『現代合衆国召喚』09


 アーリア帝國は、大規模な上陸作戦を発動した。輸送船約百五十隻を揃えた凄まじい規模の上陸作戦である。その上陸予定地は、旧ベルトリア王国領である。上陸兵力は、約三万五千人。この他ワイバーン百五十騎が、加わる。第一波が上陸後に輸送船団は、トンボ返りで第二、第三波を輸送する予定だ。しかし、この作戦は、無茶苦茶だった。前回の海戦の大敗北で、海軍は支援艦艇を失っている。このため、敵艦隊に遭遇したら一溜まりもない。さらに艦砲射撃等の支援を受けられない。しかし、この問題を何とかアーリア帝國は、クリアした。敵艦隊は、ある作戦で現場にむかえない。上陸予定地は、まだ米軍が展開していない。これらのことから、上陸さえすれば何とかなるとアーリア帝國は考えた。こうして、この上陸作戦は、実施されることとなった。

 当然これだけの規模の上陸作戦に米軍が気づかないはずがない。米海軍は、第一混成空母機動部隊に迎撃命令を出した。しかし、現場海域に向かう途中で、問題が発生した。その問題とは。

「海上に浮遊物多数発見。」

 その声に司令官は、何事かと思った。浮遊物だと、これはまさか!

 恐ろしい予感にかられて司令官は、命令を出す。

「全艦に命ずる。浮遊物から至急離れよ。」

「浮遊物が接近します。」

「何だと!主砲で攻撃しろ。CIWSも使え。」

 浮遊物に一番接近していた艦が接近する浮遊物目掛けて主砲を撃ち込む。その瞬間に大爆発が起こる。

「くそ、やはり機雷だったか。迎撃しつつ後退しろ。」

 この機雷は、アーリア帝國の新兵器である。目標がある一定の距離に接近すると生命感知センサーが働き目標に接近して触れると爆発を起こす。この機雷のせいで第一混成空母機動部隊は、敵輸送船団の迎撃に間に合わなくなった。

 一方、米陸軍は上陸予定地に迅速に展開した。ほとんどが、車輛化されているからだ。上陸予定地は、長い砂浜で奥には林が広がっている。その林の中に巧みに迎撃部隊を配置した。

 そんなことは、知らないアーリア帝國上陸部隊は、米国艦隊の迎撃がないことに大喜びで海岸線にアプローチした。輸送船団は、海岸から距離五千メートルの地点で一斉に上陸用舟艇を降ろした。この上陸用舟艇は、小型の推力発生用の魔石を動力源としている。そして、準備が整うと一斉に海岸線目掛けて発進した。ワイバーン百五十騎も援護のために飛来する。

 米迎撃部隊の指揮官は、軍用双眼鏡で接近してくる上陸用舟艇群を見ながら命令を出す。

「もっと引きつけろ、もっともっとだ。距離八百メートルで、迎撃しろ。」

 上陸用舟艇群が、距離八百メートルに差し掛かると米迎撃部隊は、反撃の火蓋を切った。

 迫撃砲、155mm榴弾砲、MLRSが一斉に火を吹く。上陸用舟艇群の真っ只中に弾着を示す水柱が大量に沸き起こる。舟艇は、次々と騎士をバラ撒きながら吹き飛ばされた。その光景を見たワイバーン部隊は、林の中に潜む米軍にブレス攻撃を浴びせようとしたが、その前に叩き落された。設置されたTHAAD、ペトリオット対空ミサイル車輛にアベンジャー、M-6ラインバッカー、LAV-ADの仕業だった。この他にもFIM-92スティンガー携帯用地対空ミサイルもワイバーンを攻撃した。ハープーン対艦ミサイル車輛からは、ハープーンが轟然たる発射音と共に発射され輸送船団をボカスカ攻撃した。海に放り出された騎士は重い甲冑を着ているため泳ぐことが出来ずに溺死した。必死に舟艇にしがみつくがその騎士達も重機関銃の餌食となった。正に地獄絵図だった。さらに輸送船団に機雷を突破した第一混成空母機動部隊が襲いかかった。航空母艦から発艦したF/A18ホーネットが、輸送船と上陸用舟艇を攻撃した。イージス艦は、高価なミサイルを使わずに搭載の砲で、輸送船を沈めまくった。喫水線に砲撃を受けると浸水してしまい輸送船は、あっけなく沈んでいった。

 こうして、上陸部隊は全滅した。約三万五千の兵力と百五十隻の輸送船にワイバーン百五十騎がである。陸と海から猛烈な攻撃を受けた結果だった。この上陸作戦をきっかけに両者は、戦争状態に突入した。米軍は、アーリア帝國への逆上陸作戦を計画し始めた。一方のアーリア帝國は、海上戦力を失ったため何も出来ない状態だった。

 なお、資源の採掘及び輸送は順調である。この世界の通貨もベルトリア王国から大量に入手した。この他にドワーフにも採掘した金、銀、銅で各種通貨の製造を行ってもらっている。今後は、この通貨で不足している物資の買い付けを各国から行う予定である。

 ダークエルフ及びドワーフの国の建国もベルトリア王国から割譲した領土に行う予定である。

 また、労働者として獣人も各地から集まって来ている。彼等の扱いも米国は、考えている。


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