やる夫が異世界で生きるようです 設定 『新家男爵~~貧乏貴族の代名詞~~』 新家とは、比較的新しい時代に成立した貴族の家系のことです。 具体的には某ライトさんが暴れまわってた頃より後ですね。 この頃になるとトリステインは国土の大幅な縮小による国力の低下と、 貴族の相対的な増加による人件費に苦しむようになります。 (以前からその傾向はありましたが、「本格的に」という意味です。) そこへもってきて、大戦の勲功で大量の授爵陞爵です。 しかもこのドサクサに紛れて、「譜代」貴族が陞爵……はまだしも、 配下の分家や次男三男坊の授爵(独立&厄介払い)を狙ったからもう大変、 大量の男爵(上級貴族の最下位)が出現することとなりしました。 こうして量産された男爵家は、従来の男爵家と区別するため新家と呼ばれるようになったのです。 (譜代の活躍もこの時の論功を元にしており、捏造こそ少ないがかなり過大評価されている) さて、こうして生まれた新家男爵ですが…… 彼らは正式には男爵ではなく権男爵、つまり「定員外の男爵」です。 ですから従来の正規の男爵家(旧家男爵)よりも(表向きこそ対等ですが事実上)下位に置かれ、 出世等様々な分野で差をつけられています。 ……ああ、爵位に付随する年金(位禄)はその最たるもののその一つですね。 両者とも格式は知行1000クオータ格と同等ですが、実際の位禄は── 旧家男爵 位禄1000クオータ(年2000エキュー) 新家男爵 位禄. 500クオータ(年1000エキュー) ──と、新家男爵はその多くが半額の年1000エキューが保証されているにすぎません。 しかも彼等は上のような事情で、その多くが家禄を始めとする伝来の財産を持たぬ上、出世等でも格下に置かれています。 これで上級貴族としての体面を保たねばならぬのですから、かなり懐具合は厳しいでしょう。 ※とはいえ、新家男爵の中でも旧家男爵並の位禄1000クオータを有する家も少数存在する。 (ただしその多くが相当の家柄や財産を持つ家の分家であり、かつ権男爵では無く正規の男爵── つまり旧家男爵並かそれ以上の格式を持つ、単に「最近創家された男爵」という意味での新家男爵に過ぎない。) <新家男爵の家計> 以下は新家男爵の家計のモデルケースです。 (上級貴族としての体面をギリギリ保つ倹約モードの家計だが、多くの家はだいたいこんなもの。) ┌─────────────────────────────────────────────────┐ ..| ..| ~~収入~~ ..| ..| ①位禄: 1000エキュー ..| 新家男爵としての年金です。 ..| ..| ②協会役職手当: 500エキュー ..| 広義には上の年金の中に入りますが、国ではなく王立魔法協会からの役職手当です。 ..| ..| ※男爵以上の貴族は、(名目上)魔法協会の非常勤役員ということになっている。 ..| (ただし抱席の権男爵、いわゆる「雑木林男爵」は除く。) ..| ..| ③家禄: ..| 新家男爵の場合、「無し」が殆どです。 ..| ……まああっても位禄(1000エキュー)分は相殺されちゃいますしね。 ..| ..| ④役料: ..| 国に仕えて貰う給金です。 ..| スタートは100エキューそこそこ、年功を重ねても最高で「1000エキューを越えるか」どうかってとこです。 ..| ..| ⑤魔法協会謝礼: ..| 要はバイト料です。 ..| 相対的に額が低くなるので収入に占める割合は中下級貴族と比べて大きく落ちますが、 ..| それでも法衣貴族にとっては重要な位置を占めています。 ..| ..| ⑥資産の運用による副収入: ..| とりあえず「無し」として考えます。 ..| └─────────────────────────────────────────────────┘ ①②で1500エキュー、④⑤でどれくらいになるかなあ…… まあ最低でも①~⑤合わせて2000エキューは固いでしょう。 ならして年2500エキュー前後くらいにはなるかな? (どのくらいバイトに精を出すかによるけど。) 1エキュー=1万~2万円前後(物価換算。収入換算なら3~4万円前後)ですから、年収4000万前後の購買力です。 収入レベル的にはその倍以上…… 超一流企業の社長級かそれ以上ですね。さすがは上級貴族! ┌─────────────────────────────────────────────────┐ ..| ..| ~~支出~~ ※エキュー換算 ..| ..| ①人件費: 900エキュー ..| ・俸給: 360エキュー(11名) ..| 執事. 1名 150エキュー ..| 馬丁. 1名 40エキュー ※見所のある従僕が兼任(役持従僕) ..| 料理番 1名 30エキュー ※見所のある女中が兼任(役持女中) ..| 従僕. 4名 20エキュー×4 ..| 女中. 4名 15エキュー×4 ..| ..| ※執事は10人扶持で小麦か銀払い、他は全て銀払い ..| ※門番は下男が交代で務める。 ..| ..| ・食費・生活費: 400エキュー ..| ..| ※執事は家族持ちで屋敷内に離れ(住居)を提供。他は住み込みで衣食住提供 ..| ..| ・それ以外の負担: 140エキュー ..| ..| ※特別支給(衣類等)等 ..| ..| ②家族の支出: (標準的な5人家族として)850エキュー ..| ・日常生活費等: 325エキュー ..| ・交際費: 130エキュー ※家族の小遣い・慶弔費を含む ..| ・節句や盆暮れ正月の特別費用: 100エキュー ※使用人への振る舞いも含む ..| ・衣料費: 100エキュー ※晴れ着代を除く ..| ・手許金: 50エキュー ※急な小規模支出に対応 ..| ・馬1頭&馬車の維持費: 120エキュー ※馬の買替積立を含む ..| ・その他: 25エキュー ※屋敷修繕費(資材費)等 ..| ..| 以上、①②で1750エキューの支出です。 ..| ……年金(位禄・役員手当)の1500エキューじゃ完全に足が出てますね。 ..| 最低限の格式でもコレです。 ..| 他に財産でも無い限り、働かなきゃとてもやってけません。 ..| しかも恐ろしいことに、これで終りでは無いのですよ。 ..| ..| ③学費: ?エキュー ..| 王立学校の他に熟やら習い事やら……(子供はいつの時代もカネがかかるものです) ..| ..| ④積立金: ?エキュー ..| 十年に一度とか二度の割合で訪れるイベントのための積み立てです。 ..| 主に冠婚葬祭とか。ああ、子供が多い場合は養子の口とか考えてやらなきゃなりません。 ..| こうなると更に積み立て必要額が…… ..| └─────────────────────────────────────────────────┘ 2000エキューじゃあちょっと厳しいですね。 2500くらいあれば、まあなんとか。 上の倹約モードかつ何事もおこらねば、僅かなりとも貯蓄できるでしょう。 (……ただし、その「何事か」は長い人生でたいてい一度や二度あるものですがw) こうして見ると、宮仕えで役料(給料)を得るのは当然として、 更にバイト前提でなければ、そもそも生活が成り立ちません。 それに余裕があってもまず貯蓄(積み立て)、不要不急な金がある程度貯まったら、 家作買うとか投資する前に、足りない「家格にあった品(美術品等)」を求めねばなりませんしね。 で、急な出費で「手放す」という悪循環w ……そういや、「召喚」のロイさんの家は5人家族どころか子沢山なので、 年2500エキューじゃ積み立てどころか学費も怪しいなあ。 そうなると日常の生活費を真っ先に削る訳で…… 前作(今作も?)のロイの飢餓感がわかるというものですw しかし、これだけの収入がありながら「貧乏貴族」…… ぶっちゃけ人件費とか交際費衣料費高すぎですね。 まあ、だからこそ平民が暮らしてゆける訳ですが。 <旧家男爵の家計> では、比較として旧家男爵の家計を簡単に見てみましょう。 以下は旧家男爵の家計のモデルケースです。 (※ただし新家男爵は旧家男爵とは違い多種多様、格式的にも資産的にもピンキリであるため、 . あくまで「旧家男爵としては最低限のランク(格式)における」モデルケース。) ┌─────────────────────────────────────────────────┐ ..| ..| ~~収入~~ ..| ..| ①位禄: 2000エキュー ..| ..| ②協会役職手当: 1000エキュー ..| ..| ③家禄: ..| 旧家男爵ともなるともなると家禄を持っている場合が多いのですが、 ..| 「2000クオータ以上」となるとぐっと少なくなりますので「無し」と考えます。 ..| ..| ④役料: ..| ⑤魔法協会謝礼: ..| 年金(①②)と合わせると4000エキュー以上になります。 ..| ..| ⑥資産の運用による副収入: ..| そこそこある家が多いですが、便宜上「無し」とします。 ..| └─────────────────────────────────────────────────┘ つまり、年収は4000エキュー以上。 1エキュー=1万~2万円前後(物価換算。収入換算なら3~4万円前後)ですから、年収6000万以上の購買力です。 収入レベル的にはその倍以上…… ┌─────────────────────────────────────────────────┐ ..| ..| ~~支出~~ ※エキュー換算 ..| ..| ①人件費: 1700エキュー ..| ・俸給: 1100エキュー(14名) ..| 執事.: 1名 225エキュー ..| 料理人: 1名 400エキュー ..| 馬丁:. 1名 150エキュー ..| 門衛:. 1名 150エキュー ..| 従僕:. 5名 20エキュー×5 ..| 女中:. 5名 15エキュー×5 ..| ..| ※執事は15人扶持、門衛・馬丁は10人扶持で小麦か銀払い、他は全て銀払い ..| ..| ※料理人はギルドより派遣された期間雇用で、ギルドへの支払い込。 ..| (他に初回に紹介料、2年ごとに更新料がかかる。) ..| ..| 使用人数は新家男爵とそう変わりませんが、人件費がぐっと上がります。 ..| これは高度な技能を持った専門職が複数存在するからです。 ..| たとえば、料理番は台所を預かり主家の日常の食を供し、時に客をもてなします。 ..| 馬丁は主人と共に移動し他家を訪問し、門番は門を守り来客を最初に応対する…… ..| 執事の重要性は言うまでも無いでしょう。 ..| それぞれ重要な役であり、本来は専門職が望ましいのですよ。 ..| (新家男爵は家計の問題で素人に毛の生えたような使用人に代用させているに過ぎない。) ..| ..| ・食費・生活費: 400エキュー ..| ..| ※執事、門衛、馬丁、料理人は家族持ちで屋敷内に離れ(住居)を提供。他は住み込みで衣食住提供 ..| ..| ・それ以外の負担: 200エキュー ..| ..| ※特別支給(衣類等)等 ..| ..| ②家族の支出: (標準的な5人家族として)1300エキュー ..| └─────────────────────────────────────────────────┘ 以上、①②で3000エキューの支出です。 年金(位禄・役員手当)の3000エキューでとんとんってとこですか。 まあ新家男爵よりはマシですが、③学費や④積立金を作るためには、 やはり宮仕えで役料(給料)を得るのは当然として、 更にバイト前提でなければ、そもそも生活が成り立ちません。 (それでやっと4000エキュー以上稼げる。) ただ、まあ…… 新家男爵よりは余裕があるかな? でも格式が上がるから出費も増えるし、これはあくまで最低限の支出レベルだし…… (できれば上女中(侍女)が欲しいところだし、更に望めば貴族の家臣も欲しい。) 結局のところ、収入が上がれば相応の格式を整えなければなりませんから、いたちごっこなんですよね。 とはいえ、ご覧の通り明らかに生活レベルは新家男爵より「上」です。 (たとえば「専門の料理人の存在」と「倍は違う副食費」の差は、食生活に大きな差をもたらすことだろう) <新家男爵になるには> 上級貴族の子弟は、家を継ぐ(或いは嫁ぐ)者以外は以下の3つの道が存在します。 ①「正規の男爵になって創家する」 ②「抱席の権男爵になって部屋住みとなる」 ③「譜代席の権男爵になって創家する」 これらは広義の意味では全て「新家男爵」となりますが、その中身はまるで違います。 ①は冒頭でも書きました様に上級貴族の中でも特に格式のある家の子弟、 或いはよほど財力のある家の子弟しか基本的になれず、 それ故に旧家男爵並かそれ以上の格式を誇りますし、内福です。 ②は上級貴族の子弟ならばほぼ無条件でなれる最低保障の身分であり、 実家を継げず、婿養子や嫁にも行けず、さりとて独立する金も無い上級貴族、 早い話が部屋住みの子弟にあたえられる身分です。(新「家」ですらない!) ③は上級貴族の子弟ならば、一定のお金があればなれます。 狭義の意味での新家男爵であり、普通「新家男爵」と言えばこの人々をいいます。 (上の新家男爵の家計のモデルケースもこの層) さて、では③の「譜代席の権男爵」になるには、いったいどの程度のお金が必要なのでしょう? まず、王家に2万エキューは最低納めねばなりません。 (上納金の額は「実家の格」や「血統」、「家での立場(嫡子か庶子か何番目の子供か)」等により異なります。) またその前提として、男爵家の当主に相応しい格式を整えなければなりません。 ・屋敷 実家の別邸を譲ってもらえれば問題ありませんが、そうでなければ買い求める必要があります。 「1000クオータ格だから1000坪」と言いたいところですが、まあギリギリ削っても700坪くらいの敷地は欲しい。 場所は場所は王城から離れてるにしろ、まあぎりぎり「それなり」と言える地域…… 土地だけで1500~2000エキュー?は必要ですか。 建物は……中古だと(フル装備&由緒付で)で高いから新築として── 「おいおい(数代がかりで)増築する」という前提で、母屋(これも増築前提で最小限)+必要最低限だけで土地と同額くらい? 土地と合わせて計3000~4000エキュー?は必要ですね。 ・家財道具 これも実家の別邸を譲ってもらえれば問題ありませんが、そうでなければ買い求める必要があります。 やはりおいおい追加で揃えるとしても、とりあえず1000?エキューは必要でしょう。 ああ、馬や馬車も必須ですから更に数百エキュー…… 総計25000エキュー前後。当座の運転資金とかある程度の貯金も必要ですから、ざっと26000エキューはいりますか。 ある程度は借金で補うにしても── ……いや、上の家計のモデルケース見たら無理か。かなり厳しいなあ。 嫁の実家と折半しても13000エキュー…… それだけの金があれば、どこかに婿養子に行けるでしょうね。 (ああ、そういや他に結婚資金も必要か……orz) ちなみに、①の「正規の男爵になって創家する」だと更に倍以上かかります。(ただし例外あり) 気が遠くなりますね。こうして見ると、新家男爵ですら高嶺の花なのですよ。実は。 以上、新家男爵の解説でした。 ※あ、ハルケギニアなのに何故「坪」というつっこみは無しでw(あくまでイメージなんで。)