『彼等はやってきた』 神州大陸の一角に漂着海岸という場所がある。 島を囲む潮流と大海を流れる大潮が組み合わさり、何故か色んなモノが流れ着いてくるらしい。 流木を始めとして、大きい場合だと沈まなかった難破船なんかも漂着したりする。 しかも、結構な確率で漂流者が乗っている場合が多い。 一昔前ならば、オークに嬲り殺しにされてしまっただろう。 だが、今は日本帝國の領土である。 神州大陸の街に漂着した冒険家が保護を求めてやって来て以来、此処に監視所と灯台が設置される事となった。 のだが……。 設置以来、意味不明な事が立て続けに起きる事となる。 「監視所より入電、数十人の異国人が沿岸を歩いているとの事です」 「ふむ、そうか。なら通常通りに対処せよと伝えろ」 暫く後、驚くべき報告が入った。 「そ、それが……イギリス人です」 「…………本当か?」 「はい、145人の英国軍兵士でマナの作用か英語を知らなくても会話出来たそうです」 「何処から来たと言っている?」 「彼等の言うには所属はノーフォーク大隊。ガリポリ半島の六十号丘陵を制圧するため戦場を前進していたら雲に撒かれて気が付いたら漂着海岸に居たとの事です」 「うーむ」 奇妙な事態はまだまだ続く。 10人ほどの欧州人の船員と家族が乗った救命艇が漂着した。彼等は「マリー・セレスト号」の乗員だと名乗った。 五機の雷撃機が漂着海岸沖合に不時着し、パイロットが救出された。米国人で、助けたのが日本軍なのに目を白黒させてた。 彼等は口々に質問に当たった将校に尋ねたと言う。「何故、日本軍が存在する? 日本は俺達に負けたんじゃないのか?」 その後も、古い帆船やら軍艦(ガレオンだった)やら異邦人の集団やらが定期的に現れ、担当の指揮官を悩ませた。 収容を続けるにつれ、街が1つ出来てしまった位である。 しかも、様式が区画事に異なっており、まるで欧州の街の歴史を圧縮させたようだと歴史学者が語った程だ。 頭上を見上げ、監視哨の兵士達は狼狽えた。 空に数百機程の円盤状の飛行物体が、突然現れたからである。 やがて、一際大きな円盤がゆるゆると高度を下げると、下に開いた円状の筒からピカーと光が漏れ始めた。 その光の中から、数人分の人影がゆっくりと降り立ち、砂浜に足をつけた。 彼等は、特異だった。 身長150mm程で肌は灰色、銀色の身体にフィットしたスーツを着込みアーモンド状の黒い瞳をパチパチ動かしている。 しかし、一番驚愕すべきなのは…………彼等の先頭で胸を張って立っている銀色スーツ姿の日本人だろう。 百人近い日本兵を率いて彼等を包囲している監視哨の責任者の少佐は目を見張った。 彼に見覚えがあったからだ。そう、悪い意味で。 狼狽えている内に男は数歩前に歩き、陸軍礼式令の『敬礼』をした。 「ショウカンハツジマサノブリクグンタイサデアル。●■▲(何かの星雲名らしいが発音が特異過ぎて聞き取れず)トウゴウセイウンタイノシンゼンタイシトシテヒノモトニキカンシタ。シキュウ、テイトヘノトリツギヲキボウシタイ」 「し、少佐殿。どうしたら……」 「もう知らん! 俺は寝るっ!!」 「あ、少佐殿、いきなり寝っ転がるなんて卑怯ですよ、少佐――――――!!」 「ナニヲウロタエテオルカキサマラ、ソレデモニホンダンジカ!」 結果、大日本帝国はこの星の盟主(自称)となり、●■▲統合星雲体との友好条約を結んだという。 後に、彼等の証言(親善大使が通訳)によって判明したところによると、この付近では次元の綻びが出来ていて、時折この様な『客人』をこの世界に引き出してしまうらしい。不可思議というものは、意外な所に口を開けているその好例かもしれないだろう。 尚、何故にあの男が●■▲統合星雲体の親善大使になったのか? それはまた、別のお話で。 完