『第三帝国召喚』10


「さて、レーダー海軍総司令官。 君の今後の第三帝国の海軍の計画を聞かせたまえ」

「はい、総統。 まず我が海軍の今後は…」

総統からの発言許可を得たレーダーは海軍の大量艦艇建造計画の説明に入る。

1、戦艦・航空母艦の各10隻前後の保有
2、輸送船の大量建造
3、領海防衛の為の小型戦闘艦(海防艦等)
4、海軍航空隊の設立
5、防空駆逐艦の大量建造


「で、あります」

「戦艦は現在前倒しで建造中のビスマルク級2隻を加えると、合計7隻の保有だね? それとH級戦艦4隻も含めると11隻か…」

「はい、しかしながら航空母艦はグラーフ・ツェツペリン型が2隻現在建造中なだけでございます」

「ふむ、海軍は今後正確に何隻の主力艦艇が欲しいのだね?」

「はい、我々といたしましては42p砲搭載戦艦2隻・28又は38p砲搭載型高速戦艦2〜4隻ほどと、大型航空母艦(100機前後搭載)4隻・中型航空母艦(40〜60機)6隻・小型航空母艦(20機前後)10隻ほど揃えますと、貿易ルートの防衛には十分だと考えられます」

28p砲搭載戦艦は既に5隻、38p砲搭載戦艦は2隻、40p砲搭載戦艦は4隻を、1944年までに保有する予定であった。
本来ならばH級戦艦は6隻の建造予定だったものの2隻減らし、その分の建造資金・資材をより強い戦艦へと作り変えるために、現在設計段階に入っている最中である。

レーダー海軍総司令官はこの44年までの戦力をさらに強固な海軍へとしたいがために、H級戦艦2隻分の資材を42p砲搭載戦艦へと変更したのである。
それと今まで巡洋戦艦合計5隻保有していたものの、この世界において海軍力が絶対的に航路防衛の為にも必要とばかりに、28p砲搭載高速巡洋戦艦最低2隻〜4隻まで建造したいと考えていた。


さて、ここで疑問に思われるのが戦艦の主砲である。
38p砲までならば40p砲を作り上げる事が可能なものの、それ以上の42p砲となると仮に(試行錯誤の上)作れたとしても運用に疑問が残る。
しかし前世界においてネルソン級や米国の40p砲搭載戦艦に確実に、遠距離から撃破したいと考えていたレーダーは42p砲を欲していた。
そのことを総統が復帰された後に個人的な話として聞いてもらうと、既にヒトラー自身も他国(前世界でも)が保有している主砲以上のを望んでおり(他国が持っていて自国が無いのに対し我慢がならなく)、レーダーの42p砲搭載戦艦の建造はH級戦艦2隻の代艦として認められた。

だが、42p砲の生産ができるかどうかが問題視されだしたものの…
ある会社で現在も製作中の超巨大砲への開発が、あと2年後(1942年度以内)もしない内に完了するとの報告を受け、一気に問題が解決されたとばかりにレーダーは新型42p砲搭載戦艦自体が45年までには出来上がる見込みゆえに、それまでに完成されるのであれば良しとした。 もしも42p砲が駄目であったとしてもH級戦艦の主砲を流用すれば済むことなので何も問題がなかった。



「戦艦はそれほど緊急にいると言うわけではないにしても、航空母艦の早期建造が之だと必要なようだね?」

「はい、航空母艦の搭載機の航続距離でありますと一海域の防衛や索敵などには、航空母艦と護衛艦だけで十分役に立つと考えられます」

「たしかに、現在空軍では航続距離の向上を命じているが、最大1000q以上であれば船団の護衛には十分か…」

「はい、なにせ大型艦になりますので長期作戦にも適しています」

「大型…… まてよ、航空母艦の飛行機格納庫は広いのかね?」

「はい、大型航空母艦でありますとかなりの広さになり輸送船の数倍の貨物を載せこむことも…」

レーダーのこの時の言葉を待っていたかのように、ヒトラーは獲物に噛み付く勢いで彼に叫ぶ。
ヒトラー自身が元々陸軍出身ゆえに、空軍へも洩らしていた事も海軍も同様にどうにか解決策がないかどうか悩んでいたことが一気に解消された。

「それだ! ふむ、今まで余が悩んでいたことを解決できるのは航空母艦だけでしかない!」

「は? な、なにが総統の悩み、なのでございますか?」

「君も考えたことは無いのかね? わが国が遠国と戦争した際に兵を派遣しようにも島国や、鉄道の輸送困難な場所かもしれないということを!」

「あ、いえ。 そこまで考え付きませんでした」

「輸送船を揃えようにも数に限りがある現在と、今後の交易に必要不可欠な状態だろう船を輸送船代わりに使えないだろう… ならば、航空母艦を巨大輸送船として使うのだよ!」

「な、航空母艦を巨大輸送船代わりにですか?」

余りのことに海軍首脳部の要人達は固まってしまう。
素人だからゆえの考えなのだろうか? ヒトラーの言うとおり航空母艦の格納庫は貨物を載せるのには十分適しており、元が戦闘艦ゆえに攻防能力も備え付けられ長期作戦可能な航空母艦であれば、何事も対処可能だということだ。

ここでレーダーは瞬時に考えた。
この総統に対し航空母艦を輸送船代わりに使用するのを止めさせるべきか?
それとも、輸送船としても使用を全面的に認める事を条件に最強ドイツ海軍への道を切り開くのか?

総統へ止めるように言えば、陸軍・空軍好きな総統は海軍への資材配給を減少させないだろうか?
聞くところによると空軍は敵地への補給も可能な長距離爆撃機を開発中と聞く。 もしも、我々海軍が反対し空軍の新型長距離爆撃機が有効運用されると… 海軍の航空母艦保有は夢になる恐れが… しかも、仮に少数の空母建造を許可されただけでは約200機近い保有の機体だけでは、空軍からの横槍が激しくなるだろう。 そうなると、海軍は之から空軍の足元以下に成り下がると言うことなのでは?

だが、仮に認めるとどうなるだろうか?
1950年度までに上記の航空母艦の半数を保有すれば予備や練習も含めると1000機近い航空機の保有を許可されるだろう。
そうなると之だけの機数を持っていれば海軍航空隊の設立も保有も完全に認められ、空軍からの横槍が無いのでは?



「総統閣下。 確かにその案は有効でしょうが… 現在建造中のグラーフ・ツェツペリン型2隻だけでは心許無いのでは?」

まずは聞いてみることにしよう。
このまま総統が航空母艦の大量建造を了承するのであれば、我々も賛成する他ないだろう。


「確かに。 だが、今現在4隻分の艦があるではないかね?」

「な… そ、総統閣下! H級戦艦を航空母艦へ変更なされるおつもりですか!?」

レーダーだけではなく、海軍側の要人全てが総統の言葉に反応した。
彼らにとって航空母艦の保有による海軍航空隊の設立を夢見ていた。 だが、海軍の花形でもある戦艦の保有も同じこと。


「前世界で、日本やアメリカ等では戦艦の船体を航空母艦へと変更したと聞いている。 しかも作り始めたばかりなので、変更も容易であろう?」

「し、しかし設計や航空母艦の運用を知らない我々が5万7千トン級の戦艦を航空母艦へと変更した場合… グラーフ・ツェツペリン型の二倍近い船の運用は、海軍は正直言って自信がございません」

3万トンを切っている航空母艦でさえ、まだ建造途中なのである。
それ自体の船さえ運用したことがないのに、いきなり2倍の巨大船を動かせるほど海軍は自信が無い。

最低でも5万トンクラスの航空母艦の建造になるだろう。
そうなると航空機100機搭載も夢ではないにしろ、あまりにも無謀すぎる故に賛成するのに躊躇せざるおえない。

「グラーフ・ツェツペリン型は新たに輸送船の代用もできうるように、41年までには昼夜兼行して改造・建造を行えば出来るのではないのかね? 今でさえ前倒しで建造しているのだよ? それに今から航空母艦へと変更して建造されたとしても、4隻揃うまでに44〜45年まで掛かるであろう? その約3年間近くもグラーフ・ツェツペリン型を運用しているであろう海軍は自信がないのかね?」

ヒトラーの言葉は挑発だった。
もしもこのまま駄々をこねる様なことばかりいえば、海軍は無用者扱いされるであろう。
そんな事があって堪るか! 既に四万トン級の戦艦を保有する段階に入っていて、どうして仮に五万トンクラスの航空母艦の運用が出来ないというんだ! 運用できないなぞ、そんなことは無い。 自信が無いなら、自信をつけるまでだ!


「総統閣下! やって見せましょう。 偉大なる第三帝国海軍の意地と誇りに掛けて、第三帝国への繁栄の為には、我々は既に死ぬ覚悟はできております!」

レーダーの発言にその場の海軍将校達まで同じ様に考えていた。
もしもここで頑張らないと、今後海軍は陸・空軍の傘下にまで落ちる可能性があるからだ。


「そうかそうか。 海軍総司令官がそう言ってくれると心強いものだ。 よし、ではグラーフ・ツェツペリン型を輸送にも適するように改造し、それの教訓を得てからでもH級戦艦を航空母艦へと変更すると良い」

「いえ! もはや海軍は航空母艦無しでは… あまりにも弱すぎます。 明日にでも全て計画案を練り上げ、建造計画を進めます!」

ヒトラー自身からの優しい口調に対し、レーダーは早く航空母艦を保有し総統への忠誠を見せ付けるかのように建造計画を進めることを宣言。
彼らにとって海軍は既に転移後初の勃発的奇襲攻撃によって… 航空母艦の必要性に気付かされていた。 それは、先のシーバン連盟へと駒を進めていた陸・空軍とは違い、近海の調査に乗り出していた戦艦・駆逐艦が思わぬ攻撃法に損害をこうむり、ダメージ的なダメージを敵に与えられないまま、その時奇襲を受けた全ての艦艇が離脱したという、海軍にとって情けない事件でもあった。


inserted by FC2 system