『ある博物学者の異世界探検記』


転移で資源獲得の手段を殆ど失ってしまった我等が帝國。
二進も三進もいかず、殆ど死に掛けた帝國は、この世界を良く知るダークエルフ達の助けを得る。
帝國はダークエルフ達に重要資源の調査を依頼。
だがしかし、原油や硝石、鉄鉱石等ならともかく、ボーキサイトやニッケル等のいわゆる稀少金属の事は知らないらしく、帝國は国内の博物学者に協力を要請…ではなくて強制。
そして私の波乱万丈の旅が始まる。

私の名は北方熊雄。
この度の忌々しい転移で地獄巡り(別府の温泉ではない)のような旅を続けさせられている帝國の若き博物学者である。


皇紀2605年4月

現在、私は帝國から遠く離れた「辺境」の砂浜に立っている。
場所としてはガルム大陸最南端らしい。
気温と湿度が高く、熱帯雨林のような森が生い茂っている。

ダークエルフによるとここら一体には人が住んでいないらしい。
今まで度々あった胸が悪くなるような現地人との揉め事が無いのは結構だが、とにかく暑い!暑すぎる!
もう2年も帰っていない日本が恋しい。
早く帰りたい。いますぐに。

「先生、そんな情けない事ブツブツ言ってないで早く準備しましょうよ。」
隣にいるダークエルフの少年(名前をシグル、年齢17歳、私の助手)が、ため息を吐きながら話しかけてきた。
…いかん…口に出していたようだ。
「…分かっている。」

不機嫌に答えるとボートから荷物を下ろしているダークエルフ達を見る。
文句の一つも言わずに黙々と重い荷物を運んでいる彼らを見ると、そんな泣き言は言ってられない。
それにしても自分の体の頑丈さが憎い。
2年前強制徴収された10人の同僚は皆体(と頭)を壊して本土に帰還。


まあ無理も無いが。
オークだのゴブリンだの訳の分からない生き物に攻撃される事も度々。
未開人達に襲われる事も日常茶飯事だった。
こんな生活耐えられるわけがない。
始まって3ヶ月で帰還した奴もいるというのに、私は今まで風邪一つひいていない。
人並みはずれて丈夫に産まれた我が身を呪いながら、一人調査を続けている。

「せんせ〜い!」
はっ!…いかん!ついボーっとしてしまった。
調査隊の隊員は皆荷物を担いでいる出発しようとしている。
私は調査隊のリーダーであるラナ女史(美女である)に謝ると隊の中央に入った。

「それでは出発します。」
ラナ女史の掛け声と共に歩き出す調査隊。
…やはり凛とした女性はいい。
初めは女の下で働けるか!などと思ったが…、うむ。これはこれで…。

「…先生。口がにやけてますよ。」
「うっ!」
最近きついなシグル君。
始めてあった時の、ガチガチに緊張していた君は何処に行ってしまったのか…。
初めはあんなに可愛かったのに…。

…ちなみにラナ女史はシグル君の姉である。

さあて、今日も一日頑張るか!


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