『旧満鉄技術者の日誌』4


3月1日(日)
獣人たちを本格的に線路敷設工事に活用するために、鉄道についての講義を行った。 何しろ彼らは一度も鉄道というものを見たことが無いからだ。
まずは映画を見てもらったが、反応は結構良く、やる気がかなり出てきたみたいだ。 一部の者は、興奮しすぎて「獣化」してしまったが。
そのあと工事に必要な知識を教えたが、先に見せた映画の効果があり、熱心に聞いていた。
しかし、読み書きを満足に出来ない者が多いので、書き取ってはいなかったが。

3月2日(月)
朝、上から話があり、陸軍の鉄道聯隊との協同工事について説明された。
鉄道聯隊は本線部分を、満鉄はその他の部分を行うらしい。
また、工事を迅速に進めるため、彼らの方法や機材を一部導入するらしい。
組み立て済み線路工法などは、力のある獣人なら問題なく使えるかもしれない。
鉄道聯隊の牽引車や貨車も使えるようになるので、こちらの手間も少し省けそうだ。

3月4日(水)
獣人たちによる工事が始まった。
彼らの中でも力のあるものは1人で多くの木材を担いでいくものもいた。
…だけど振り向く時に他人の頭にぶつけないでください。
地平での工事なのに、きちんとヘルメット着用する人が増えそうだ。

3月5日(木)
調査報告と今後必要になるだろう物資の請求に、本土に戻ることになった。
今度来る時には、かなり工事が進んでいるだろう。
工事で頑張っている彼らに、土産を持って帰ることも約束した。
土産と言えば、本土の人達にも買って帰らないとなあ。

3月9日(月)
大陸とは一時のお別れだ。
帰りは行きと違って、一度小笠原の方に向かってから本州に向かうらしい。
何で国民に偽装して帰らなきゃいかんのだ。

3月18日(水)
ようやく着いた…神州大陸に。暑い。疲れた。
1日停泊してから荷物を積んで、それから本土に到着するらしい。
中にいるのも暇なので、少し、街を散歩してみようかと思う。

3月21日(土)
やっと、本土に帰ってこれた。
行きは14日かかったが、帰りも16日かかった。…往復で1月もかかったのか!
いくら大回りとは言え、直行すれば3分の2か半分くらいで済むのじゃないか?
早く公表して直行の船を出してくれ…。
家族に土産を渡したが、どこに行ったかを説明できないので、後々教える事にした。
少なくとも満州ではないことには気づいたみたいだが。

3月23日(月)
久しぶりに職場を訪れたら、名前が帝國大陸鉄道に変わっていた。
人の数も休業前の状態ぐらいまで戻っていた。
ひとまず現地の地図などの資料を渡した後、状況を聞いてみた。
工事は急ピッチで進んでいるらしく、5月には運行が開始できるそうだ。
4月頭に荷物と共に再び向こうに行くことになるそうだが、初の路線開業という事で、 式典にはお偉いさんも多く訪れるらしい。
が、自分は技術者なので、対応は別の人間がしてくれるということだ。

3月28日(土)
下町のほうに出かけて、お土産を買ってきた。
人数がいるので、あまり高い物は買えないが、日本らしいものを何種類か揃えた。
実家まで持って帰るのが大変なので、職場に置いてきた。
必要な物も全て、来週の出発までには用意出来そうだ。


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