『今日僕達の村にお客さんが来た』


2月10日
森のそばでいつものように友達と遊んでいると
森の奥から女の人がやってきた。
雪のように白い肌と太陽のように眩しい金色の髪
長く尖った耳をしたすっごくきれいなお姉さんだった。
僕が一番年上だったので村に案内してあげると、
村長さんが慌てて走ってきた。
僕はその場で家に帰されてしまった。
ちぇお姉さんともっと一緒にいたかったのに

2月11日
村の大人の人が揃って難しい話をしていた。
てーこくとかせんじょーとか知らない言葉をいっぱい言っていた。
お姉さんは村長さんの後ろで微笑んで座っていた。
お姉さんをもっとよく見ようと近寄ったら、隣のハンスおじさんに
大人の邪魔をしないようにと言われて外に出されてしまった。
つまんないの

2月12日
みんな倉庫から鋤や斧、草刈鎌などを出していた。
村に入る入り口には、大きな木いっぱい持ってきて
塀のような物を作っていた。
僕も投げれる大きさの石を拾い集めてくるように言われた。
村中のみんながこんな風に集まって仕事をするのは、
お祭りの時くらいだけど、大人はみんな怒ってるみたいで
なんだか怖かった。結局今日は一日中石拾いをしていた。

2月13日
昨日と同じように石集めだけど、もう村の中には無いので
村の外まで集めに行った。
手ごろな石を探している途中、あの綺麗なお姉さんと出くわした。
お姉さんは出かけるみたいだ。
「お手伝いしているの?えらいわね」といって頭をなでてくれた。
もう会えないのかとしょんぼりしていると
「君達の村にもうすぐ異世界の悪魔が攻めて来るの、あいつらをこれ以上
進ませたら私達の世界が悪魔のものになってしまうのよ。」
あくま!お話の中だけにいるのかと思っていた!
「だからみんなで守らないといけないのこの世界を」
「うん、僕も頑張る!」
「良い子」と言ってお姉さんは笑ってくれた。
他の村にもこの事を伝えに行かなくちゃ行けないからと言って
お姉さんは森の方に帰っていった。
森の方にも他の村があるなんて知らなかったな。


エピローグ

2月15日
私の前にもう物言わぬ少年の骸が転がっている。
倒壊した家屋に腰から下を潰されたか、
苦悶に歪み目を見開いたまま息絶えている。
手袋を脱いで少年の目を閉じてやった。
「少尉、こちらでしたか」
「軍曹か…生存者はいたか?」
「若干名ですが…」
「やはり奴か」
知らず知らず軋るような声になっている。
「はい若いエルフの女が5日ほど前に来ていたと」
「エルフの死骸は?」
軍曹は無言で首を振った。

そういう事なのだ。

奴らは自らの拠点につながる街道沿いの村々を焚き付け、
帝國に絶望的な戦いを挑ませる。
そして今までそれらの村から一匹たりとてエルフの死骸は発見されていない。

放っておけば素通りする筈の村を、
世情にうとい農民を、

時間稼ぎの捨て駒にしたのだ。

その癖、自分達は戦場から事前に逃げ出している。
幼子でも使える厄介な魔法具だけ農民に残して…

「必ず…この報いを…裁きをくれてやるぞ、白エルフどもめ!」


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