『機械仕掛けの神々』


異界に由来する機械技術の産物、帝國の遺産。
これに対する世論は毀誉褒貶が激しく、好悪の両極は宗教的な領域にまで達している。 否定の一極は無論エルフだが、先人の経験を求める平成日本はダークエルフを仲介して肯定の一極、
「帝國の遺産」を崇め、辺境へ潜んでその伝承に努めてきた秘密結社との接触に成功した。

「関連文献はまだしも、帝國の機械それ自体の維持管理は我々の貧弱な頭と手に余るものでした」
仮面を着け、大柄な身を白いローブに包んだ「博士」−この教団における高位聖職者の一階級−は手袋をはめた手で、
白線を残し獣皮紙を絵筆で塗り潰した「青写真の筆写本」を取り上げつつ、甲高くも篭った声で囁いた。
「魔道まで用いて『造り出した』、この体にも」
微かに響いていた鋼の軋むような音が途絶えると共に、博士の動きはそこで突如として凍り付いた。

当然ながら人間用に設計された帝國製機械を、彼らが無理矢理に扱うための「汎用人型増力重作業機」、
つまり「博士」と見えていたカラクリ人形。
その操縦を感極まって放棄した毛玉、
即ちモグワイ族の一団がわらわらとローブの中から現れて日本側調査団員に飛びついたからである。


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