『第三帝国召喚』03


帝国召喚 03




「国民も私に賛同してくれ混乱もなくなによりだ」

一人紅茶を飲み干しながら、執務室で寛いでいる総統がいた。
彼は意識回復後、ダークエルフとロンメル少将から国家事情と周辺諸国及びこの世界について聞けるだけ聞き、彼はこの世界を掌握しようと考えていた。


「ダークエルフに、ドワーフ。 彼ら二種族だけでも我が第三帝国の配下に収めて置けば、国家も安泰だろう」

―いや、獣人族という力仕事に適している者達もいると聞く。 そうだ、彼らの保護してあげ国家への労働力増大にさせよう。

飲み干したカップを執務机に置きながらアドルフ・ヒトラーは新たにドワーフ族と獣人族の保護法を作り上げようと思案していた。



彼は既に現在の第三帝国の現状と、周辺諸国の変化を国民に公表した。
これには軍の高官達から猛反発を受けたものの、この世界には飛竜が存在しそれらが国内に飛翔されたり、陸続きである我が国であれば何れは知られるのであるならば先に公表し、国家が未曾有うの危機に立たされていると国民に訴えかけ、そのまま今以上の国家への忠誠・生産増大等と国内向けの産業や工業の国民一人一人の意思を確固たるものにさせようと考えたのである。


そして、某日。

ヒトラー自らの演台からの公式発表に少なからず動揺していたものの、我らが総統が力強く国民に落ち着くように訴えかける姿を見た国民は直ぐに動揺は静まり返っていく。 その様子を確認しながらアドルフ・ヒトラーは、用意されていた演説用紙を見らずに腕を大きく振るい、叱咤するかのような叫び声で国民に訴えかけていく。


「我が国は、天か? 神か? 何者かも知れぬ者にこの世界に呼び出された! 我等はこの世界を知らない! それはこの世界の国も同様で、我が国を知らない! 急に見ず知らぬ民族や国家が出来たと知ればもしや周辺諸国は攻めてくるのではないのかと、私は思う! その証拠としてこの世界ではダークエルフという妖精族を迫害し虫以下の扱いで見つけたら殺すのである! この様な世界があっていいのか! 私は答えよう…否、である! 人は生命ある者はそれなりに尊重されるべきである! それなのに我らが幼少から聞き知っている妖精族や、ドワーフ族等はこの世界で迫害されているのである。 そう、我が国の周辺諸国は大層なほど迫害が進んでいる。 私はそれを一人のダークエルフに聞き、こう考えた!」

演説の途中でヒトラーは後方にいる一人の少女を手招きする。
それは一人の褐色肌の少女『ダークエルフ』である。 その特徴ある耳を視界で確認できる者達は作り物か?内心疑っていたものの、他にもダークエルフ達が大勢出現し民衆に対し魔法を披露する。

物を浮遊させ、さらには兵士や彫刻・石造までもが彼らの手により浮遊させられていく。
もちろん民衆も無造作に兵士によって選ばれた者達もであり、本当にダークエルフが存在するのか!と、民衆は認識し始める頃。


「諸君も今まさに見て驚いているであろう。 そう、彼らは魔法を使えるのである! 彼らは遥か昔より平和に暮らしていたものの、それを同じエルフ族が欲望や野望の為に彼らを陥れた! そして、彼らは長いこと流浪の末にこの世界で右も! 左も判らぬ我らが第三帝国と出会った! これは何を意味するのか!? 諸君らは今まさに考えてほしい、そして学んでほしい!」

民衆や、軍関係者果てはダークエルフ達までもが総統の次の言葉を待っている。
彼の言葉は民衆や人を力強くさせ、その気にさせる素質があり今まさに今まで行ってきた自分達のユダヤ人迫害等を棚に上げている状態で、これからの総統惹いては第三帝国総ての新たなる目標が掲げられようとしていた。


「私は彼らと出会った! 彼らは大国や周辺諸国に迫害されている。 ならば問おうゲルマン民族よ! 我が国は大国ではないのか!? さらに問おう! 彼ら妖精族を助けずに誰が助けるのだ! 問おう! 今や迫害を常識視している周辺諸国や、この世界の者達に我が国が大国だと言うことを知らしめ様ではないか! 私は本日をもってダークエルフ保護法を承認し、彼らを… 惹いてはこの世界で迫害されている総ての人種に対し、我らが統べる平等な世界を作り上げようではないか!! その為に我が国民に力を貸してほしい! 諸君らはこの私に、輝けるドイツ第三帝国の繁栄や栄光の為に尽力してくれるか!?」

長い演説が終了し、ヒトラーは国民の反応を待った。
もしも、このまま動揺し暴動に発展するのであれば、彼は後世に暴君と罵られる行いをしようと考え、もしも国民が認めてくれるようであれば之を利用し、完全なる世界制覇への道を目指そうと考えていた。


ヒトラーは演説を終えて10秒も経たない内に、彼を見ていた民衆から最初は小さいが反応を示しだしていく。
それは段々と大きな津波へと変わり一が、十が、百、千、万と大きく皆一斉に溢れんばかりの大声で、民衆は自分達の道を決めたのだ。


『総統! 総統! 総統! 総統万歳! 祖国万歳!!』

首都が震え上がるほどの叫び声が国中に響き渡っていく。
暴動等に警戒していた軍関係者等も一斉に掛け声を合わせていく。
ダークエルフもつられて叫んでいく。 そう、今日この日総てのドイツ国民は新たに総統への忠誠を誓ったのである。


「ふむ、そう言えばそろそろ南方に存在するとか言うシーバン連盟諸国との交渉もどうなったか判るぐらいだな?」

昨日の様にあの大演説を思い出したヒトラーは、上機嫌ながら之から戦争を考えているシーバン連盟諸国との交渉の結果を楽しみにしていた。








「まったく何なのだあの外交官達は!」

「まったく、同意見ですな」

一人の豪華な服装を身に纏った中年を超える男性がそう叫ぶと、周りの同じ様な豪華な服装を着込みそれぞれの国家の象徴でもある王冠を頭に載せている。


「それにしても大変な事になりましたね」

「いや、本当にその通りだ」

「確かに、今まで山脈だけでしかなかった場所に急に一大国家が出来上がりええ〜と、『ドイツダイサン帝国』とか言うのが存在するので、以下の提案を呑めですからの」

ここには数十のドイツ第三帝国より南方に位置する国王達が集っている。
彼らは主に、西方の皇帝同盟国家や東方の通商同盟国家との板ばさみにあうことから自分達も連合体を結成して、領国を護ろうとの考えで彼らは同盟では無いものの連盟(攻守同盟に似ているが、盟主の指示に従う)条約を彼らは終結し、その中でも一番の力を持つシーバン王国を盟主と仰ぎ彼らは連盟国家の権利や他国からの条約終結等に対し話し合うために集っていたのだ(しかも、王自ら集うと言うほどの)


これら通称『シーバン連盟諸国』(民衆からは連盟諸国と言われている)は、小国が22国(常備兵1000〜3000人)中国が8ヶ国(常備兵5000〜25000人)の連盟諸国の総兵力数は10万人を超える。
ワイバーン(・ロード)は全体で300騎程度と、大砲は優に300を超えており戦竜800騎(予備200騎)を備える(通常なら諸国の総兵力は最大で15万にも膨れ上がろうとすれば出来るのだが、飛竜や戦竜に力を注いだために、兵力は低いのである)



そんな一大王国の一方面軍並みの戦力を保持する彼らに対し、ドイツ第三帝国はシーバン連盟諸国に対して以下の条約を提示したのである。

1、ドワーフ族の全面的な保障
2、ドワーフ族への領土割譲(ドワーフ民族が十分住める範囲)
3、火の水(石油の事)の我が国への無償供給
4、ダークエルフの保護及び、存在を認める事

等である。
いきなり我等の北方に国家が出来上がったから、迫害しているダークエルフやドワーフ(皇帝同盟との資源争いに負けてしまい、大量に移住してきた)彼らも最近は連盟諸国でも、十分な資源確保できる山脈を掘り当てたので、連盟は其れを奪うために目下ドワーフ族とも戦争中である。

4つの条件は到底呑まれざる物である。
条約1等は彼らに(今まで気付かなかった)資源を渡す等許されないこと。
条約2を認めると、ドワーフが移住してきている国の領土が狭くなり結果的に国益が少なくなり、国家が成り立てない(他国から国として認められない恐れもある)
条約3。 何故見ず知らずな国家(何の条約も結んでいない)彼の国に対し無償で火の水(石油)を供給しないといけないのか?(量によるが、移送手段だけでも莫大な金が必要となる)
条約4。 ダークエルフを認めると他国から敵視される恐れ。 彼らは悪しき者であるゆえに、保護する必要性が無いということである。

他にも、通商条約や不可侵条約の締結が盛り込まれている。




「私ことシーバン王国カリュウは、これ等の条件を認めん! 他王はどう考えますかな?」

シーバン王国の主であるカリュウ王がざわめいていた会議場の他国の王に対し提案する。
いや、提案というよりも『私の案に乗らない者は、後で踏み潰してくれる!』と言わんばかりの覇気をだしていた。

シーバン王国は常備兵25000人に予備として10000人の兵力を保持している。 これだけでも、連盟諸国一の兵力を持ちその兵の質も違い経済能力も諸国の上なので彼の国は盟主と仰がれている(その代わり、軍事や経済支援をしてもらうが)
それでも、彼らにとって(王)も盟主と仰ぎ今までの経済支援や、後で国が踏み潰されたくないという考えもあり、今回の帝国からの条約に不満がありどうせ弱小国が威勢を張っているだけだろうとの考えから、彼らは全員一致で条約の終結を行わない事にした。


「カリュウ王よ、帝国はどれほどの国家なのでしょうか?」

一人の国王が手を上げてそう質問する。
彼は小国を背負っており、一つの判断が間違うと国土を失う恐れからそう聞き出したのだ。


「うむ。 それがまだ判明しておらんのだ」

「いやいや、各王方よ。 どうせ弱小国だから一度は大きく条約を出しておいて、その後は下方修正した案をだしてくるのではないですかな?」

「うむ、リム王の申されるとおりであろう。 そうでなくては、一ヶ国程度の戦力で我らが連盟諸国の総兵力と戦えたとしても、その後経ち直せるまでに一体何年の月日が必要なのか」

「その通り! どうでしょか、カリュウ王よ? ここは一軍だけでも帝国に侵攻してみて、敵の戦力を見極めてみては?」

「それはいいのではないのかな? 私は賛成だ。 帝国の兵が弱ければ、こちらから向こうに対して不平等条約(連盟諸国だけが有益)が終結できるかもしれませんぞ」

「おお、それなれば皇帝同盟や通商同盟群とも十分に渡りあえるかもしれませんな」

「まったくその通りで。 何せ、あそこは山脈ばかりでしたがその分領土としての面積は十分ありますからな」

「ま、元は無資源の山脈で今は何百万も住める場所になっていると帝国の外交官も言っていた事ですし、調べるためにも侵攻軍を編成してみてはいかがでしょうか?」

各王達の進言により、一軍を編成しドイツ第三帝国への侵攻が決定された。
が、この時彼らは気付くべきであった。 相手が一ヶ国程度の戦力を立ちなおせるのに何年も掛るとしたら、それは自分達の国も同様だと言うことに。
そして、既に第三帝国はダークエルフを味方に付けており、情報戦においては既に負けているということにだ。
だが、今回の第三帝国侵攻に関してだけは予想外であり、連盟諸国の兵力や将軍の能力・要塞・地域の河川や山脈を調べるのに手一杯であり、ダークエルフ達もこの時だけではあるが彼らに負けたのである。




数日後シーバン連盟諸国の一軍がドイツ国境を侵入。
そのまま近くの村落を強襲し、数百名の死傷者を出す結果になる。

交渉の結果は眼に見えていた総統ではあるが、まさか何の布告も無しに自国が攻められようとは(しかも、無傷で逃がしてしまう)思いも知らず大激怒し、すぐさまシーバン連盟諸国に対し全面攻勢に出れるように命令を指示した。


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