『ある帝國大陸鉄道職員の日記』


昭和1X年某月某日
適する作業こそ大きく違えど、モグワイ氏族の使役に際しては概ね獣人に準じた対応で差し支えないが、
彼らから聴取、及び帝國対蘇事務局−蘇格蘭、スコットランド。今や別世界のソ聯邦に非ず−へ上司の伝手で照会したところ、
外観から小型の獣人とする俗説は全くの誤りとの事。
ここに彼ら独自の特徴を書き留めておこうと思う。

イ、強い陽光を嫌う。
従来用いられていた木製遮光眼鏡はレンズ代わりに細長い穴を切り欠いたものであり、
供給した日除眼鏡(サングラス)は極めて好評である。

ロ、代謝水準を調節可能である。
夜半過ぎの摂食と、繭型をした一種の寝袋での睡眠、自己暗示とにより昼夜の長短を己が体に錯覚させ、
鈍重な冬眠から軽捷な活動までの状態を自在に選び得、しかも何ら害とならないようである。

ハ、水中で出産する。
毛皮は防寒防暑に優れ、互いに櫛で入念に梳きあって清潔に保つが、汗腺は乏しく入浴は頻繁でない。
しかし妊婦が湯中で出産する風習がある。

…まだ注意すべき点は多いが明日も早い、今日はもう休もう。
戸締りはしたが、どうせ目覚めた時にはまた布団の中一杯に連中が潜り込んでいるのだ。


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