『実験SS』02


早とちりな女二人


ヴァイスローゼン・ペルトバジリスク

『どうも』
その国の皇后に会って、この言葉も何だが、知り合いのうえ相手が相手なのでこう言うしかなかった
『おお、どうした?こっちまで出ばって来るのは珍しいな、あっちの方は励んでるか?』
『ええ、まぁそれはぼちぼち・・・』
言えるか、んな事
『面会の時間を求めるということは帝國からか?』
一応あてがわれてる屋敷には無線機が置いてある
『いえ、個人的にお願いしたい』
『もっと珍しいな・・・どうした?聞こう』
『近頃の海賊船についてです』
『うん?それはこちら側のどの海域でも多かれ少なかれあるものだろう?ハマに関して言えば多いと言えるが』
『撃滅に個人的に手を貸したいと考えております』
リーネが少し渋い顔をした
『そちらの船と違ってこちらの軍船と商船の差は殆どない、ハマ復興に割く船でそちらに貸したままにできる船は一隻もないぞ。先日の拿捕とて、運よく商船を偽った軍船に、単船で寄って来た馬鹿を返り討ちにしただけだ』
出来ることはしているが、根絶はまだまだ無理だ、わかるだろう?とリーネの目は語っている
『個人でも接舷戦では貴官の身体では邪魔なだけだ、独航船に注意を促す他、何ができる』


『いえ、敵海賊船の拿捕という偶然は、私が出なくても起こり得る偶然と考えております』
『必要なのは情報か。海賊船の屋探しが必要な事が起きているのか?』
『・・・』
沈黙が答えだ
『そうか・・・自国の運輸内容や状況も屋探しされることになる。余り気乗りしないが。これが帝國人が危険にさらされずに、帝國人みずからの手でなんらかの使命を果たさねばならんのに最低限必要な手なのだろう?』
こくりとまた頷く
『ならば我が国にとっても仕方がない、違うか?』
『ありがとうございます』
そうはいいながら微笑むリーネに志摩は礼を述べる
『拿捕が出来たならば一番に使いをやろう。しかし仕事熱心な事だな。役目の通り、適当にあの二人と艶な生活をしてて良かろうものを。つくづく帝國人だな』
『桂とだけであるならばそうしたかも知れません、ハマの近くに屋敷なんか建てずにどこか風光明媚なところでゆったりと・・・ですが、私にはミスミもいます。私が生きてるうちに、こちらの世界の金品も十分に残しておきたい・・・ただ善意で戦災復興を手伝ってるわけではありません』
その方が底が見えて安心できるはずという気遣い、か
『それを言ってしまうあたりも帝國人だよ、特佐は』


『・・・桂さん、痛いです』
『痛いようにしてるもの、当然でしょ』
ハマの街近郊にある志摩達の屋敷で、二人は玄関の扉の前に向かい合って立っていた。桂はお使いから帰って来たメイド服のミスミの足をおもいっきりふんづけている
『旦那様は?』
志摩の姿が部屋を探しても見えない、せっかく蜂蜜団子を買ってきたのに
『あなたが持って来た《お仕事》に行っちゃったわよ、危険なのに』
『どういう事です?』
帰って来たばかりで事情が良くわかってないミスミに地図の事、目星をつけた理由、そして《制服》を着て出て行った事を桂が説明する
『何て事・・・!』
ある意味敵を討つより難しい内部探査に自分が地図なんか持ってきたせいで旦那様、志摩さんが!
『・・・私も行ってきます!すぐ支度を!』
『え?』
『私はまがりなりにも諜報畑の人間でした。必ず・・・守って見せます!』
『そっか・・・そうだわ!あたしも行くわ!もう待つのは・・・イヤっ!!!』
ミスミの動きが一瞬停止する
『失礼ですが・・・戦えるのですか?』
『ナメないでよ、これでも女性の兵役問題を推進させてた手前、武術は一通りやれるわ!』
胸を張る桂

ヒュオッ

ミスミが桂の眼前から消えた


幽弥さんに良くやられた手だ、内懐に入られた。私は結構身長高い方だから視界からいなくなったように見える、けど!
『やぁっ!!』
身体を捻ってミスミの手をかわす、たしか、得物はナイフだったはず、あったら頚動脈からぴゅー、だ。早い早い、あぶなっ
『そぉっ、りゃっ!!!』
ミスミさんの伸びた腕を掴んで足を、払e

思ったよりは勘が良い、このまま綺麗に投げられるよりは!
『甘いです!』
そのまま自分からジャンプして腕を外しつつそのまま吹き飛ぶ、桂の背中を強く押して空中で回転、着地すると桂にむけてミスミは突進する
『うわっとととっ!』
桂はバランスを崩してよろける、避けられないはずだ
『とりましt・・・!!』
腕の間を擦り抜けたところを、がっちり挟まれた
『まったく・・・シャレにならない事するわね』
『・・・やりますね』
そのまま会話をかわす二人
『相討ちってとこかしら、私は得物なしでやったけど』
『手加減したに決まってるじゃないですか』
『あら』
『ええ』

ゴゴゴゴゴゴ

また二人の間にわけのわからない背景音が効果に入ったが、すぐにシュルルルと桂から気が抜けた
『やめた、早く行かないと間に合わないわ』
『そう、ですね』


ハマの街に二人はあわただしく身支度をしてすぐに港へ向かう
『旦那様が乗る船はわかってるんですか?』
『聞いた話だと海賊船は独航船を狙うそうだから、それよ!もしかしたら志摩は運航協会でまだ調べたりしてるかも!』
『・・・そうですね!』
志摩は制服で行った、あれはある意味死に装束でもあると前に聞いた。そういう覚悟なら乗り込んで指揮を取ったり、最前線に身を置くつもりに違いない。桂とミスミ二人頷きあう

『『急ぎましょう!!!』』



その頃
『ただいま〜』
がらんとした屋敷、おかしい、いつも桂かミスミどちらか一人が居るはずなのに 『桂〜、ミスミさ〜ん』
全く返事が無い、勢い焦りが出てくる
『何かあったのか・・・!?』
屋敷の部屋を巡ると寝室のソファーに出しっぱなしの服が置いてあった、普段着ばかりが無くなっている、服を選んで連れていかれるということはあるまい・・・少し安心した。しかしなにか旅にでも行くような選び方だな・・・まさか!?

『あの・・・馬鹿!!』
誰が片腕で海賊どもと最初っから斬り結んだりするものか!
『港へ、急がなければ!』


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