『新しき飛竜』


大協約軍における機械竜。
それは翼下と胴体内の多連装発射管とに抱え込んだ多数の空対空魔法の槍を遠距離から乱射して帝國の戦闘機隊を突き崩し、
ワイバーン・ロードを斬り込ませる空の砲兵。

しかし鉄竜に続いて鹵獲されたそれを試験する平成日本の目には、木金交造のモーターグライダーに過ぎない。
樹脂で練り固めた成型黒色火薬の装填と燃焼、その合間の水エタノール噴射による冷却を魔性金属製の燃焼室で半自動的に繰り返す、
パルス・ロケットとでも称すべき動力は北東ガルム域ドワーフ産の傑作とはいえ戦闘時のみの使い捨てで、
専用に調整された飛竜数騎立てによる牽引が離陸と長距離巡航には必須だ。

そして今、中々格好良い機体じゃないか、との呟きを言質に取られた空自パイロットが操縦席ならぬ操縦槽に放り込まれ、
自らの生命反応を低減させて魔法の槍の精度を向上させる為の氷水
−塩味は寒剤として氷に混和された食塩、鉄錆の味と臭いは防弾を兼ねて鉄製のタンクからなのだろうが、何故か黄色い−に
シュノーケルを咥えて潜らされていた。
大協約軍の実例に倣い冷却効率向上のため無論、そしてまたしてもフンドシ一丁なのは言うまでもない。


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