『焦土戦』


荒漠と広がる自ら創り出した焦土に、「竜」は座していた。

だが、この風景が不毛のままなのはほんの僅かな間だ。
木々と共に雑草が、病害虫が焼き払われた大地には直ぐに雑穀が播き付けられ、
甘藷が植え付けられて焼畑となる予定だ。
常畑とするには継続的な投入が不可欠な有機肥料も供給の目途がついたので、輪作を一巡しても耕作を放棄したり、
そして気長に植生の回復と再度の火入れを待ったりせずに済むだろう。

誕生時に想定されていた寒帯の針葉樹林ではなく、異界の熱帯雨林をその角と体当たりとで突き倒し、
ブレスで焼き払った「竜」、不足する土木重機の代用として帝國陸軍が神州大陸に持ち込んだ伐開機には、
次なる任務が控えていた。

本土で応急的に装備した火炎放射器に加え、野戦自動車廠での現地改造により車載した火器、
即ち員数外の軽機に重擲弾筒、そして鉄板に限らず車体に固縛した木材や土嚢を含む装甲を活かした、
工兵の運用する代用戦車としての任務。

安住していた密林を破壊され、絶望的な抵抗を試みる森オークの掃討である。
熱による養分の可溶化に加え、彼らの流す血を肥料として、この土地はより一層肥沃になるだろう。


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