『じゅうじんのむかしばなしそのに』 とあるたいりくのせいほうにおおきなもものきがありました。 そのちにすまうせんにんたちにあいされ、せんかいのきとたたえられていたすばらしいきです。 たわわなももをすずなりにはやし、たかいきはせんにんやせんにょのいこいのばでした。 しかし、いごこちがよすぎたせいか、もものきにいつき、しゅぎょうをさぼるせんにんやせんにょがふえはじめました。 おこったちょうろうはいいました。 「そんなにいごこちがいいならきからはなれなければよい!」 うんのわるいひとりのせんにんが、きからはなれなくなりました。 かわいそうに、ずっとそのままきにふれながらせいかつをしなければなりません。 せんにんがないてちょうろうにゆるしをこうと、ちょうろうはいいました。 「だれかにももをてわたすとよい。そうすればそのものがおまえのかわりになろう」 せんにんはいいつけどおり、くるひもくるひも、ももをてにしてまちました。 せんにんたちやせんにょたちは、じじょうをしっているのでちかづいてきません。 だれもが、かわりになるのをいやがっていたのでした。 「うう、なんでわしがこんなめに。みんなだってももをたべすずんでいたくせに」 すうひゃくねんがたったあるひ、せいほうからいっとうのりゅうにまたがったおとこがやってきました。 「りゅうでとおのりしてきてのどがかわいた。ごろうじん、しょうかんにももをわけていただけないか?」 せんにんはせんざいいちぐうのちゃんすにいろめきました。 ちょうどいい、じじょうをしらないこのおとこにももをわたしてしまえ。 そしてまんまとももをおとこにてわたしてしまったのです。 あわれ、りゅうからおりてももをうけとったおとこはももをたべれたかわりにきからはなれられなくなりました。 「すまんのぅ。なに、ももをだれかにわたせばおぬしもじゆうになる。あんしんせい」 それだけいいのこすと、すうひゃくねんぶりのじゆうをたんのうすべくくもをだしてさっていったのです。 それからすうじつがたちました。 じゆうになったせんにんがくもにのってちじょうをのぞいていると 「なんてことじゃ、あのおとこがあるいておる!」 なんと、せんにんがだましてももをてわたしたおとこがじゅうじんたちをひきつれてあるいているではありませんか。 じぶんがだましたこともわすれ、せんにんはおとこのまえにおりたちしつもんしました。 「おぬし、あれからだれにももをてわたした? わしですらずいぶんかかったのに」 おとこはじぶんをだましたろうじんのしつもんにむっとしましたが、それでもへんじをしました。 「ああ、ひじょうにかんたんなことだ。ももをてにしてだれかをまつなどしょうかんのしょうぶんにあわん」 そして、おとこがせんにんたちのやまのうえのほうをゆびさしました。 なんと、そこにあったはずのもものきがありません。 「きがないぞ。おぬし、もものきをどうしたんじゃ!?」 おとこはせんにんのといににやりとわらってこたえました。 「かんたんなことだ。きからはなれられないならきをくってからだにとりこんでしまえばいい!」 おとこのことばをきいたろうじんはあわをふいてたおれてしまいました。 そして、そののちせんにんのやまでももがてにはいることは、みらいえいごうになくなってしまったそうです。 おしまい。