『第三帝国召喚』02


第三帝国召喚02




「まったく、本当に未知の国に来たものだな」

ロンメル少将はそう自嘲するかのような笑みで、周りの光景を眼にする。
彼には2号戦車10両・3号戦車5両が配備された約500名程の歩兵付部隊である。
戦車に護衛される形で彼らは、母国の領土へと帰還途中である。 その中には褐色肌の者が数百名おり、彼らは特徴的な耳を持っていた。


その様な第三帝国兵と、違う民族をともなった彼らを追いかける騎馬隊が後方から見え出した。
それを確認したこの部隊の戦車長はうんざりしながらも、指揮車に乗車しているロンメル将軍に連絡を入れる。


「将軍。 いいかげんあいつ等どうにかなりませんかね?」

「ふむ、ポック曹長。 我々は彼らを護る義務がある。 戦車で敵騎馬部隊の側面より殲滅せよ」

「了解! 戦車前進! 第一歩兵分隊も続け!! 妖精さん達を護るために敵部隊を殲滅するぞ!」

―了解!

将軍の命令を聞き、この場の戦車隊長の号令により現在の領土を領有していると言うレーネ公国騎士団なる部隊との、数度目の戦いが始まった。


ここで暫く時間を戻し、事の始まりを説明しよう。


司令部からの命令の下、ロンメルは一個大隊程の部隊と戦車計15両による調査隊を指揮し、ドイツ西部に位置する未開の地の探索に赴く。
国境を越え20kmもの草原を彼らは走破した彼らを待ち受けていたのは、大河である。 幅3km程の大河を渡らないと調査ができないので、一旦は工作部隊を呼び出そうかと考えていると、向こう側に船を何隻も浮かべ、それを橋代わりに川を渡ろうとする集団を彼らは発見したのが始まりである。


最初にこちら側に渡ってきた者達に、紳士的にロンメル少将が挨拶していく。
それを最初彼の副官達があまりにも無謀であり、危険なので止めさせようとしたが、彼はそれを無視し渡ってきた少女の手をとってあげ(船の橋は高さと人の身長からいって岸部分よりも下)軽く挨拶をしだしたのだ。



「やぁ、お嬢さん。 こんちには」

「あ、貴方達は…誰ですか?」

どうやら彼ら(少女)は渡るのに必死で、突然こちら側の岸に人がいるのに驚いている様子である。


「ああ、そうだね。 自己紹介しないといけないね。 私はドイツ第三帝国のロンメル。 陸軍少将だ」

「ドイツ? 第三帝国? 一体どこの国ですか? 私達は聞いたこともありま…」

少女の言葉は途中で遮られた。
なぜか? それは少女の後を渡ってきた青年程の男性達が剣を片手にロンメルを警戒したからだ。
少女もまた、同じ一族なのであろう(見た目で褐色肌と一目瞭然)に護られるかのように後ろに下げられる。


「お前は、いや… お前たちは皇帝同盟国の者達か?」

「何だねソレは? 私達はドイツ第三帝国に忠誠を誓う陸軍将校で、あるが?」

「ドイツ? そんな国を聞いたことが無い、どこの場所だ!」

「ああ… そんなに憤ると、ちゃんとした冷静な判断ができないぞ。 青年」

「いいから答えろ!」

彼らはさらに一斉に剣を鋭くロンメルに向ける。
それを見ていたドイツ軍も既に応戦できるように準備がされているが、ロンメルは手で其れを制止させるようにジェスチャーする。


「ああ、答えるさ。 実を言うとね、我々の国は私の立っている後方約20km程にあるのだよ」

「なに… 嘘を言うな! この先には山脈しかない筈だぞ!」

「嘘ではないのだよ。 私達も実を言うとね、よく現状が判らないのだよ」

「現状が判らない?」

そのままロンメルは現在のドイツの国情を知っている限りを包み隠さず話す。
それらの話には、自分たちの国家とその領土以外が今まで知っていた場所ではなく、違う場所ではないかと考えて、自分達が調査として派遣されてきた事等である。


「……と、言う訳なので。 我々は君達の言う国家や地名が全然知りえないのだよ」

ロンメルの発言に褐色肌の彼らは驚いて聞いていたが、まさか嘘を言っているのではと剣を向けたまま彼らはこの場所がどこの国家が領有している等と話していくが、先の言葉通りに返答され、ロンメル自身がとても嘘を言っているように見えなく、彼らはドイツと言う国を説明され、次の事を聞く。


「……聞きたいのだが。 貴方達の国は、我々ダークエルフも暮らせるのか?」


ロンメルのドイツに関する説明に、ユダヤ人を迫害していた(それだけ悪意のある人種として)が、その他の人種等を取り入れながら豊かな国を作り上げていると言う説明があり、彼らダークエルフも住めるのかどうかを尋ねたのである。


その彼らの言葉に帝国兵士は一斉に


―ダーク…… エルフだって?!

彼らの一族総てがあの御伽話に出てくるエルフだと言うのに、聞いていた第三帝国の兵達は自分の耳を疑った(この調査に赴く総ての兵士に事情は、既に説明されている。)

彼ら一族もとい、ダークエルフは総ての国家から迫害されている。
特に、その魔法の力と知識の高さからエルフ族から敵視されてしまい、流民の様な生活を強いられていると聞かされる。
今この場の一族は隠れて暮らしていたものの、レーネ公国騎士団に見つかってしまい、脱出用の浮き船橋を利用してこちら側に逃げてきたのだと説明すると。



「将軍! 北方より騎馬隊が此方に向けて進軍中!」

「やばい! レーネ公国騎士団だ! 逃げろ!!」

帝国兵士の一人が何かを感じ取り、そのまま右に眼を向けてみると騎馬隊が疾駆してきた。
それが、彼らダークエルフの敵であり処刑人であるレーネ公国騎士団。 騎馬隊と徒歩の剣士では勝負にもならないと判断したロンメルと話していた青年は一声に逃げよと叫ぶと。


「全軍、こちらに進軍中の騎士団に向けて応戦体制を布け!」

ロンメルの一言に彼ら500名近い兵と、15両の戦車は一斉にダークエルフを護る陣形を布くかのように防戦体制を布きあげる。



「そこの者達に告ぐ! 汝らは何者だ!」

「こちらはドイツ第三帝国総統司令部直属の部隊である!」

騎士の一人の言葉に、ロンメルも声を張り上げながら答える。


「ドイツ? ソウトウ? 何だ其れは! 我らはレーネ公国第5騎士団である。 我等に嘘を吐くとはいい度胸だな!」

「嘘と言うかね? 我らはれっきとした第三帝国兵である! 国家の侮辱は其れ相応の報いを受けようぞ!」

「ははは! 我らは騎馬隊2000名ぞ! そちらが幾ら我等の追っていたダークエルフと併せても1000がいいところだろうが!」

レーム第五騎士団長は騎馬隊だけで歩兵の数倍の力があることを知っているが為に、かれらの力を侮っていた。
もしもこの時彼らが戦車や、彼ら500名からなる兵士全員に銃という武装の認識さえ判っていれば、この後の惨劇は起こらなかったであろうに。


彼ら第5騎士団は、国内に潜伏している(隠れている)ダークエルフを壊滅するように指令されている。
逃げてきたダークエルフ達は、騎馬隊には敵わないと見て逃げ出したのだ(非戦闘員があまりにも大部分を占めている為に)
そのまま何の因果かロンメル率いる調査隊に合流してしまい、彼らの位置より北方に架けられている橋から彼ら第5騎士団総員2000騎が追撃してきたのだ。


「それに、鎧も剣も装備していないお前達に何ができる! 丁度良い、不法侵入でお前達もろとも殺してくれるわ!」

騎士団長の長剣が引き抜かれ、彼ら騎士団が一斉に突撃しようとすると。


「全戦車隊及び、歩兵部隊… 攻撃開始!」

ロンメルの一声に彼の兵士は己の武装している火器で一斉に攻撃を開始する。
何十、いや何百も何千もの途切れることのない激音が鳴り響き、さらに5発もの草原を駆け抜けるかのような音が木霊し…



騎士団長を含む、最前列及び中部に展開していた騎士達は何が起こったのかさえ判らぬまま死んで行った。
さらに之ほどまでの音を聞いたことの無い馬が暴れだしてしまい、さらには残存の騎士達までもが騒ぎ出し、一挙に彼らの行動が乱れた隙をつきロンメルはダークエルフを護衛する形で逃げ出したのだ。


そのまま彼らは数度(何とか部隊として運用できるようにした)第5騎士団は数度にも及び追撃戦を繰り広げてきたのだ。
この果敢なる攻撃(騎士団長が戦死しているにも関わらずに)第三帝国に臆することなく攻撃してくる彼らに、ロンメルは彼らの祖国への忠誠心が強いことに感銘したと後に語る程であった。


追撃戦も10kmも過ぎると彼らも追撃しなくなった。
国境内に無事に帰還した彼らは、急いで総司令部にこの展開を報告すると、ダークエルフ達はこのままロンメルの護衛の下で、ドイツ本国に移送されてから、上層部の判断を仰ぐことになった。


どうしてあの時ロンメルが、ダークエルフを救出したのかと疑問に思った一人の将軍が問いただしたところ。


「彼らの力・情報は我等にとってかならずしも有益になるものだと、私はそう感じたのだよ」

そう答えた。
さらに、騎士団との戦闘理由に関しても、彼らがドイツ本国に入国(移住)したいとの話を聞いたので、これを理由に彼らを護ったのだと答えた。


そして、その後であるが。

いきなりの褐色肌の特徴ある耳の持ち主であるダークエルフ達が現れたのに、迎えの軍兵士や地元の住民達はパニック状態に陥りかけたが、ロンメルが戒厳令を事後承諾で布く羽目に陥り、彼はそのまま特別列車にダークエルフ一族500名を首都まで乗せていくことになった。

そこで、軍等が周辺諸国や彼らから取り入れるだけの情報収集をしたいという考えがあり、分配させて警戒をするよりか一箇所に纏める案が上層部で採用され、彼らは首都に移送される身となった。


そこで、一人の少女とロンメルは親しげに話し合う場面が見られた。

そう、あのゲルマン民族とダークエルフ族とのファーストコンタクトした少女は、薬学や医学に精通していることを首都の間護送の任にあたっていたロンメルに自慢げに話し(どうやら、紳士的な彼の態度に好感を持った様で、ドイツの事を知りたいという考えもあってか話だす) それを聞いたロンメルはそのまま彼女を連れて、総統官邸まで連れて行き現代(元の世界でもドイツ最先端)医術をもってしても意識不明の重体の身となっている総統を助ける事になるとはできなかったのに、彼女は数時間程でヒトラーに薬を作り上げて(我々の世界の薬の説明を受けただけでだ!)完全に助けてしまうとは、この時のロンメルは知るはずも無かった。


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