『じゅうじんのむかしばなし』 むかしむかし、あるところにわるいかみさまがいました。 かみさまはものすごいまほうをあやつり、じぶんがすんでいるじゃんぐるをしはいしていました。 かみさまはいいました。 「わしをたたえ、いけにえをだせ」と。 さからったひとびとはみんなころされてしまいました。 のこされたひとびとはかみさまを"じゃしん"とよび、おそれおののきながらしたがっていたのです。 そんなせいかつがすうひゃくねんつづきました。 まいとしのようにいけにえをささげ、ひとびとはなきながらまいにちをすごしていました。 そのとき、はるかとうほうからゆうしゃさまがあらわれたのです。 ゆうしゃさまは、じゅうすうにんのどうぞくとおおきなどらごんをつれていました。 このちにはむかしからいいつたえがあります。 「そのもの、りゅうをともないてみどりのはやしにおりたつべし」 ひとびとは、そのひとがゆうしゃさまだとしんじたかったのですがしんじきれませんでした。 なぜなら、そのゆうしゃさまは、かくべつからだがおおきいわけでもまほうをつかえるわけでもなかったからです。 それでも、ひとびとはゆうしゃさまにすがりました。 「わるいかみさまがいるのです。どうかたすけてください」と。 ちょうろうさまからはなしをきいたゆうしゃさまはしばらくかんがえたあといいました。 「いいだろう、つぎのいけにえをだすときに、しょうかんをいけにえとしておくりとどけるのだ」 ひとびとはとまどいましたが、けっきょく、ゆうしゃさまのいうとおりにしたのです。 みこしにのせられたゆうしゃさまは、じゃしんのまえにおくられました。 「ことしはおとこか。しかもまずそうだな……まぁ、いいか。はらのたしにはなる」 じゃしんはゆうしゃさまをたべようとてをのばしましたが、そのまえにゆうしゃさまがさけびました。 「きさまはすごいちからをもつときく。ほんとうにすごいのか?」 それをきいたじゃしんはおおきなこえでわらいました。 「なにをいうか。わがちからをもってすればかなわぬことはない」 「それだけすごいなら、しょうかんがしぬまえにひとつだけねがいをかなえてくれ」 「ほう……そのねがいとは?」 ひっしのひょうじょうでさけぶゆうしゃさまをみくだし、よゆうたっぷりにじゃしんはききました。 「いまからしょうかんがおもうすがたにばけてくれ。それをみないことにはしにきれない!」 「そんなことか。いいだろう……しぬまえにとくとめにやきつけるがいい!」 じゃしんはゆうしゃさまのこころをよみとり、そのとおりのすがたにばけました。 まるいかたちをして、くろいおびをまいたちゃいろのえんばん。 それは、ゆうしゃさまのくにでいう"のりまきせんべい"でした。 「どうだ。すごいだろう!」 とくいげにわらう"のりまきせんべい"をてにとり、ゆうしゃさまはいいました。 「ああ、ほんとうにすごいな。できればせんちゃもほしかったが……まぁいいか」 そういうと、ゆうしゃさまはそのせんべいをばりばりとたべてしまいました。 あっというまのことでした。じゃしんがへんしんをとくひますらあたえませんでした。 こうして、じゃしんはたおされじゃんぐるとひとびとはかいほうされました。 ひとびとはゆうしゃさまをたたえ、じぶんたちのおうとしてむかえいれたのです。 それからこのちは、ゆうしゃさまのこきょうのくにのいちぶとなりました。 ひとびとはじゃしんのしんでんをうちこわし、"あまてらすおおのかみ"をまつりました。 そしてゆうしゃさまを"そーとく"としてむかえいれ、すえながくしあわせにくらしたとさ。 めでたし、めでたし。