『防人の本分』


いまや日本の最高意思決定機関たる「会合」、G対策を扱うその一分会はさながら魔宴と化していた。
内なる狂気を望んで喚起し、かつ統制するという行程からは、さながらどころか現代魔術的には悪魔召喚そのものと言えよう。

「要するに」
疲労を、隈と皮脂と無精髭を顔に浮かばせた座長が、その惨状の収拾を試みた。
「原子力ターボプロップでリフトファンと可変ノズルを駆動、
プラス円盤翼でVSTOL機動、核の大出力によるペイロードで護衛艦並みの砲力と戦車並みの装甲を備えたガンシップ。
発展的には超電導発電機で指向性エネルギー兵器運用も狙う、と」
気色悪く喜色満面たる技術者を座長は労らった。
「何そのスーパーXのようなもの。メディーック!技官が壊れた。メディーック!!」

まあある意味、如何なる防衛対象国よりも我々自衛隊が真に戦力を発揮すべき相手ではあるが。
屈強な隊員に引きずられる技官の食糧事情を無視した肥満体と、
大協約諸国が呼ぶところの「竜王」、帝國の消滅へと調律されたこの世界の諸力が具象化した存在、
会合内の通称「ゴジラ」の無駄に精巧な模型を視野から追い出しつつ、座長は溜息と休会の宣言を吐き出した。


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