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『第三帝国召喚外伝 前世界編』01


第三帝国召喚外伝 前世界編01



「同志ジューコフ。 欧州は… 今はどうだね?」

「は、同志スターリン。 現在フランス国家と旧ドイツ領を東西に分担していますが、何も懸念することはございません」

モスクワの赤軍トップクラスの会議において、狡猾なスターリンは有能な将軍として名高く、もっとも頼りにしているジューコフの言葉に安堵の顔を浮かべる。
書記長が安堵の表情を浮かべているのに、その場の全ての人もホッとしたような表情になっている。


そして、どうしてスターリンが欧州を気にしているのかというと。

ソ連は突然消滅したドイツ国家の領土(山脈地帯)に侵攻。 侵攻理由は治安維持及び調査活動の為と公言しつつ、実質はドイツ東部領土とポーランドを瞬く間に攻撃し、占領。
同じ様に、調査を目的に英国に一切の連絡もいれずにフランス軍は侵攻。 ソ連と同じ様に西部地域のドイツ領土を手中に収める事に成功し、そのままソ連との戦いは不味いとばかりに不可侵条約をソ連に通知すると、ソ連側もポーランドや旧ドイツ領土のユダヤ人問題が解決できないので、喜んで締結すると。


「我が大英帝国は、悪しき国土へと染まりつつある欧州大陸の邪悪なる覇権国家に対し! 自由を平和を勝ち取る為には、非常手段も辞さない!」

『盟邦国が突然消えてしまい、その領土を泥棒の様に掻っ攫う者達は油断ならず! イタリア王国は両国に対し断固たる処置を施すものなり!』

『世界平和の為、悪しき国家形態でもある共産主義化を防ぐために、我が大日本帝国はソ連・フランス両国に対し断固たる手段も辞さず!』

両国家の宣戦布告も無しにポーランド占領・ドイツ領土の占拠・友好国への一切の連絡なし・不可侵条約の締結等に業を煮やした英国はフランス政府との国交断絶を宣言し、全ての軍関係者含む英国人は欧州大陸より本国に帰還する。
同じ様に友好国として存在していたドイツの領土を占領したフランス・ソ連への敵愾心が強まり(共産主義化の恐れも含め)イタリア・日本政府は、フランス・ソ連への旧ドイツ領土撤退を目的に英国と結束し、英国との同盟を全世界に宣言し『欧州解放連合』を名乗る。



「欧州平和の為に、偉大なる平和国家ソ連と我が国は軍事同盟を結ぶものなり!」

「本日よりフランス政府と我が国は兄弟である。 今後兄弟国は平和の為に、欧州維持の為に力による平和を勝ち取るものなり!」

之に対し、フランス・ソ連は同盟関係になり欧州を両国で共存共栄しようと手を結び合う。
フランスは英国の戦力を一挙に激減させようと欧州解放連合(英国・イタリア・日本)の友好国になりつつあったスペインに侵攻(スペインは共産主義化・イギリスや世界中との交易断絶を恐れたために、英国よりに移って行く)

アメリカ合衆国では、対日戦を考えていたものの今回の出来事によって英国が日本と手を結んだことにより、アジア方面での戦争及び世界各地に広がる英国植民地の領空・領地・領海での行動を制限されたために英国とは友好国とし(腹いせに同盟国とならず)中立によって、一気に第一次世界大戦の時のように儲かろうと考えた死の商人の後押しによって、アメリカ政府は両陣営に対し中立姿勢を取る形となった。



1940年某月。

フランスの大軍にスペイン政府は欧州解放連合に救援要請を通知し、スペイン戦争が勃発。
スペインからの救援要請に対し、イタリアはソ連の動向を注意しつつイタリア北部に軍を移動し、ソ連への防波堤の役目を理由に国外への軍移動は見送った。
同じ様にソ連もポーランド侵攻・旧ドイツ領土問題を抱えていたのでフランスへは物資支援・後方支援程度の部隊を進出させる程度とした。

しかし、イギリス・日本は有力な自国の艦隊を派遣。 日本は遠く離れているために到着は遅れたものの、イギリスの高速戦艦と日本の金剛級戦艦は合同で夜間のフランス軍港への攻撃を敢行し、フランスは中立国・ソ連からのスペイン戦線への物資が一挙に失われる形となってしまう。

フランスも戦艦・航空母艦を出航させようと考えたものの訓練・砲戦能力の違いからフランス艦隊の出航は見送られた。
之を好機にとばかりにイギリス高速戦艦はフランス主力艦隊の軍港に攻撃を行おうと進撃するものの、多数のフランス爆撃機の攻撃により、巡洋戦艦フッドが多数の爆撃・雷撃を回避しつつも損害を与えられ撃沈。 さらに友軍の艦艇も多数が被害にあったことからイギリス艦隊は撤退。




フランス軍は数多の物資を失い之以上のスペイン戦は苦しくなっていく。
反対にイギリスもソ連への警戒・植民地の防衛上主力となる戦艦が分散されている為にフランスへの攻撃が見送られ、スペインへの救援は海上封鎖によりフランスを日干しにしようと画策した。

この時別働隊として、リヴェンジ級戦艦5隻を主力とする艦隊が出撃。
出撃目標はソ連海上封鎖であり、絶え間なくソ連領海において海上封鎖を行い、フランス・中立国経由から送られてくる輸送船団・艦隊の妨害を行う。

この時の海上封鎖に対し、スターリンはペトロパブロフスク級30cm砲搭載戦艦2隻を出撃させるものの…


『敵ペトロパブロフスク級戦艦2隻視認! 戦艦級以外に艦影見えず!!』


「ほぅ、この荒天かの中出撃してきたのかね?」

「その様ですな司令官。 しかも、こちらと同様に駆逐艦がいないようですし…」

「ふむ、純粋な戦艦だけの編成による砲撃戦が始まるというわけだね?」

「サー。 しかし、直ぐに終わらせて見せましょう」

「期待しているよ、艦長」

「サー。 全艦砲撃戦用意! 全艦の全砲門を用いて敵ペトロパブロフスク級先頭艦に対し、一斉砲撃を行う!」

イギリス艦隊対ソ連海上封鎖艦隊旗艦『リヴェンジ』から敵海上封鎖艦隊撃破に向かってきたソ連艦隊に対し、全同級艦による一斉射撃による攻撃を艦長は命令。
既に打ち合わせ通りな為に艦長が各艦への命令は行き届き、大西洋方面の荒天化に艦の運用が難しいと置いてきたり、避退させている巡洋艦以下の補助艦がいない純粋な戦艦編成による砲撃戦が行われたが…


『敵一番艦数発命中! 炎上中!』

「ほぅ、40発もの弾が発射されただけはあるな」

「はい、その内の数発が命中し大破炎上中。 しかも艦橋部分・機関室が命中した模様で速度が格段に落ちていますな」

偉大なるペトロパブロフスク級旧式戦艦では、当たり前の如く衆寡敵せず。
合計40門もの38cm砲が一斉に敵ペトロパブロフスク戦艦に降り注ぎ、一斉射目においてもろくも旧式戦艦ペトロパブロフスク級一番艦は大破炎上の後に撃沈。
同じ様に同二番艦も数射目において、30cm砲弾防護では脆い紙の如くであり数分の後に撃沈してしまった。

「ど、同志スターリン。 ペトロパブロフスク級戦艦二隻を含む、英国海上封鎖艦隊に対し… 敵に一隻も損害を与えられないまま、全滅いたしました」

「くそ、英国めが! こちらが海軍兵力が少ないと見て、汚い事を!」

「ど、どういたしましょうか?」

「まだ此方には戦艦一隻が残っているんだ! 向こうが海上封鎖に出るならば… 至急、黒海艦隊所属戦艦を地中海上において通商破壊活動を命じよ!」

「だ、ダーーーーーー!」

一気にバルト海艦隊の主力を失ったスターリンは、敵が海上封鎖に出るのであれば、こちらも同じ様に海上封鎖作戦を命令。
之に当てはまる艦は既に黒海艦隊所属のペトロパブロフスク級戦艦三番艦しか存在しなく、イタリア・イギリスの生命線とも呼ばれる地中海方面の通商破壊を行わせるが。




「ど、同志艦長! て、敵イタリア艦隊発見!!」

「慌てるな! 敵艦隊の編成を報告しろ!」

「は! な……て、敵コンテ・デ・カブール級戦艦2隻・カイオ・デュイリオ級戦艦2隻!! 他巡洋艦級以下が数隻!!」

「な…イタリアは全主力艦隊を振り向けたと言うのか? ば、馬鹿な」

「ほ、他にも3連装砲搭載艦2隻が見えます!」

「く、それはイタリア海軍の新型艦…『リットリオ』級だな。 まだ完成されていなかった筈なのに…」

『こ、こちら後部艦橋見張り所! 後方よりクイーン・エリザベス級戦艦2隻・金剛級戦艦2隻が接近中!!』

「な、なに!?」

突然の報告に艦長や幕僚達皆がその瞬間…… 数分先に訪れるであろう、己の死を実感した。

イタリアに対する海上封鎖の為に同ペトロパブロフスク級三番艦(黒海艦隊所属)も出撃させたものの、イタリア王国海軍はコンテ・デ・カブール級2隻・カイオ・デュイリオ級2隻・新型戦艦リットリオ級2隻(強引に完成させた経緯あり)が迎撃にあたり、イギリス船団護衛として地中海まで航行してきたクイーン・エリザベス級2隻・金剛級2隻が急遽之に加わり挟撃する形となり、ペトロパブロフスク級三番艦『セバストーポリ』の運命は決まった。


「腐れ共産主義のスターリンの鼻を明かせ、これで一大海軍国の仲間入りだ!! 祖国イタリア・乙女の為に撃てぇ!!!」

「全艦! 我らが弟子国でもある日本やイタリア海軍なんかに負けるな! 紳士的に、そして優雅に全砲門発射ァ!!」

「夢にまで見た砲撃戦だ! 一撃必中!! 地下の東郷元帥に、先輩国の英国に無様な姿みさせるなよ! T字戦法全砲門発射ァ!!!」

各国の戦艦艦長達は夢にまで見た砲撃戦に、熱がかなり篭った様子で発射命令を下す。

あまり広くもない地中海においてこうも簡単に単艦だけのソ連旧式戦艦(黒海艦隊所属の補助艦艇は軍港防衛の為に出撃せず)を捉えた訳は、日本陸・海空軍から輸送・偵察目的で運ばれてきた爆撃機が地中海の空軍基地に数機ずつ配備されており、さらには潜水艦数隻が黒海方面で睨みを利かせて情報収集を行い、それらの飛行機・潜水艦が、懸命な捜索の元発見し、地中海方面の全ての戦艦を集結させることができたのだ。


合計32cm砲40門、36cm砲16門、38cm34門というたった一艦(30cm砲12門)に対し、活火山の様な大砲撃によって何処の戦艦が命中したのか判らないまま、一斉射目において数発の命中弾を与えられたソ連戦艦はゴミ鉄の姿へと変え、地中海に永遠の眠りにつき革命後唯一保有していた戦艦(旧式戦艦)を全て失ってしまうと言う事態に陥ってしまう。


これによってソ連は、若干な中東方面からの輸入を頼るしかなく(米国の民間経由) 同海軍の不甲斐無い戦力に怒り狂ったスターリンは。


「我が偉大なる国にとって! 大英帝国こそ、真の共産主義国最大の宿敵である!」

と、各将軍に対し言い伝え(怒り伝えたと言った方が言いのだが、書記長に粛清される恐れがあったためにその部分は修正されている)
偉大なる大海軍戦力を整えるように、翌日より各造船場では人の行き来が激しく増えていく。
何故大英帝国だというのかは、戦艦の保有数が多くソ連海上封鎖作戦でも5隻もの戦艦を投入できるという点がポイント。

イギリス・イタリア・日本艦隊の海上封鎖はものの見事に成功し、ソ連艦隊の主力を全て撃沈。
フランス艦隊はイギリス・日本の高速艦隊に恐れていたため(全ての参加国戦艦の集結も含め)に出撃せずに、フランス海上封鎖も見事に成功した。

しかし、上層部の政府と民衆は他国の為に自国の若者が血を流すことへ乗り気ではなく(イギリスは戦艦一隻が損失)
準備も何もしていなかったイギリス・日本は艦隊の維持費だけで多くの戦費が消失していき、そろそろ戦争を止めたいと願ってきていた。

同じ様に、戦略物資を失うものの戦艦一隻を撃沈した成果に喜んだが、スペイン戦線において頑強に抵抗し果敢に攻撃してくるスペイン軍に、物資不足が目立ってきたフランス軍は之以上の侵攻は無理だと判断。


この様な考えから、イギリス・日本・スペイン・イタリア・フランス・ソ連はアメリカの仲介で次の内容でスペイン戦争は終結した。
フランスはスペインへの侵攻を止め自国へと引き上げる代わりに、イギリスは海上封鎖を解除する事でスペイン戦争(別名 第一次欧州戦争)は終結した。


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