『夕闇時の日蝕』


血肉と、機巧から成る飛竜。
互いに人間が操る両者の闘争は、後者の噴く火閃が前者をその騎乗者ごと挽き砕いて終結した。
火閃はシャーク−ドラゴン?−マウスの描かれた機首に集中された12.7ミリ機銃計4門の斉射であり、
それを放ったのは試製6式簡易襲撃機、
滅んだばかりかその亡骸とすら今や世界を別とした友邦独逸の遺産を元に、
木と鋼から造られた体へカ−20パルスジェットの心臓を備え、松根油の血を注いだ急造戦闘爆撃機であった。
この控え目に表現しても荒削りな飛行機を陸海軍が共用している一点からも、帝國の危機が伺えよう。

昭和20年8月15日、正午。
ラジオから下った詔勅は大東亜戦争の終結を、帝國の異世界への転移を告げた。
皇室伯家神道と東密台密、古怪な呪術の秘儀により喚起された「神風」と、
マンハッタン計画、最新の科学の精髄により創造された原子爆弾。
解き放たれた二つの巨大で純粋な否定の力の相克の果て、
機雷封鎖で飢え渇き、戦略爆撃で焼け爛れた身をこの異界へと堕とし込められた瀕死の巨龍、帝國と、
飛竜を駆って蒼空を翔け、陽光にブレスと甲冑とを煌かす騎士団、在来諸国との生存闘争の開始であった


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