『第三帝国召喚』04


第三帝国召喚 04



ここに記すことは、我が偉大なるドイツ第三帝国がこの世界に転移されて約三ヶ月が経ったものである。





ドイツ第三帝国万歳!

さて、この日記を続けるのは… いや、やっと日記を書ける時間ができてなによりだ。

私ことルントシュテット(01での上級大将)は、総統が転移されたあの日に倒れられ、その後不肖この私が国家防衛の要となる陸・海・空の将軍達を掌握し、総統不在はこの老体がよく持ったものだと今でもよく思う(何せ、もはや齢60を過ぎていることだしな)

それにしても、我らは転移から三週間が地獄だったと記しておこう。
何せ、我々はいきなりこの世界に何の因果か呼び出されて、右も左も判らなかったからである。

しかし、総統お気に入りでもあるロンメル少将。
そう、彼の連れて来た…… なんと言って良いのか、私は今でも夢を見ている気がしてならない!

そう、彼は我々にとって重要な情報源を持ち、さらには我々ドイツの子供達に就寝前に聞かせる… 妖精達と出会ったことにだ!
妖精と言っても彼らは黒妖精という風に外見上はそう判断されかねないものの、魔法たる力を扱える彼らは間違うなく妖精種族と断言できる。

ロンメル少将が彼らと出会い、彼らの入国を許可し彼らを滅亡させようと考えていた西方諸国連合体の一国に追撃され、かなりの数を討ち果たし我がドイツに入国してきた

少将よりの連絡に我々は戸惑ったが、我々軍人としては国家の防衛上周辺諸国の情報を知りたいと願い、彼らを首都まで来てもらうと何とも彼らの情報はありがたいほどに有益であり、今後の我が祖国のありようも考え出せる点については、その場で聞いていた将軍達は皆満足していた。

しかし、それ以上にも彼らがあのエルフ(正式名称はダークエルフだが)であり、魔法が使えるという点についてはその場の皆が童心に返ったかのような輝く眼をしていたのは、苦笑せずにおれまい。
それはこの私もそうなのかもしれないし、あのゲーリングでさえも最初は怪しい眼つき見ていたものの、すぐさま賞賛の言葉を吐き誰よりも驚くその姿は、いやはや面白いものを見れたものだ。

さらに、彼らの情報によると我々にとっても、いやこの場合は鉱夫のほうが親しみやすいだろうが、ドワーフ族もいるというではないか!
しかも、彼らドワーフは我々の知っている通りに山に住み、金や銀や銅や鉄を精錬させていると聞く。

もはや、この世界は我等の知っているおとぎ話の世界そのもののようである。

それ以上にも我々は驚きの連発であった。
なにせ、この世界には竜が存在し、それを国家が兵器の一つとして運用しているというのだ!

飛竜や戦竜なる竜はわが国が他国と戦う際に、真っ先に脅威となるかもしれない。
だが、我々にも戦車がある。 だが、わが国の工業能力では今以上の増産は無理であり、今の兵力での運用しかないであろう。


さらには総ての国家が我々の知識上、中世の国々と同じ行政や軍事だと言う点である。 この世界では、戦竜・飛竜等を主体としそれを大砲(魔道砲)という砲もあるそうだが、わが国の大砲からいってもそれ程の脅威にはならないであろう。

今後わが国は、戦竜や飛竜対策を十二分に考える必要性だけはあると、私は思うが。

さて、私の知っている国情の事を書き、最後にしようと思う。
今度は何時この日記を書けるのか判らないがね。



一つはダークエルフの少女の治癒術により、総統がご復帰なされたことだ。
我々は総統が元気な姿で現れると、『総統万歳!』を連呼したほどであり、これで国家が下手に滅亡の危機に陥らなくなったことに安堵したものだ。


そういえば、副総統のルドルフ・ヘスや、総統の秘書格であるマルティン・ボルマン等は安堵の為か、表情がかなり緩んでいた。
彼らは総統の作り上げられたナチ党の総統以外では有力人物であったが、その主となる総統が不在であり、自分達が勝手に軍を動かし国益の不利になることを恐れていたのだから、彼らにしてみれば総統ご復帰は肩の荷が降ろされてどでほど嬉しいことやら。

実際に、総統が倒れられた翌日には彼らから軍は国家の防衛をお願いするように依頼され、彼らナチ党は国内の治安にあたると言っていた。
同じ様にSS長官であるヒムラーも各地での秩序と安定を前提に、ナチス党員と共同で治安維持していたようであるが。


そしてご復帰なされた総統だが…

しかし、あの御方は今まで以上に何かを知っている… いや、何かを学び取ったかのような眼つきをしていた。
多分、ロンメル少将やダークエルフから総統不在の軍の動きや国家情勢を聞き、周辺諸国の力や経済、さらにはこの世界の事を知り、既に総統は何かを考え付いているのやもしれない。



そして、総統は我々が総統不在の際に軍事権を発動したのに関しては不問にしてくれた。
不問どころか、賞賛されたほどであり、ポーランド侵攻軍集団をすぐさま総ての国境線に配置し、国家防衛に当たる様に指令なされた。


そして、宣伝相ヨゼフ・ゲッペルスに命令し、現在の国家情勢を全国民に知らせる様に総統は命じられた。
これには、陸・海・空の総ての将軍とナチス党高官達の私を含めたほぼ総てが一斉に反対したものの、総統は次の様に仰られた。

「我が国は陸続きであり、周辺国には飛竜なる航空部隊が存在し、我らドイツ国民にとっても親しみぶかい妖精諸君。 そしてドワーフ族がいるのに、どうして隠す必要があるのかね?」

「さらに、言わせて貰えば… この私は国民に信頼され選ばれた者であり、その国民の信頼を裏切るような真似は到底許されざるものである」

と、総統は断固として全国民に総ての事実を告げることを選択なされたのだ。
そして暴動や、国民の混乱に対するために総ての軍関係者には先にこの事を明かすように説明し、そのままナチス党及び全軍をもって国民の動揺を防ぐために、警戒体制を先に布きおえてから国民に総ての事実を発表したのだ。



あの日はかならず歴史に残る重要な日と、誰もが思っただろう。

総統は民衆の前に姿を出され、さらには新聞やラジオ等を総動員し総ての国民に今の我が国の現状を伝えた。
現在の国情を聞いていた民衆も最初は動揺していたものの、総統の力強い言葉と、今後我が国は迫害されている妖精族を助けるという事を発表なされた。


そこで総統は、ダークエルフ保護法を布く旨を伝えられた。
この保護法には、外地に隠れ住んでいる総てのダークエルフは我が国が全面的に保護するという法案である。
諸外国でドイツに移住したいものはドイツが責任を持って之を保護(移住から生活まで)し、移住中や此方に来たい旨を伝えた後に外敵から襲われるようであれば、ドイツ本国の持てうる限りを持ち之を護るという法案である。

さて、ここからは周辺国家等を書いていこう。

現在我がドイツ第三帝国は北方は海である。
海の先にも国家が存在しているようだが、我々の所にいるダークエルフでも知りえない国家があるらしい。
どうやら他のダークエルフとの情報交換を行えば直ぐに判明するらしい(ここに来て貰っている彼らは西方諸国の情報ならば、その精度は高いと自負していた)
今現在他国に隠れ住んでいる彼ら(ダークエルフ)に保護する条件に、我が国の為に働くという条約を決め、現在では数万以上のダークエルフが移住してきている。

法案を発表した翌日にダークエルフが周辺の同胞に呼びかけ、そのまま3週間と経たずに数万の彼らが移住してきたのだ。
この事から、軍上層部では周辺国やこの大陸はかなり広大だとの意見が一致し、早速将来の陸軍のあるべき道を検討しだした。

ロンメル少将の連れて来た彼ら(ダークエルフ)が避難して来た西方地域には、『ガルド皇国』(一般に皇帝同盟とよく使われる。 理由は皇帝一族の多くが小〜大までの国土を賜っているから)と言う皇帝を主とする大国とそれに同盟(傘下)の国々が存在している(ロンメルの遭遇したレーム公国もその皇帝の一族)
この国(連合体)は、ダークエルフ族を壊滅する事を法律化し、さらには資源獲得の為に我らの大陸地方一の資源山脈に住んでいたドワーフ族と数百年前から戦争を行い、数十年前にドワーフ族が敗れてしまい、今は他国に大量移住しているとのことだ。

南方には、火の水と言うのがあるらしい。
そう、ダークエルフ達がそう呼称しているらしい物はどうやら石油らしいとの我々の考えで、今現在ダークエルフ達に石油かどうかの捜索を依頼している。
その我が国より南方には中から小国までが数十ヶ国が存在(石油もどうやら各国にあるらしい)しているらしいが、それらの国々には現在『皇帝同盟』から侵略され、仮の住まいとして移り住んだドワーフ族が大量に移住しているとの事である。

東方に関してだが、ここは大国と中から小国までが集まった『ニューラン通商同盟』その名の通りに通商条約を結んだ国家連合体が存在しているらしい。
その国家連合体は、今もそうであるが皇帝同盟連合軍と度々戦争を繰り広げているらしく、我々の今現在のドイツ領土には元は山脈が存在し、その山脈を迂回したりしながら彼らは敵国に進軍していたらしい。

この東方諸国(通商同盟国家群)は主に自国の貿易の利権を守る為に発足された連合体であり、皇帝同盟から国家の利権を犯されそうになり彼らが同盟を発足したのが事の始まりらしく、総統は彼の国々に対し使節団を派遣し第一に第三帝国の領土及び国家を認める様に交渉させた。 

さらには通商条約の終結及び不可侵条約の締結をも目的に派遣なされた。
使節団の報告によると、彼の国々は最初は嘘だと思っていたようだが我が国からの献上品(ドイツ工芸品)の出来の素晴らしさと、彼の国々の外交官を本国に招きいれ彼らも信じたようであり……

ふむ、その後なのであるが総統が一つ面白いことを考えられ、陸軍と空軍の一大演習(対要塞戦)が執り行われ一個航空軍及び一個装甲師団と3個歩兵師団による演習が執り行われ、彼らは今まで聴いたことも無い爆撃音と砲撃音に腰を抜かしたようであり、彼らを調査していたダークエルフ諸君からの報告によれば、『ドイツ第三帝国の戦力10万人程で、連合体(通商同盟)の数十倍以上の戦力を持っている!』・『彼の国は飛竜の数が数百いや数千以上存在する!』と報告し、彼の国々の国王達は外交官の報告により暫くは様子を見るという考えで一致し、我が国第三帝国と通商同盟国家群との通商条約・不可侵条約を締結するに至ったのである。

このまま総統は皇帝同盟と、南方の国々と同条約を締結すると思われたのだが。


「皇帝同盟国家群は我が国の保護対象であるダークエルフを迫害する悪しき国家であり、第三帝国の威信に掛けてもダークエルフを完全に保護する為には戦争も辞さない!」

上記の様に総統は国民への演説に使われていた通りに、彼の国とは戦争状態に入ることを決意なされた。
何分にも総統ご自身を助け、さらには彼ら一人一人が魔法を使え貴重な情報源となる点から、総統率いるナチス党は肌の違う彼らを快く受け入れる方針を国民への国家情勢発表の前に決めたらしい。

まぁ、ナチス党の若者達は最初は反発気味との話を聞いていたが、総統ご自身の決定とダークエルフの能力を見せ付けられ、彼らも最後には折れたと聞いているがね。
ただ、部下から聞いた噂なのだが… どうやら今回の連盟諸国の宣戦布告無しの侵攻に対して、ドイツの敵となる者を殺せ!と囁いているらしいとの話を聞いた。
しかし、総統の命令に忠実な彼らだから間違った行動はしないだろう。 だが、彼らが十分に過激派だということは知ってはいるのだが… 今回の作戦に従軍するので、彼らの動静も気がかりと言えば気がかりになるのだろう。



さて、シーバン連盟諸国に関してだが。


「南方は我が国が必要不可欠となる石油が存在し、ドワーフ族が彼の国でも迫害されていると聞く。 そこで、今後の第三帝国の発展の為に石油確保及びドワーフ族解放作戦を早速将軍達は立案し、即時実行出来る様にしたまえ」

だが、総統は交渉使節団の結果は眼に見えているので戦争理由は十分だと言っておられたが、シーバン諸国連盟の一軍が我が国に侵攻し武器も持たない民衆数百名が殺されてしまった。 これには私惹いては陸軍の面子にも関わることだ!(突然のことで、侵入軍に対し損害を与えれなかったのだ)


ふぅ、ここまで書くのは疲れるものだが、今私が生きている時代のことを書いているのが後年誰かの役に立って貰えば幸いだろう。
もうそろそろ時間だ。 上記の総統のお言葉どおりに私達陸軍と空軍は対ポーランド戦に集めた総ての戦力を用いることに決定し、先の第一次世界大戦から新規に出来上がった空軍・陸軍の戦車部隊の戦訓を得るためにも必要との全将軍の意見一致で、再びポーランド侵攻軍をドイツ南方に集結させ何時でも作戦可能にさせている。 暫く輸入の無い貴重な物資や資材を使用することになるだろうから、この様な大規模な軍集団を組め戦闘できるのは今回限りだけだろうと…… 私は思う。



1939年 12月31日 明日より第三帝国は、長きに渡る戦乱が待ち受けている。 ルントシュテット上級大将



上記の当時上級大将の一人であった、ゲルト・フォン・ルントシュテットの個人の日記である。


ポーランド侵攻から3ヵ月後(転移から)の、1940年1月1日ドイツ軍は持てる戦力をもって南方諸国に侵攻。
侵攻理由はドワーフ民族の解放を掲げているという一点とし南方諸国に対し、ドワーフ民族への領土割譲・火の水の無償供給・通商条約・不可侵条約の締結を彼の国々に通達したが、東方諸国の方とは違いドイツの戦力を知らない彼らは侮り、『我らが国家の侮辱だ!』と戦争への道を選んだのである(到底飲まれざる条約であり、新参者の国に言われる意味が無いとの見解である。 之にはドイツ上層部はダークエルフの情報を下に分析し、そう結論付けたのだがこれは見事に成功し侵攻する理由ができたのだが)

突然宣戦布告も無しに第三帝国は連盟諸国に侵攻されてしまい、武器も持たない民衆数百名が殺されたことに総統ご自身と軍・民衆は大激怒し万全を期して侵攻したのである。


この日よりドイツは、『アーリア人種の優秀を見せつけよ!』・『種族開放!』・『長年に渡る戦争を自由へ!』を民衆は旗にし、彼らはこの言葉を合言葉に産業・工業を今まで以上に活性化させていく原動力となった。

もともと、ユダヤ人もいなくなりこの異世界でアーリア人種の優秀さを見せ付けようとの、先の大戦の敗北の恥辱をこの地で晴らそうと彼らは考えたのだ。
さらに妖精族のダークエルフやドワーフを助けるのは、我らが民族以外になし得ないと言う軍の合言葉とし(彼ら種族の情報や労働能力に眼を付けたのだ)
最後の理由は、この大陸地方では長きに渡り戦争が起こっているので平和にするという理由で、軍の他国への侵攻を正当化させたものであるが、これは国民も先の大戦の惨めさが残っており、この大陸地方だけでも平和にする為に努力しようと民衆はそう考えている(これによって、アーリア人種の優秀さや他国よりも優越を見出そうとの考えが少なからずある)


以上のことから、当時の第三帝国の国情及び周辺国家・種族の模様が大方判別できる第一級の歴史的資料である。
当プロシア陸軍大学校において、故ルントシュテット氏の日記より当時の軍から民衆の考え、そしてナチス党の考えが多少なり判り、今後の長きに渡る戦争への道を再び起こさないためにも本書『ドイツ第三帝国 転移からの戦争』から一人でも昔の出来事を学び取り、平和への道を歩むことを願う。


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