『獣人vs汽車』
「これが『汽車』か!」
「大きくて迫力あるな!」
大正生まれの武士道機関車、9600型蒸気機関車に出会った獣人の言葉である。
バレンバン地方、帝國大陸鉄道
分解して輸送されて来た蒸気機関車の再組立が終わり、火を入れての試運転後、
獣人達に見学の許可が与えられた。これはいかに獣人達を信用しているかをあら
わしているが、本人達はそんな事は関係無しに初めて見た実物の蒸気機関車を隅
々まで見ている。
「ボイラーに・・・筒の部分に触らないで!火傷するから!」
「上に登ろうとしないで!」
帝國大陸鉄道の職員は苦労の連続だが。
皆が一通り見終わり、職員が速度試験に入ろうか、とした時、一人の獣人が、
「こいつと力比べをしたい!」
と言い出した。若い職員は軽く止めようとしたが、周りの獣人が同調し、盛り上
がってしまったため、後日力比べを行う事となった。
力比べ当日
「用意、・・・はじめ!」
「エイヤッ、ソイヤッ!」
力比べは安全上、綱引きで行われる事となり、クレーンで使われる丈夫な綱が用
意された。機関手もベテランが用意された。
獣人達の力の限界をこの目で見る良い機会と、陸軍は参謀まで見にやって来た。
また、その情報を得た海軍からも人が送られて来た。
最初は言い出した本人が一人で挑戦したが、さすがに無謀で、あっけなく勝負が
ついた。その後、人数を増やし、平衡状態になるまで続けられた。
この『試験』で、獣人達は蒸気機関車の頼もしさを知ったが、後に行われた牽引
力試験と比較することにより、帝國は獣人の力を数値で、平均値ではあるが、知
ることが出来た。
獣人の驚異的な力をじかに見た帝國大陸鉄道は、災害や事故の現場に彼らを蒸気
機関車に牽かせた客車で『救援隊』として送るようになる。その有効性が認めら
れた救援隊は、帝國本土にも内務省の消防の傘下として導入され、消防隊ととも
に救助活動で活躍する事となる。