『現代合衆国召喚』11


 米国と協力することとなった中小国の総兵力は、十九万人とワイバーン千六百騎である。米国は、これらの兵力はまだ必要無いと判断して、待機させることにした。上陸に成功した米軍は、未だにアーリア帝國本国に忠誠を誓う忠犬の始末にいくつかの部隊を派遣した。主力部隊は、アーリア帝國本国の侵攻に向かうこととなった。主力部隊は、たまに攻撃してくるアーリア帝國軍を撃破しながら、じりじりと侵攻していった。その最終目標は、アーリア帝國の皇都である。この世界でも首都を攻め落とされたら大抵は、ゲームオーバーである。

 その途中で巨大な城塞にぶちあたった。それは、アーリア帝國本国の防衛の要であるシャステッド城である。この城は、アーリア帝國本国が武力を用いて他国を占領する場合の前進基地とされてきた。城は、かなりの規模で城内には多数の魔道砲と兵員にワイバーンが配備されている。魔道砲とワイバーンは強力で、今までに幾度となく攻め込まれたがこの支援の御蔭で生き残れたと言っても過言ではない。さらに城全体に防御結界を張ってある。ワイバーンや魔道砲の攻撃を受けてもある程度は、防ぐことが可能だ。

 この城の対応を巡って会議が急遽開かれた。各指揮官の考えは、二つに分かれた。

「迂回するべきだと思います。こんな城に構ってないでさっさと敵首都を陥落させましょう。」

「現在敵の戦力が集結しています。こいつを始末すれば、後々楽になります。」

 という感じの意見だった。司令官は、二つの意見をしっかりと聞くと結論を出す。

「シャステッド城は、アーリア帝國軍の士気の柱でもある。この城を陥落させれば、敵の士気の低下が狙える。さらに無視して進軍した時に後ろから攻撃されるのは、好ましくない。以上のことからシャステッド城の攻撃作戦を行うこととする。」

 こうして、シャステッド城の運命は決定された。

 アーリア帝國軍は、難攻不落のシャステッド城が陥落させられるなど全く考えていなかった。そのため兵力は、五万しか配備されていなかった。ワイバーンは、三百騎が蓄積されていた。魔道砲は、約二百門が配備されていた。

 米軍の攻撃は、砲撃から始まった。155mm榴弾砲の砲弾が城目掛けて発射される。防御結界は、想定をこえた威力の砲弾の前にあっけあく最初の数発で降参した。防御結界が消えたことに呆然となっていたアーリア帝國軍に大量の砲弾が降り注ぐ。155mm榴弾砲の威力は、凄まじく煉瓦で構成されている城壁を木っ端微塵に吹き飛ばした。城は、滅茶苦茶に破壊された。それこそ、原形を保っていない程にだ。城内及び付近にいた騎士約三万とワイバーン百五十騎以上の損害に加えて魔道砲は、全滅してしまった。

 シャステッド城は、瓦礫となってしまったために残存兵力は、米軍に突撃する以外の選択肢を失ってしまった。撤退は、許されていなかった。無理に撤退をすれば良くても投獄、悪ければその場で死刑だ。約二万の騎士とワイバーン約五十騎が米軍に向かって突撃を行い始める。

 米軍砲兵隊長は、彼等の戦意に感心した。あれだけ砲撃で叩かれたのに向かってくるというのは、かなりの精神力が必要のはずだ。事実は、他に選択肢が無かっただけなのだが。しかし、残念なことに彼等の突撃を許すわけには、いかない。

「目標は、接近中の敵。砲撃開始せよ。」

今度の砲撃には、迫撃砲も加わりアーリア帝國軍は、悲惨なことになった。155mm榴弾砲の砲弾は、着弾と共にまとめて騎士を数十人吹き飛ばし地面に大穴を開けた。迫撃砲は、砲弾で地面を耕すかのようにアーリア帝國軍に降り注いだ。

 結局、砲撃だけで地上軍は片が付いてしまった。ワイバーン約五十騎も待ち構えていた一撃必中の米軍対空部隊の防空網により片っ端から撃ち落されて全滅した。

 シャステッド城を陥落させた米軍は、アーリア帝國本国へと本格的な進軍を始める。

 今回の勝利の裏には、ダークエルフの協力があった。砲撃が正確で甚大な損害をアーリア帝國軍に与えられたのは、ダークエルフの事前偵察と着弾観測の御蔭である。この他にも米軍の上陸作戦の時に現地の正確な情報を伝えて米軍を誘導したりしている。このようにダークエルフは、陰ながらも米軍を強力にサポートしていた。さらに彼等の国の建国も行われた。国名は、シュナイザー帝國である。人口は、約二千人以上のダークエルフと少しの米国人で構成されている。まだまだダークエルフは、世界中のおり、建国の噂を聞きつけて続々と集まって来ている。彼等は、自分達の国が出来たことに感動を覚えていた。今までのような見つかれば死が待っているといった生活から解放されたからだ。さらに自分達の苦境を救ってくれた米国に深い感謝もした。ダークエルフは、自分達の安全を保証してくれる米国に出来ることなら何でも力になるつもりだ。

 ドワーフも同様に建国を行った。こちらの国名は、クスカット王国である。人口は、約二十万以上。米国には、ダークエルフ程ではないが感謝している。見返りとして魔法関係の事柄を全面的に引き受けている。他にもこの世界の通貨の製造や資源の発見と採掘を行ってもらっている。

 この二国は、ベルトリア王国から割譲した領土に建国された。


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