航空母艦 5001号艦級(No.5001 Class、Imperial Japanese Navy Aircraft carrier) 〜幻の汎用航空打撃戦力〜




海軍は昭和16年の第五次艦船補充計画で飛龍の設計を流用した302号艦(艦名に雲龍があてられてる予定だった、という説がある)の建造を計画したが、転移の影響により計画は中止された。
しかしその後『決戦兵力ではなく汎用打撃力としての空母』という主張が声高に唱えられる。即ち、機動部隊決戦や主力艦攻撃を主任務とするのではなく、世界各地のあらゆる地域に迅速に展開しうる緊急展開兵力としての性格を強調し、高速、中型の正規空母を多数整備するという案が持ち上がる。転移直後の機動部隊の華々しい活躍と同時に正規空母の数が絶対的に不足しているとの現状認識からくるものである。
艦隊決戦の主力としては絶大な威力を発揮するが、高価で手間の掛かる戦艦建造よりも比較的安価で小規模紛争にも手軽に投入しうる母艦兵力を整備するという考えはそれなりの説得力を持つものであった。しかし、転移直後の大混乱により帝國に大型艦を多数建造する余裕はなく所謂「空母汎用論」は足踏みを余儀なくされる。
昭和二十年前後に民間船と小型護衛艦艇の大量需要から解放される兆しが現れると、海軍は大型艦艇の整備計画を再開させることになった。昭和20年の第一次中期国防戦力策定案中に装甲巡洋艦と並んで中型正規空母の整備が主題となって現れ、F計画の成立と共に具現化することになる。
F計画では昭和21年中に赤城、加賀の代艦として302号艦に諸改正を施した先行量産型を二隻起工し、昭和22年にさらに二隻が起工される予定であった。最初の二隻は速やかに就役して欲しいとの要望から302号艦の図面が大幅に流用されるが、起工から二年以内に竣工する予定であった。
5003号艦は防御力における諸点を改良し、最初から射出機を装備する予定であったといわれる。(蒸気式か油圧式かは定かでない)飛行甲板面積の拡大、機関吸気方式の変更、消火態勢の充実などが導入される予定であったと云われ、大量建艦を前提にしてはいたが手抜きという分けではなかった。
F計画では昭和20年からの4年間で六隻を起工し、昭和26年には全艦が揃う予定であり、事実昭和二十年には5001号艦、5002号艦の予算が議会を通り、翌年には5003号艦、5004号艦の予算も通過している。昭和24年からのG計画ではさらに六〜八隻の建造が行われる予定であった。
海軍部内であった『正規母艦としては余りにも中途半端な性能』という指摘は確かに賛同すべき点ではあるが、本級が艦隊決戦ではなく『海からの投射力』というコンセプトの基づいて、数をそろえることが最重要視されていた点を忘れてはなるまい。尤も、大量建艦といっても2万トン弱の母艦を足掛け九年強で12隻完成させる、というのには昭和20年当時の国力の限界が読み取れ、十年後のユフ戦争を受けて成立した同種の計画と比較すると興味深い。
海軍部内の各種勢力の反対に遭い一隻も完成することなく計画は中止されたが、ユフ戦争初期において母艦兵力が不足し、代わって増強された水上砲戦部隊の苦戦を鑑みると、本級の意義は極めて大きかったであろう。

5001号艦 要目 (括弧内は5003号艦)

基準排水量:18,100t(19,200t)
全長:231m(235m)
機関:160,000馬力
速力:34,5ノット (34.2ノット)
固定兵装:65口径10cm高角砲 連装8基 40mm連装機銃8基 25mm3連装機銃14基
   格納庫:密閉式二層
昇降機:2基(5004号艦で舷側昇降機を実験するという説もある) 
搭載機数:56機

同型艦
[5001号艦]  昭和21年8月起工     同月計画中止 解体
[5002号艦]  昭和21年9月起工予定  同8月起工中止
[5003号艦]  昭和22年起工予定    計画中止
[5004号艦]  昭和22年起工予定    計画中止
[5005号艦]  昭和23年起工予定    計画中止
[5006号艦]  昭和23年起工予定    計画中止
[5007号艦]  昭和24年起工予定    計画中止
[5008号艦]  昭和24年起工予定    計画中止
[5009号艦]  昭和25年起工予定    計画中止
[5010号艦]  昭和25年起工予定    計画中止
[5011号艦]  昭和26年起工予定    計画中止
[5012号艦]  昭和26年起工予定    計画中止

注)5001、5002号艦を先行量産型と分類し、5003〜5006号艦を前期型、5007〜5012号艦は後期型とする分類もある。


注:画像は天翔艦隊様(http://www.d1.dion.ne.jp/~j_kihira/tensyofleet.htm)が公開されているものに猫じゃらしが改変を加えたものです。



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