『現代合衆国召喚』00
プロローグ
これは、神が与えた天罰なのだろうか?
確かに我が国は、自己の権益の為にキレイゴトを名目にして、他国にかなり横暴な
行動をとってきたが、全ては、国民の為だった。その行為が、いけなかったのかもし
れない。
しかし、私は、国を背負う人間として、その行動を容認している。私は、悪党かも
しれない。だが、国の行く末を決定する者としては、国民に辛酸を舐めさせる様な事
は、できない。
これから、私は、自分の人生どころか、国の存亡に関る重大な決断をしなければな
らない。究極の二者択一だ。第三の選択肢が、あればいいのだが。そんなものは、な
い。私は、決断する。本物の国民の幸せを得るための決断だ。願わくば、その道が
誤っていないでほしい。そして、犠牲が少ないように。
コンコンというノック音と共に、執務室のドアが開けられ、秘書が入ってくる。
「会議に出席する者が、全員揃いました。」
それだけ言うと、秘書は下がっていった。
さあ、行かなければならない。今から行く場所で、何を言い、何を決断するかは既
に決めた。
そこまで考えると合衆国大統領は、立ち上がり、歩き出した。果たしてその道が
どうなるかは、神のみぞ知るだ。
会議室には、陸、海、空の各長官とその副官に各部門の最高責任者が、集まっていた。
大統領が、入って来ると全員起立した。
「諸君、座ってくれ。」
全員が座ったのを見て大統領は、言葉を続ける。
「今までに分かっている事をもう一度説明してくれ。」
その言葉にまず空軍長官が、答える。
「各国との連絡がとれなくなってから、幾度となく偵察機を飛ばしましたが、我々の知っている国は、一切発見できませんでした。」
そう言いながら、正面のモニターに幾つかの写真をうつす。その写真には、煉瓦づくりの家々が写っている。
「ご覧の通り、この様な一昔前の建造物の街しか発見できませんでした。」
次に陸軍長官が口を開く。
「空軍の報告を元にして、偵察部隊を送りました。報告の内容は、目に入る全ての物が、中世の物の様だと言う事です。
一部では、鎧を着た騎士の様な一団を見たとの事です。住民とは、接触しませんでした。」
「近海を哨戒していた艦からは、遠方に帆船を見た等の報告があります。」
海軍長官も発言する。
「地理は、どうなっている?」
「我が国の北、南、西は、海に囲まれており、唯一東は、陸続きで、先に人家を発見し、偵察隊を派遣したのもここです。
なお、アラスカと連絡がとれなく、付近に見当たらない事から、各国と同様に消滅したと考えます。」
大統領の言葉にすぐに陸軍長官が答える。
「君達は、以上の事からどう判断する。」
その言葉に代表で、陸軍長官が、答える。
「各国が消滅したか、我が国が元の世界から消滅したとしか考えられません。私達は、後者だと思います。
この世界の人々は、おそらく中世の時代を生きていると考えられます。ただ、我々のいた世界には、無い物が、あります。」
そこで、言葉を切ると一枚の写真を取り出す。そこには、キリンのミニチュアの様な赤い皮膚をした生き物が、写っている。
「偵察隊の撮った物です。おそらくドラゴンだと思います。」
そこまで聞くと大統領は、軽く笑った
「一夜にして他の世界へ放り出されてしかもその世界は、中世でドラゴンがいるとはな普通は、出来の悪いエイプリールのジョークだと思うだろう。しかし、之は、現実だ。これから、どうすれば良いと思うかね?」
そこまで言った所で、秘書が大統領に一枚の紙を差し出す。その紙を読んでいく内に大統領の眉根が、つりあがっていく。
「諸君、問題発生だ。」