、高価で大量生産が出来ないという事だそうだ。今回、アルゲフト王国軍は保有していた全弾を使用した。その戦果は、M1エイブラムス戦車一輛が大破。二輛が中小破。各種戦闘車輛四輛喪。兵員十三名が死亡。重軽傷の者が二十一名。

 その後、アルゲフト王国軍は壊滅する。王都にまで進軍した米軍は、逃走しようとしていた王と側近を捕まえた。既にダークエルフにより米艦への奇襲攻撃は、アルゲフト王国の仕業だった事が判明していおり、激怒したアメリカは死刑にした。当然、アルゲフト王国は降伏した。

 こうして、金鉱を巡る一連の戦争はアメリカの勝利に終わった。しかし、アメリカも新兵器や必死の反撃によりそれなりの損害を出した。この貴重な戦訓を米軍は、これからの戦いで生かしていく事になる。

 しかし、突如出現した強大なアメリカに対して敵意を剥き出しにしつつある国々が存在した。アメリカの知らぬ場所で事態は、刻刻と進展していった…。


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