魔法少女リリカルなのは×とらいあんぐるハート3SS 小ネタ「恭也が運命の選択をするようです」 ※恭也28歳、はやて・なのは・フェイト12~13歳(中学校入学後)の時の話です。 「…………」 廃墟と化したビルの中を、恭也は剣を手に無言で歩く。 むせかえるような硝煙と血の臭い。 だが先程まであれ程激しかった銃声は、今では殆ど聞こえない。 時折、散発的に聞こえてくる程度だ。 この凄惨な戦闘が、ようやく終りを迎えようとしていたのだ。 そして、彼の短くも長かった戦い――いや復讐劇も。 「あっけないものだな……」 恭也は、ぽつりと呟いた。 これがあの“龍”の最期だと思うと、何とも複雑な気持ちでいっぱいだった。 西暦2001年9月11日、米国で同時多発テロが発生。 この事件を境に、世界の在り方は大きく変わった。 以後、世界は「テロとの戦い」を合言葉に結束、軍事力を用いた大規模な対テロ掃討戦を繰り広げることとなる。 無論、“結束”と言ったところで同床異夢に過ぎぬし、何時までこの流れが続くのかも疑問だ。 だが、中露を筆頭に今まで非協力的だった国々までもが協力姿勢に転じた意味は極めて大きかった。 逃げ場を失ったテロリスト達は、次々と非業の最期を遂げることとなる。 各国はそれこそありとあらゆる法を動員或いは無視し、裁判を受ける権利すら与えずに、まるで虫けらの様に彼等を“駆除”していく。 それはまさしく、反テロの暴風だった。 世界規模の中国系非合法組織“龍”は、その中でも最重要ダーゲットの一つに祭り上げられていた。 金に目が眩み、迂闊にも結果として同時多発テロの片棒を担ぐ羽目になったことが原因だ。 ……さしもの彼等も取引相手がまさかこのような愚行に出るなど思ってもいなかっただろうが、そんなことは理由にもならない。 結果、米国……いや米国民は激怒。その怒りは北京すらも動かした。 地方政府はおろか中央政府にまで深いパイプをもっていた彼等だったが、米国の本気と「米政府の西蔵・新疆独立派のテロ組織認定」 の前にあっさり切り捨てられたのである。 軍特殊部隊を大量動員した、問答無用の掃討。 その圧倒的なまでの“力”の前には、世界屈指の武闘派と恐れられた“龍”の抵抗も蟷螂の斧に等しい。 僅か一月足らずで、彼等はこのビルを中心とした狭い地域に追い詰められていた。 暫く歩くと広間に突き当たった。 「酷いな……」 その凄惨な光景に、恭也は思わず呻く。 血の水溜りと多数の死体。 そして死体は皆、老若男女の区別なく頭を吹き飛ばされている。 ……おそらく、倒れた後に念を入れて頭を撃ち抜かれたのだろう。 襲撃者達は、彼等を生かすつもりなど毛頭無かったのだ。 ――これが、俺の望んだものか…… 己の想像していたものとはあまりにかけ離れた世界に、打ちのめされる。 これは戦いなんかじゃあない。一方的な殺戮、ただの虐殺だ…… そして自分もまた、それに手を貸した者の一人に他ならない。 「くっ!」 恭也はきつく奥歯を噛み締める。 そのあまりの重さに、体は今にも崩れ落ちそうだった。 そんな彼の前に、一人の男が現れた。 場にそぐわぬ、背広を着た中年……と呼ぶにはやや高齢の白人男性だ。 男は恭也を見ると、気軽に声を上げる。 「やあ、キョーヤ」 「ああ、リチャードさん……」 これに応じ、恭也は丁重に頭を下げる。 Mr.リチャード。米国陸軍の退役軍人で、在米華僑を通じて北京ともパイプを持っている人物だ。 「一族の仇はとれたかい? ――ふむ、今回もだいぶ殺したようだな?」 両手に下げっぱなしの剥き出しの刀身を見て、リチャードは目を細めた。 いったい、何人を斬ったのだろう? その両手に握られた二振りの小太刀は、拭いきれぬ血脂で濡れている。 「これも全てあなたのお陰です。感謝します」 「いやいや、これは純粋なる“取引”だ。礼などいらないよ」 恭也はもう一度深々と頭を下げるが、リチャードはあっさりと首を振った。 彼はこのかつての士郎の知人――友人ではない――に頭を下げ、一連の戦闘に参加させて貰っていたのだ。 「約束は守ります」 「ああ、楽しみにしている。君のミカミ流は実に見事なものだ、きっと世界の平和のために役立つことだろう」 「…………」 「……どうした? これで仇が討てたというのに、えらく浮かない顔じゃないか?」 「おかげさまで……」 「ははん、さてはこいつらを哀れに思ったな? ……やれやれ、日本人の悪い癖だ」 リチャードは大袈裟に頭を振って苦笑する。 「いいかい、こいつらは大悪人だ。しかも君の仇――こうなって当然のことをしてきたのだよ?」 「わかっています」 頭が上がらない人物の言葉だけに、恭也は神妙な顔をして頷く。 だが、その獣の如く狩られるその姿は哀れを催さずにはいられない。 女子供や老人まで殺戮するそのやり方に、吐き気を催さずにはいられない。 何より誇りが、矜持が傷つけられる。 自分は剣士であって、断じて断じて屠殺人ではない…… そんな恭也の傍を、特殊部隊の隊員達が次々と通り過ぎていく。 その役目を終え、撤収を始めたのだろう。 これを横目にリチャードは煙草を咥え、火をつける。 そして一息吸ったあと、何気なしに呟いた。 「これで“龍”も終りだな……」 「これから先、“龍”はどうなりますか?」 恭也が真剣な表情で訊ねた。 主要構成員の大半を失ったとはいえ、“龍”には未だそれなりの数の残党が存在する。 一連の戦いに参加した以上、その最期を知っておくべきだと考えたのだ。 ……正直な所、聞きたくもなかったが。 「君の想像通りさ。水に落ちた犬は叩かれるだけだ」 (革靴に付いた血を拭うべく)その足を死体の衣服に擦りつけながら、リチャードは答える。 死体を物と思っているからこその行為だが、恭也は目を背けずにはいられない。 「各国政府からだけではなく、今まで敵対してきた世界中の非合法組織やら君同様に仇と思う個人から、よってたかって嬲り殺される。 無論、逃げ場は無いし女子供も関係ない」 「…………」 「ま、私にはもう終わったも同然の話だよ。そんなことより――」 リチャードは、まるで魂を要求する悪魔の如き笑顔を浮かべて恭也を見た。 「今度は君の番だ。借りを返して貰おうか」 ――同時刻、ビルの外では軍と香港警防隊の押し問答が続けられていた。 「最強にして最悪の法の守護者」と恐れられる世界最強の“個人集団”、香港警防隊。 “龍”との死闘を繰り広げられていた彼等は、だが今回の一連の掃討では蚊帳の外に置かれていた。 日頃有形無形の圧力で摘発を妨害しておきながら、掌を返したように掃討するその遣り口と合わせ、彼等の心中は察するに余る。 だが何よりも彼等を憤らせたのは、平然と法を踏みにじる軍の行為だった。 非合法ギリギリの所で治安を守ってきた彼等にとってそれは侮辱も同然であり、かつ秩序を乱す最たるものに見えたのだ。 「失せろ」 軍の指揮官は部下達に銃口を向けさせると、冷笑を浮かべて言い放った。 「ここから先は香港ではなく北京の、警察ではなく軍の管轄だ。 ――最後にもう一度だけ言ってやる。失せろ」 「!」 「陣内さん! ここは――」 激高する陣内隊長を美沙斗は必死で抑える。 確かに、戦えば彼等など一蹴できるだろう。 何ら誇張ではなく、それだけの実力が彼等にはある。 ……だが、それは最悪の選択だった。 如何に武を誇ろうと、個人は組織に勝てない。 組織も、より大きな組織に勝てない。 そして国家とは、最大最強の組織に他ならない。 だから、最終的には潰される。 香港警防隊は“龍”同様の運命を辿り、そのスポンサー達もまた国家反逆罪で逮捕されることだろう。 それを考えれば、ここは引き下がるしかなかった。 ……それがわからぬ陣内ではない。 やがてがっくりと肩を落とし、美沙斗に導かれるまま仲間達の所へと歩を進める。 その途中、小さく呟いた。 「……すまない。君の方が余程無念だろうに、醜態を晒してしまった」 「いえ……」 陣内が暴発しなかったことに内心安堵しつつ、美沙斗は首を振る。 その拍子にビルの入り口が視界の端に入った。 そこから出てくる二人の男。背広姿の白人と―― 「っ!?」 「? どうした?」 陣内の問い掛けも、耳に入らなかった。 ただ信じられない、とばかりに美沙斗は目を見張る。 あれは、あれは、まさしく―― 「恭也っ!」 そう。甥の、兄さんの息子、恭也だ! 我を忘れ、美沙斗は叫ぶ。 「恭也っ! 恭也だろうっ!?」 叫びながらも、頭の中には激しい疑問が渦巻いていた。 何故、そんな所にいる!? 日本の一般市民だった君が、どうやって中国軍特殊部隊と行動を共にしているのだ!? 何より―― 君は日本で幸せに暮らしていた筈だろう!? 3月には高校だって卒業の筈だっ!! 遠目ながらも恭也や美由紀と会うべく、美沙斗は何度か海鳴を訪れている。 たくさんの家族に囲まれて幸せに暮らしていたというのに、何故…… 「恭也っ!」 「美沙斗くん!?」 名を呼び駆け寄ろうとする美沙斗を、今度は陣内が慌てて押さえる。 そんな中、恭也は美沙斗の呼び声を背に、逃げるように車へと乗り込んだ。 翌年1月、恭也はリチャードが設立したPMC(民間軍事会社)と正式に契約した。 以後三年間の間、彼は最悪の戦場を渡り歩くこととなる。 ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ┃ ・ ・ ・ : : : | | ¦ ! ――――新暦69年。ミッドチルダ、“クラナガン・エクスプレス”駐屯地。 「――ッ!?」 その光景に、恭也は思わず跳ね起きた。 怒り、恐れ、哀しみ、苦しみ、嫌悪……様々な感情が交叉する。 頭が混乱し、何処までが現実で何処からが非現実かすら分からない。 荒い息で呼吸を整え、ようやく冷静さを取り戻した彼は、そこでやっと自分が夢に魘されていたことを理解した。 「夢、か……」 その事実に恭也は安堵の溜息を吐いた。 “龍”を倒すまでの一ヶ月とその後の三年間は、恭也にとって地獄も同然の毎日だった。 ……それはそうだろう。 それまで経験してきた戦いと言えば、正々堂々たる“果し合い”か“騙まし討ち”。 それも「運が悪ければ死ぬ」程度の、今にして思えば他愛もないものでしかなかった。 後は……チンピラヤクザ共と何度かやりあったくらいで、カウントするにも値しない。 訓練された“軍隊”との、殺すか殺されるかの戦い。 ゲリラ相手の、一瞬たりとも気が抜けぬ日常。 この現実を前に、恭也の心身が大きく磨耗していったことは想像に難くない。 だが彼を最も打ちのめしたのは、戦場の狂気と理不尽さだった。 そして、心ならずもその片棒を担ぐ自分…… 己の放つ血の臭いと腐臭に、一時は発狂寸前まで追い詰められたものだ。 だから、仮面を被った。 耐え切れなかったから、 仮面を被った。 仮面を介して外の世界と接することで、己の行動と世界に対する傍観者となったのだ。 仮面はよく機能し、次第に傍観者として現実と接することができるようになっていった。 何気なく手鏡をとり、己の顔を覗き込んでみる。 そこに映ったのは、凍りついた表情と視線。 ――この世界に来て初めてみせる表情だ。 道化の厚化粧が剥げ、かつて被っていた仮面が露出してきたのだ。 (今の俺を見たら、あいつらは一体どう反応するだろう?) 鏡を見ながら、ふと考える。 怯えるか、嫌悪するか、それとも―― (ま、所詮はIFか……) だがその無意味さに気付き、恭也は軽く肩を竦める。 何故なら、この仮面は二度と晒さぬと誓ったのだから。 こんな自分でも元の世界の家族は受け入れてくれた。あまつさえ、必要だと言ってくれた。 だから仮面を厚化粧し、道化の面とした。 ――家族と共に生きる為に。 こんな顔をして家族を心配させるくらいなら、笑ってしまえ。 家族を悲しませるくらいなら、馬鹿をやって笑われた方が、呆れられた方がよほどいい…… 鏡の中の顔が、変化していく。 凍りついた表情と視線から、へらへらしただらしのない表情と人を小馬鹿にしたような視線へ―― “いつもの恭也”へと戻っていく。 (……けどそうしたら、何故かとーさんみたいになっちまったんだよなあ) その不本意さに、恭也は内心大いに嘆く。 ……やはり親子だからだろうか? 将来、あんな大人にだけはなりたくないと思っていたのだが…… 「ま、とーさんにも『色々あった』とゆーことだな」 すっかり戻った表情口調で、苦笑する。 しかしこの性格、本当に仮初のものなのだろうか? コレ、すっかり根を張っててちょっとやそっとじゃ落ちねえぞ……。 (※今回の“剥離”も、実に数年ぶりだ!) (それに、俺みたいな三枚目が悩んでたって格好つかないからな~) 悩むだけムダである。 しょせんこの世はケセラ・セラ、ならば気楽にいくべきだ。 「そうは言っても先立つ金も魔力も無いけどな! ――でもま、なんとかなるだろ! HAHAHA」 《なるわけないよっ!?》 恭也の馬鹿歌に、思わずノエルが叫んだ。 ……半ば目覚めてうつらうつらしていた所に聞こえてきた、聞き捨てならぬ言葉。 日々お金と魔力の遣り繰りに苦心している彼女としては、つっこまずにはいられなかったのだ。 「どうした、ノエル?」 だがこの男、ノエルに真っ赤っ赤の家計を丸投げしておきながら、まったく彼女の悲痛な叫びが届いていない。 ただ不思議そうに彼女を見るだけだ。ああもう、このマスターはっ! 《ますたーがそんなかんがえだから、いつもいつもわたしがくろーしてるんだよ!》 「でもまあ実際何とかなってる訳だし」 《なってない、ぜんぜんなってないよっ! おきゅーりょーまえがりしてるのしってるでしょ!?》 そのわからんちんさに、ノエルが絶叫する。 ――実に今更であるが、恭也の勤務態度は極めて悪い。 ついでに上から思いっっきり目を付けられているため、勤務評価は下の下である。 つまり毎月が減俸の嵐で、まともに定額貰った例がないのだ。 ただでさえ安い給料なのにこれではたまらない。 故に常に赤貧状態であり、冗談ではなく100円単位の捻出にも四苦八苦する有様だった。 (※戦闘や修行関連の支出も無視できない!) さて、ここで一つ耳よりな話。 管理局では一定以上の額を減俸された場合、申請すれば「減らされた分の最大七割までを前借りできる」というシステムが存在する。 当然恭也はちょくちょくこの制度を利用していた訳であるが―― 《そのつけがたまりにたまって、こんげつだいぴんちなの! 3どのごはんを2どにへらしてもおいつかないのっ! おやつはとうぜんなしなの~っっ!!》 ……そう、借りたものは返さねばならない。 数少ない楽しみである“味わうこと”がこのありさまとあって、ノエルはマジ泣きだ。 だがこれを聞き、恭也は首を傾げる。 「う~む。それ前にも聞いたけど、何故そこまで……」 《わたしがねてるあいだに、ますたーがなんまんえんもつかっちゃったからだよっ!》 起きてみたら「あらびっくり」である。 そんな、ぎりぎりで計算してたのに…… 「あ~」 この薮蛇に恭也は口篭る。 そういや、マリーのトコ行く時にこっそり拝借したっけ…… 《あんなにたくさん、なににつかったのよ!?》 ノエルの涙交じりの詰問に、恭也は冷や汗をかいた。 (言えない…… まさか「その金で春を買いました♪」なんて絶対言えない……) そんな訳で、誤魔化してみる。 「泣くな、ノエル! みんな貧乏が悪いんだっ!」 《わるいのはますたーだよ~っ!》 ……お菓子が絡んでいるだけに、誤魔化せなかった。 ばかりか、遂にノエルは盛大に泣きはじめる。 《わ~ん! ますたーのばかあ~! このかいしょーなし~~!!》 「くっ! 泣くとは卑怯な!?」 さしもの御神の剣士も、泣く子の前には手も足も出ない。 恭也はお手上げとばかりに天を仰いだ。 ダレカタスケテ…… ・ ・ ・ 「はあ~~」 ノエルを宥めつつもほとんど強引に寝かしつけた後、恭也はベットに腰を下ろして安堵の溜息を吐いた。 「はあ……」 だがそれは、直ぐに深刻なものへと変化する。 言うまでもなく「この一ヶ月どうやって生きてく?」か、そして差し迫っては「ノエルの機嫌どうしよ?」と頭を悩ませていたのだ。 ……ま、どっちも根は同じな訳だったりするが、気にしないで欲しい。 (ノエルのヤツ、マジ泣きしてたからなあ……) 何しろあのお子様が如何なる甘言にも釣られなかったのだから、事態は相当深刻だ。冗談抜きで今月の家計は壊滅的なのだろう。 そして、その直接的な原因は自分の安月給と……“浪費”。 まあ安月給に関しては今更だし仕方がない(?)が、浪費は不味い。 しかもよりにもよって今月大ピンチ!な時に、生活費の入った財布から万単位で黙って抜き取った訳で、ノエルが激怒するのも当然だ。 おかげで何に使ったのか厳しく問い詰め、「もうむだづかいはやめてっ!」と泣く有様…… (でも止められないんだよなあ、これが……) その不謹慎さに、思わず頭を掻いて苦笑する。 だが恭也とて男、溜まるものは溜まるのである(ナニが?)。 ましてや日夜命掛けで戦っているため、生存本能からか溜まるのが人一倍早い(だからナニが?)。 そんな訳だから、月に二回……いやできれば三回程度は大目に見て欲しいとも思う(だからナニを!?)。 「とはいえ、流石に四回は行き過ぎだったな(汗)」 身も蓋もない台詞を恭也は呟いた。 ぶっちゃけ今回抜き取った金は今月三~四回目の代金に当てた訳で……情状酌量の余地ゼロだったりする。 恭也自身もそれを自覚しているため、彼女のマジ泣きはかなりイタかった。 ……ついでに言えば、家計ばかりでなく魔力運用をも管理している彼女との齟齬は、命に関わりかねない憂慮すべき事態でもある。 (正直、何とか機嫌を直して貰わないとこっちがもたんぞ……」 精神的にも肉体的にも「恭也、ぴんち!」である。 ま、自業自得なのだが。 ――どうしたらノエルの機嫌が直るか、考えてみた。 「機嫌を直すには、やはり金か……」 次にノエルが目覚めると、目の前には厚みで立つ……は無理だから「薄い札束が一つ」。 だが、少なくとも今月分の生活費には十分な額だ。 『こ、これは!?』 驚き訊ねるノエルに、恭也は胸を張って答える。 『さあ、どうだっ!』 『ますたーが……これを?』 『ははは、俺はやる時にはやる男だぞ?』 『すごいよ! さすがますたー!』 喜びはしゃぐノエル。 ――「うむ、これしか無いな」と恭也は重々しく頷く。 これでお菓子もあれば完璧だ。問題はどうやって短期間で金を稼ぐかだが…… 「む~」 悩む恭也の脳裏に、とある“天啓”が下った。 ①チワワ金融から借りる。 ②はやてから借りる。 ③なのはから借りる。 ④フェイトから借りる。 ⑤バイトして稼ぐ。