『小ネタ』3
海軍の新型戦車(特四式内火艇)の実験に付き会わされた全ての陸軍の将校、特に歩兵科の人間は眉をひそめざるを得なかった
『本艇は敵前上陸を目的としたものです、陸軍の戦術を元に、今回、少々弾をアレンジさせていただきました』
士官が説明する先に内火艇が二隻あるが、一隻は所々に弾痕と燃えたようなあとがある
『先程の弾は?』
『海軍では対空砲弾としてああいったものが配備されております、それの応用をしたものです。それを魚雷の代わりに、車体の横に取り付けました』
発射方式は噴進、車体前方すぐで爆発し、弾子を撒き散らす
『むしろ、車体の方がもつか、ヒヤヒヤしましたが』
痛烈な皮肉だ、陸軍の戦車が紙と言われたようなモノだ、それに・・・
『ご覧のとおり、内火艇に取り付いた兵は弾子と黄燐に焼かれるが、本艇はとりあえず無事です。本艇は着上陸する陸戦隊の支援が主目的でありますが・・・当然ながら、陸軍さんでは無いので数が少ない、取り付かれる可能性は高い。つまりは撃破される可能性が高いという事です』
『そんな事は海軍さんに言われんでもわかっとる!!』
ああ、そうでした、そうでしたね、と白々しく言う海軍士官。
昨今の編成換えで、陸軍も大陸での一区域全体で戦車の配備数が基本で10台(稼働率を考えればそれ以下)などざらの場合が多い。歩兵支援も考えれば、速度を出せぬまま、取り付かれる可能性は低く無い・・・第一、肉攻は陸軍の十八番だ、それを・・・
『最悪の場合、引き付けて一網打尽もありでしょうね、もう一つ。別タイプとして九六式の25o三連装機銃を搭載したものもそろそろ出来上がるはずです。ははは・・・まさに取り付く島もなくなりますなぁ』
これでは、突撃などやってられぬ事態になる
『海軍は我が陸軍を仮想敵にして、陸戦兵器を開発しておるのですか?』
『いいえ、存在する最強の相手に合わせるのが兵器開発というものです・・・なにか?これらが陸軍にとって脅威と?これでも米軍の火力保持から見れば寡少な増大に過ぎないのです』
お前ら何ぞ相手にもならん
『あれだけ軍艦を持っておる癖に』
『止せ、我々にとっても有益だ、抑えろ』
ま、バカだけじゃ軍は回らんか
『では、その対人噴進弾の弾、他、量産されている機銃の類いを分けられt』
『お願いします、は?』
『・・・は?』
『こちらの技術、物品を見返りなしに譲ろうといっておるのです、我々は』
『しかるべき対処があって良いはずですが?』
海軍予算が海域、海運量が増えるにあたって増額されている、陸軍のそれを大幅に食って。加えて浮いているだけで軍艦には華がある、進攻拡大しなくとも仕事がある、しかも船員という地方人の目の前で、だ。志願の数も圧倒的に海軍が増加している。機銃の増産も、既存艦の対空火力・海防艦増強で主導権を握られたまま、地上をはい回る陸軍が空に向けられる火力はお寒いかぎりだ
『言わせておけば・・・』
『まて、頭一つで陸軍全体の火力が上がるなら安いものだ』
まわりの陸軍士官を抑え、代表が頭を下げる
『・・・お願いします、海軍さんの力が欲しい』
『ははははは、結構、大いに結構、では・・・』
のちにこれの仕返しとして暗号解読の件で同じ目にあわせられるのだが、それは別のお話。それによってレーヴァテイルの歌による暗号。通称N暗号が出来るのだが、それもまた別のお話