『帝國考ないしはある魔道士の狂乱』


尊き神慮によってこの世界に満ちるマナは、全ての命へその天分に応じた魔力の恵みを遍くもたらしているが、
異界からの闖入者たるかの帝國の者どもはその例外である。

否、例外とされている。

我々と帝國人の間でも発声とマナを媒介とした意思疎通が成立する以上、
(エルフではなく)人間に代表される帝國の生命にもマナへの適性は存在すると考えられる。
それにも関わらず、帝國人に魔力が認められないのもまた事実である。

そう、中小の文明圏にも匹敵するであろう頭数の民草−帝國が遠征に送り出した大軍勢を見よ−
そして彼らを養うに足る広大な国土の生きとし生けるもの全てから、
マナの実在そのものが忘れ去られる程にまで魔力を奪い、一手に握った者どもが隠れ潜ているに違いないのだ。

換言すれば、魔道にはそれだけの可能性が存在するという事でもある。
魔力を奪われた帝國の愚民が代償として産み出した、小手先の技に過ぎない機械技術に惑わされてはならない。
魔道のさらなる研鑚こそ「帝國の真なる支配者たち」に我々が抗する唯一の手段なのだ。

「魔道士協会からの請願か、何と書いてある?」 「要約しますと、もっと予算寄越せ、と」


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