『現代合衆国召喚』12


 シャステッド城陥落の報は、瞬く間にアーリア帝國軍に伝わった。無敵と信じていたシャステッド城の陥落という事実は、司令官の思惑通りアーリア帝國軍の士気低下を招いた。さらにシャステッド城防衛部隊の撤退を許さなかったということに異議を唱える者も出てきて、軍内部の混乱を助長した。実は、シャステッド城の陥落をアーリア帝國軍上層部は、必死に秘匿しようとしたのだが、あれだけの出来事を秘匿するのは不可能に近い上にダークエルフの手によって素っ破抜かれてしまったためにあっと言う間に広まってしまった。これらの御蔭で米軍侵攻部隊は、大した攻撃を受けることなく皇都に進軍した。

 この皇都の攻略方法は、砲撃と空爆で宮殿以外の場所を全て吹き飛ばそうという考えと普通に地上軍を進めて占拠するという二つの考え方があったが、前者は非人道的だとして後者が選択された。

 皇都は、円のように丸くなっておりその中央に皇帝の居る宮殿がある。中心以外は、市街地が広がっている。米軍としては、困ったことに重車輛の通れる道が無い為に歩兵を中心とした部隊で攻略しなくてはならなかった。車輛は、小回りのきくハンビー程度である。航空支援としては、アパッチが出撃した。ヘリでダイレクトに宮殿に降下して制圧する等の案が出たが包囲殲滅される危険から拒否された。

 しかし、皇都を守っているのは精鋭の皇帝親衛隊である。彼等は、皇都中に分散されて配置されて米軍を待ち構えていた。この部隊は、多数の戦竜を保有していた。他にもワイバーンを保有している。

米軍は、突然路地から現れる騎士の不意打ちに苦戦した。ハンビーは、敵の戦竜のブレス攻撃の前に撃破される始末だった。さらにワイバーンまで飛来するとブレス攻撃を米軍に浴びせた。辺り一面、怒号と銃声が響く激しい戦場になった。とは言え剣による攻撃は、兵士の顔等の急所に当たらない限り致命傷にならなかった。戦竜もハンビー搭載のTOW(対戦車ミサイル)やカールグスタフに撃破された。ワイバーンもアパッチやスティンガーに撃墜された。特にアパッチの火力は、強力で騎士や戦竜を多数葬り去った。最初は、互角だったが火力の差が物を言い始めると親衛隊は、次々に撃退されてしまった。こうして、宮殿まで親衛隊は、後退していった。

 宮殿に突入した米軍と必死で応戦する親衛隊との間で激しい戦闘が展開されたが、火力で勝る米軍が勝利した。所詮、銃と剣では勝負にならない。米軍は、宮殿内に居た皇帝を始めとする重臣達を捕縛すると無理やり交渉の席につかせた。米軍が要求したことは、以下の通りである。当然、この要求を呑む以外に選択肢は無かった。

1、現政権の完全交代を行うこと。
2、今回の戦争の賠償金を支払うこと。
3、米軍の駐留を認めること。
4、一部の領土の割譲と資源の無償供給を米国に行うこと。
5、ダークエルフ及びドワーフへの迫害を止めること。
6、米国の指定した範囲内の戦力しか持たないこと。

 こうして、対アーリア帝國戦争は終わりを告げた。今回の戦闘で米軍は、ハンビー三輛を完全に破壊された。戦死者五名と負傷者十六名も出した。

 アーリア帝國が米国に負けたというニュースは、世界を駆け巡った。一級の国が全力で戦って勝てなかった米国の強さにどの国も驚いた。さまざまな国が、米国に興味を持った。中には、不埒な考えを持つ国もあったが。


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