『帝都、高級将校の集うクラブにて』


帝都、高級将校の集うクラブにて

「ほう?西部域は独立嘆願をしてきましたか?」

「あぁ頭の痛い事だ。」

「…良いじゃないですか、独立認めてやっても。えぇ一個の完全な独立国家として認めてやるんです。」

「は?何を言うんだ!?」

「何か?」

「何かって…何で帝國が敗戦国のはねっかえりどもを認めてやらなくてはいけないんだ!」

そう問われた男はくすっと笑うと
「地形ですよ、閣下」

「…あ!」

「えぇそうです。これが東部や北部つまり沿岸部を所有する地方ならば到底認める事なぞできませんが、
西部はガルム大陸内陸部に向かって広がっている地域、確か沿岸部をその領土内に含みません。
レムリア総督領、ならびに全邦国、大陸同盟諸国全てに西方レムリア王国に対し禁輸措置を
とればよろしいのですよ。仮に他の列強が裏で援助しようとしても既存の港は使えないわけですから、
その輸送量は微々たる物です。
 加えてドワーフ族の産出していた魔法金属や岩塩などといった軍需、民需の必需品も彼等の手元には
届きませんね。袋小路のねずみってこういう事を言うんで
はないですか?」

「むぅ、しかし諸外国の評判は…」

「お忘れですか?帝國は旧レムリアの正統な政府とは今だ正式な終戦条約結んでいないのですよ。
 今だ戦争中の国家に対し表立って攻め入らないだけでも温情あふれる措置ではないですか?
 禁輸措置程度、戦時下では当たり前の話です。彼らが旧レムリアの正当な継承政府をうたうならば、
その責任も同様に彼等の負うべき荷物ですよ。
国境防衛任務は…そうですね北部5割、南部2割、中央1割、東部1割ぐらいの比率で旧レムリア軍に任せ、
帝國レムリア方面軍は指示統制をしながらレムリア軍の本質を知る良い機会でもありますね。」

「…」

「あぁついでといっては何ですが…
 この世界ではいまだに盗賊や山賊といった野蛮な連中が根絶されていないようですね。」

「それが?」

「話は変わるのですが、大陸同盟の諸氏は運動不足なんではないですかね?」

「!いくらなんでもそこまで…」

「いまだにレムリア憎しという風潮は消えていませんからね、少数のはねっかえりが 勝手に軍を抜けて国境の向こう側のあちこちの町で盗賊行為をしても帝國のしったことではありませんよ。
あぁもちろん帝國域内に来たときはちゃんと国章をつけるように言っておかないといけませんね。
…大切な友軍ですからね。」

「…君、角と尻尾が生えてないだろうね?」

「あはは、閣下は転移前から私を知っているじゃありませんか。
 回り全てを敵に囲まれた状態で、敗戦国の政府継承なんて寝言言うやからには誰かが目を覚まさせてやるのが
親切というものです。もっとも現地のレムリア総督府がどう判断するかまではわかりませんがね。
 本土には入ってきていない情報もあるかもしれませんから」

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