『現代合衆国召喚』01


 そう言うと大統領は、内容を話し出す。

「コロンビア川河口から、北へ約10kmの地点に座礁船を哨戒中の艦が、発見。その船は、帆船でそれなりの大きさで約100名が乗っていると思われる。今後の指示を求む。」

大統領が、読み終えると居並ぶ者がざわめきだす。

「座礁船だと。どうしろというんだ。」

「救助するしかないだろう」

「しかし、助けた後は、どうする?」

そんな声を聞きながら、大統領が言葉を発する。

「私は、彼等を助けたいと思う。生存者は、いるのか?」

「報告によると甲板に出ていた者が、10名から25名いたとのことです。少なくともそれだけはいるでしょう。」

「ならば、助けよう。」

「しかし、そうなると当然、彼等と接触する事になります。我が国の存在が、バレるでしょう。」

海軍長官の声に賛同の声が上がる。

「この世界の人々は、我々を敵とみなすかもしれません。」

「危険です。もう少し様子を見るべきです。」

その声に大統領が、答える。

「いずれ我が国は、発見されるだろう。その時にこの世界がどういう所か、知っていないといろいろ困るだろう。それにあのまま放って置いたら、彼等に犠牲者が出るかもしれん。その様な事には、なってほしくない。」

「情報収集が、優先だと私も考えます。」

「座礁しているなら船は、損傷しているでしょう。助けた後、すぐには帰れないはずです。それならば、我が国の存在が発覚されるのも遅れるでしょう。絶好のチャンスです。」

陸、空の両長官もその言葉に賛成する。

 結局、彼等を助け暫く身柄を確保する事となった。

 救助には、付近の艦を三隻派遣し、コンタクトをとってから、搭載のSH-60Bで何度も往復し救助することにした。接近してこちらも座礁したら、シャレにならないからだ。

 大統領は、執務室に戻ると息をゆっくり吐いた。

 この世界の人々は、我々のことを化け物の様に見るかもしれない。考え過ぎかもしれないが、戦争になるかもしれない。そう考えたから、今まで、現地の住民との接触を厳しく禁じてきたのだ。しかし、これ以上の情報収集は、不可能になってきたので現地の住民と接触しようと考えたのだ。だから、今回の会議で、偵察隊の発見した住民との接触をするように命令を出すつもりだった。しかし、座礁船のおかげでその必要が、無くなった。彼等なら助けてくれた人達のことを悪人とは、思わないだろう。我々についてしっかり説明すれば、彼等の国に戻った時に悪印象を持つ事もないはずだ。

 後は、その考えが上手くいくことを祈るだけだ。


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