『旧満鉄技術者の日誌』3


2月2日(月)
あれだけ多くの船があったが、半分以上は東京湾の沖辺りで南に進路を取って別れていった。
本州に沿って北に進んでいるが、一体どこに向かうのか気になった。
「帝國大陸鉄道」というのだから、大陸に行くのだろうが、このままでは中国の可能性は低いように思う。
ロシアやその周辺か?もしかしてアラスカに向かうのか?

2月3日(火) 現在、津軽海峡に入り、函館に寄港している。
ここからまた船が増えるそうだ。建設予定だった路線の資材を積んだりしているらしい。
次は小樽辺りらしい。やはりロシアに行くのかな?もしそうなら防寒具が少し頼りないかも。

2月5日(木)
日本海に出てから合流した軍艦と共に現在小樽に停泊している。
ここで一気に船の数が増えるらしい。つまり、いよいよ外国に行くということだ。
この辺りからだと目的地はウラジオストックだろうか?
しかし、海軍さんのタンカーの数がやけに多い。一体どこまで行くと言うのだろう?

2月7日(土)
今日、今回の一連の事件の説明を聞いた。
にわかには信じがたいが、今までの事を考えれば納得がいく。
このことが事実なら、「帝國大陸鉄道」が出来たのもよくわかる。
しかし一部を除いて、説明を受けた者は意外と動じなかった。
皆、何かが起きている、と感じていたようだ。
騒いでいた者も、「陛下」という言葉を聞いた途端黙った。
こんなのでやっていけるのだろうか。

2月8日(日)
外の様子を見に甲板に出たが、空気が暖かくなっていた。
先日まで晴れていても着込まなければ出れなかったのに、今は曇っているのにそこまで必要ない。
何故かはわからない。
しかし、今の世界は不思議なことが多いらしい。
慣れろ、と言われたが、そう簡単に慣れるか?

2月9日(月)
今、諸島に停泊している。水の補給などをしているが、一部の荷物を降ろしたりもしている。
あと、興味深い情報が伝えられた。
今回は、「シュヴェリン王国」という所に行って、石油輸送の為の線路をひく予定らしいが、
そこの先代の王は日本人?という情報があるらしい。
その王は既に亡くなっているが、その血をひいている孫娘がそこにいるらしい。
また、稲作も行っているらしいので、米が向こうでも食べれるらしい。
これはすこしありがたい。向こうに着くのが楽しみだ。

2月10日(火)
あと数日で向こうに到着するようだが、良い情報が入ってきた。
向こうでの石炭の供給のメドが立ったそうだ。
河川の近くにそこそこの大きさの炭田があって、そこから船で運ぶそうだ。
ひとまずはそこの石炭を使い、そのうちより大きな、またはより上質な炭田からも石炭を運ぶそうだ。

2月12日(木)
いよいよ明日の午前中(時差はどうなんだ?)に到着らしいが、呆れる話がやってきた。
帝國大陸鉄道も狭軌でやっていくことが既に決まっているらしい。
そのため、機関車や貨車なども国内にあったのを積んできているらしい。
ここまで来たらひとまずそうするしかないが、いつか幅を広げてやるぞ!

2月13日(金)
今日の朝、到着前に、大陸で心がけることとしていくつか話があった。
一番驚いたのは、魔法が存在するということだ。まるでおとぎ話の世界じゃないか!
また、会話は通じるらしい。それも魔法が関係しているそうだ。これはありがたい。
午前中に到着したが、港の設備があまり整っていないので、ひとまず人だけ小型の動力船に乗って上陸した。
偉い人たちを優先的に船から降ろしたので、私が降りるまでには少し時間がかかった。
多くの見物人が様子を見に来ていたが、作業に支障は無かった。
夜は暖かいご飯を食べたが、こっちの米は日本の米と微妙に味が異なる気がする。

2月14日(土)
今日は街を見物してみた。
町並みは古いが(ここでは新しい方かもしれないが)、落ち着いていてきれいだ。
前から来ていた軍人さんに話を聞くと、1ヶ月ほど前に戦いがあったが、この辺りはあまり破壊されなかったそうだ。
稲が育つ地域ということもあり、建物の風通しは良さそうだ。
後で荷を降ろす作業を見ようと港に行ったが、街から少し離れたところで作業をしていた。
今の港の近くは水深が浅いので、大型船を接舷できないそうだ。
そこで港を拡張してそこに大型船を泊めるようにするらしい。

2月15日(日)
明日、鉄道建設の現場の方に船で移動する。
この港や王都より南部の海岸から線路をひいた方が近いらしい。
軍が持ってきた航空写真を元にした地図で線路をどのように敷くかを話し合っていた。
私も暇だったので、少し覗かせてもらった。
…一面砂だらけだけど、ひけるのか?

2月16日(月)
農業指導の担当者、今日の朝一番に出かけていった。
できれば田植えの時期までにいろいろと済ませておきたいらしい。
私は他の鉄道建設関係者と船に乗って、やや小さめの輸送船とともに南部に向かった。
午後に着いたが、港は工事の真っ最中、というか建設中で、泊まる宿舎も前のに比べ、かなり貧相だ。
荷揚げにはかなりの時間がかかりそうだ。

2月17日(火)
現地調査組は今日の朝、出かけていった。
私は午後に港に行き、荷物が書かれた書類を見せてもらい、車両の確認をした。
ざっと見たところ、9600型(蒸気機関車)が4両と客車が4両、様々なタンク貨車が合計50両以上あった。
これは試験運転用も兼ねた第1陣らしい。

2月18日(水)
今日、線路敷設の為の現地調査組に、資料の回収と、補給物資を届けに行った。
動くものがほとんどないので、あっという間に現地調査組を見つけ、彼らに追いつくことができた。
合流して話を聞いたが、もともとの距離が短いので、迂回分を含めても路線の総延長は25〜30kmぐらいですむようだ。
だいたい東京から横浜程度の距離だ。
どれくらいで完成できるだろうか?

2月20日(金)
港に行くと、工事はまだまだ途中だった。
荷揚げ用のクレーンを置いたり、タンカーに石油を積みおろしする設備を作ったりするらしい。
鉄道もひくので、その分の用地がしっかりと取られていた。

2月22日(日)
明日の昼、起工式を行うと伝えられた。
調査がすべて終わってから工事を始める予定だったらしいが、1日でも早く完成させるために、調査の終わった所からどんどん始めていくらしい。
地盤はそこまで軟らかいようでもないようだし、途中に急な勾配もあまり無さそうだから大丈夫かもしれないけど不安だ。

2月23日(月)
昼、起工式に参加した。
油田近くの調査はあまり進んでいないが、どうせ港から油田に向かって工事を始めるので、ほとんど影響しないだろうということで、
今日の港近くでの起工式となったそうだ。
王国側からも偉い人が参加していて、彼らなりの正装をしていたが、本当に中世みたいだなあ。

2月24日(火)
機関区の予定地も決まり、建物の基礎工事の準備が始まった。
資材は王都近くの港に泊めてある大型船から積み替えたのを少しずつ運んできている。
今日は砕石が運ばれてきた。線路には大事なのものだ。

2月25日(水)
朝、臨時の集まりがあり、明後日の船で「獣人」が工事に参加すると伝えられた。
獣人とは、文字通り獣に化けることができる人で、重機並みの力持ちらしい。
帝國とは友好な関係になので、頼もしい仲間になりそうだ。

2月27日(金)
今日、獣人が100人程到着した。話通り、見た目も性格も普通の人間で、とても獣に化けれるとは思えない。
しかし工事の様子を見ていると、確かにはやい。砕石を軽々と運ぶし、レールも少人数で運んでいる。
これなら早期の完成が見込めそうだ。

2月28日(土)
分解して運ばれた車両の組み立てを始め出した。
貨車を組み立てて、資材を運ぶのに利用しようというわけだ。
重い部品などは獣人たちにも手伝ってもらった。
タンク機関車もあるので、そちらも早く組み上げておきたい。


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