帝國召喚 『帝國海軍概論』その2 2、昭和19年4月(本編8章開始時)  西方諸侯を鎮定し、旧レムリア王国の支配権を握ったこの時期は、海軍にとっても一つの転換点だった。 <艦艇の就役状況>  転移前に計画された艦のほぼ大半が出揃っただけでなく、転移後に計画された艦艇の生産が軌道に乗り始めた。 @大型戦闘艦(戦艦、巡洋艦、航空母艦)(昭和19年4月1日現在)  装甲空母「大鳳」が竣工した。  また、水上機母艦「千歳」「千代田」「瑞穂」「日進」の4隻を新たに空母に改装することを決定した。  改装は昭和18年末から開始されており、「千歳」「千代田」「日進」の3隻は昭和19年中、機関換装を必要とする「瑞穂」は昭和20年初頭に再就役する見込みである。  尚、転移前に計画された大型戦闘艦は、昭和19年末に竣工する軽巡洋艦「酒匂」をもって全艦が竣工する。 A駆逐艦戦力(昭和19年4月1日現在)  新旧あわせて148隻(哨戒艇を含む)もの駆逐艦を保有していたにも関わらず、質量全ての面で不足していた。  駆逐艦戦力の内訳は以下の通り。  艦隊駆逐艦 94隻   吹雪型 19隻   暁型  4隻   初春型 6隻   白露型 10隻   朝潮型 10隻   陽炎型 18隻   夕雲型 19隻+1隻建造中   島風型 1隻   秋月型 7隻+5隻建造中   秋月改型 建造中(昭和20年2月〜)   松型 建造中(昭和19年4月〜)  旧式駆逐艦 54隻(哨戒艇含、順次哨戒艇に転籍中)   峯風/神風/睦月型一等駆逐艦 36隻(哨戒艇含)   樅/若竹型二等駆逐艦 18隻(哨戒艇含)  尚、夕雲型二十番艦(最終艦)は就役後第三駆逐戦隊に配属、それに伴い同戦隊配属の「島風」は第四駆逐戦隊に転属する。  秋月型八〜十二番艦(最終艦)は就役後第一〜三航空戦隊に配属する。  秋月改型は第五〜七駆逐戦隊更新用として24隻が建造される予定。  松型は旧式駆逐艦の代艦であり、新型海防艦や今後型落ちしてくる艦隊駆逐艦と共に方面艦隊の主力となる。 B潜水艦戦力(昭和19年4月1日現在)  新旧あわせて81隻の潜水艦を保有している。  潜水艦戦力の内訳は以下の通り。  練習潜水艦 13隻   L4型(呂60型) 9隻(訓練/対潜訓練任務に転換)  呂60〜68   小型(呂100型)  4隻(潜水学校へ)  呂100〜103  潜水艦 68隻   機潜型(伊121型)  4隻 伊121〜124   海大3型(伊153型)  4隻  伊153、154、155、158   海大3型(伊156型)  4隻  伊156、157、159、160   海大4型(伊162型)  2隻  伊162、164   海大5型(伊165型)  3隻  伊165〜167   海大6型(伊168型)  6隻  伊168〜173   海大6型(伊174型)  2隻  伊174、175   海大7型(伊176型)  7隻  伊176〜182   巡潜1型(伊1型)  5隻  伊1〜5   巡潜2型(伊6型)  1隻  伊6   巡潜3型(伊7型)  2隻  伊7、8   甲型(伊9型)  3隻  伊9〜11   乙型(伊15型)  20隻  伊15、17、19、21、23、25〜39   丙型(伊16型)  5隻  伊16、18、20、22、24   甲型改  建造中   乙型改  建造中   丁型  建造中   戦特型  建造中  転移時、帝國海軍は甲型、乙型、丙型、海大7型、中型、小型の計6タイプの潜水艦を建造していた。  が、転移後は甲型と乙型のみに生産を集中することに決定、他は建造が進んでいるものを除いてキャンセルされた。  現在は甲型と乙型の生産が終了し、その改良型が生産中である。  尚、丁型は輸送潜水艦、戦特型は実験潜水艦であり、極少数が建造される予定。  今後の潜水艦戦力は、特設潜水母艦1隻、潜水艦9〜10隻(甲型系列1隻と乙型系列8〜9隻)で1個潜水戦隊とし、これを計7〜8個戦隊(うち訓練1個)整備する。  つまり将来の潜水艦数は63〜80隻(うち訓練9〜10隻)+α(丁型、潜特型)となる。  ちなみに現在の潜水艦数は81隻(うち訓練13隻)+4隻(機潜型)  *呂33〜35の3隻はスコットランド王国に譲渡。  *丁型、潜特型は潜水艦隊直属の予定。 C護衛艦艇  昭和18年末から、いよいよ新型海防艦が竣工し始めた。  新型海防艦は将来の帝國海軍における沿岸警備や海上護衛の中核とされているだけでなく、現在の敷設艇・掃海艇・駆潜艇の後継としても位置付けており、年20隻という大量建造が予定されている。  最終的には200隻以上整備され、海上護衛総隊だけでなく各方面艦隊や鎮守府に配備される予定だ。  またこれ以下の艦艇として、200t以下の駆潜特務艇や哨戒特務艇が大量に竣工し始めている。 <大型艦建造計画 概要>   ついに巡洋艦以上の大型艦の建造計画が確定し、昭和19年度より建造が開始された。  何度もの計画変更を迫られた結果、大型艦(巡洋艦以上)に関しては、改大和型戦艦4隻、薩摩型高速戦艦6隻、改大鳳型装甲空母1隻、雲龍型空母1隻、改阿賀野型巡洋艦3隻、四万十型巡洋艦9隻が建造されることとなった。  改大和型戦艦、改大鳳型装甲空母、雲龍型空母、改阿賀野型巡洋艦については従来艦の改良型に過ぎないが、薩摩型高速戦艦と四万十型巡洋艦については全くの新型艦である。 @改大和型戦艦  大和型戦艦に若干の改良を加えた艦。  現在の大和型に対して実施された改良(電探・逆探の装備や対空兵装の強化等)を始めから施されている他、艦底部装甲を強化している。 A薩摩型高速戦艦  別途記載。 B改大鳳型装甲空母  大鳳型装甲空母に若干の改良を加えた艦。  現在の大鳳型に対して実施されるであろう改良を始めから施す他、全長を数m程延長して高角砲を連装6基から8基へと強化している。 C雲龍型空母  飛龍型空母に若干の改良を加えた艦。本型は新世代の軽空母として位置付けられており、一種の実験艦でもある。  外見上の主な変更点としては、艦橋の位置を右舷前部に移した他、甲板上のエレベーターが3基から大型2基に変更されている。また艦型も若干大型化されているが、装甲は薄くされた為、排水量は若干減少している。  戦時における量産性を考慮し、全体的に仕様が簡素化(ブロック工法・溶接工法の導入や艦型の直線化、夕雲型駆逐艦の機関を流用)された設計となっている。 D改阿賀野型巡洋艦  阿賀野型巡洋艦に若干の改良を加えた、駆逐戦隊旗艦用の巡洋艦。予算上は阿賀野型の五〜七番艦とされているが、通常は改阿賀野として区別されている。  老朽化の進む旧5500トン型軽巡の代艦として早期の就役が求められていたため、新型ではなく従来の阿賀野型軽巡として建造された。  但し本型では、阿賀野型軽巡に欠けていた対空戦闘能力を付加するため、対空火器を従来の長砲身7.6センチ高角砲連装2基から8.8センチ連装高角砲4基(陸軍の九九式高射砲)に変更しており、それに伴い魚雷発射管の位置を中心軸から両舷に変更する等の改正を行っている。  これ等の処置により、8.8センチとはいえ何とか舷側4門の対空射撃能力を確保したものの、逆に魚雷の射線は8から4に半減した。 E四万十型巡洋艦  方面艦隊における小艦隊旗艦等の任務を受け持つ、所謂『植民地警備』用の巡洋艦だ。  有力な敵との交戦など端から考えていないため、装甲は薄く兵装も貧弱だ。速力も最大で30ノットに過ぎない。  代わりに、ある程度の指揮通信能力と長期哨戒能力を持つ。  基準で5000トンという大きさと5500トン型巡洋艦から流用した主砲6門を装備することから、『新5500トン型』とも称される。  巡洋艦としては恐ろしく安価な為、大量建造が可能である。 <大型艦建造計画 決定への道のり>   今回計画された艦は、伊勢型2隻、扶桑型2隻、金剛型4隻の戦艦8隻、古鷹型2隻、青葉型2隻、妙高型4隻、高雄型4隻の重巡洋艦12隻の後継として建造される艦である。  当初海軍は、上記旧式戦艦群については退役後も保管状態にしておこうと考えた。  だが途中大改装を受けているとはいえ、30年以上の長きに渡り現役で活躍してきたこれ等戦艦群の老朽化には著しいものがあり、加えてこれから更に10年前後に渡る現役生活を送らねばならないことを考えれば、それは机上の空論でしかなかった。  ……こうして、結局退役後は全艦が解体されることとなった。  これ等伊勢型2隻、扶桑型2隻、金剛型4隻の後継として、改大和型4隻が建造されることになっている。  古鷹型2隻、青葉型2隻、妙高型4隻、高雄型4隻の重巡洋艦12隻については未だ艦齢が若く、状態も良好な為、後継艦登場後も現役に留まることになっている。  ……とはいえ、その頃には流石に第一線での活動は不可能な為、方面艦隊旗艦として最後のご奉公を行う程度ではあるが。  薩摩型高速戦艦6隻は、上記重巡洋艦12隻の後継として建造される艦だ。 本来ならば新型重巡洋艦12隻が建造される筈だったが、充分な兵装と装甲を与えていく内に、『60口径8インチ砲9門を搭載する基準18000トンの装甲巡洋艦』という化け物になってしまったため、戦艦として建造されることとなったのだ。  化け物なのに、何故戦艦に?  理由は簡単。この『化け物巡洋艦』でも戦艦には勝てないからだ。「金剛」や「扶桑」といった、第一次世界大戦以前の戦艦にすら、である。 (このため、対戦艦用に水雷兵装を搭載する必要があった)  加えて条約時代の重巡洋艦相手ならかなり優位だが圧勝とまではいかず、米海軍が建造している新型重巡洋艦とはおそらく互角、そしておよそ戦艦と名の付く艦には簡単に負けてしまう……そのくせ値段だけは一昔前の戦艦並、そんな中途半端な艦だったのだ。  ……ならば、この新型重巡洋艦12隻の代わりに新型の高速戦艦6隻を造った方が余程良い。  予算的にも資材的にも殆ど変わりは無いし、ドックに関して言えばかえって余裕が生じる程だ。 (つまり、それ程重巡洋艦という艦種は『割高』なのだ。無論、この新型巡洋艦が欲張り過ぎたこともあるだろうが)  こうして建造されたのが薩摩型高速戦艦6隻だ。  基準排水量40000tの巨体に35.6cm45口径砲三連装4基、九八式10cm60口径高角砲連装8基、五式25o機銃三連装16基、同単装4基を備え、最高速力は32.5ノット、航続距離は18ノットで8000海里である。  攻撃力は長門型よりやや劣るが扶桑・伊勢型と同等、防御力は長門型よりやや優勢、機動力は金剛型以上という高性能振りで、英国のKG五世型よりも一段上の艦といえる。 (尚、主砲は解体される戦艦群の45口径35.6cm砲を流用することになっている) <大型艦建造計画 計画完成後の連合艦隊>   昭和19〜28年に渡って建造される予定の改マル四、改マル五計画艦艇群が全艦就役した場合を想定し、その頃の連合艦隊の姿を以下に記す。  時期的には昭和32〜33年頃である。  連合艦隊   連合艦隊旗艦  戦艦「長門」「陸奥」 *一方は練習艦であり、交互に現役復帰   第一艦隊    第一戦隊   戦艦「紀伊」「尾張」    第二戦隊   戦艦「信濃」「甲斐」    第三戦隊   戦艦「大和」「武蔵」    第一駆逐戦隊 巡洋艦1(阿賀野型)、艦隊駆逐艦16    第三駆逐戦隊 巡洋艦1(阿賀野型)、艦隊駆逐艦16    第五航空戦隊 軽空母「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」、艦隊駆逐艦4   第二艦隊    第四戦隊   戦艦「薩摩」「大隈」    第五戦隊   戦艦「周防」「安芸」    第六戦隊   戦艦「土佐」「肥前」    第二駆逐戦隊 巡洋艦1(阿賀野型)、艦隊駆逐艦16    第四駆逐戦隊 巡洋艦1(阿賀野型)、艦隊駆逐艦16    第六航空戦隊 軽空母「千歳」「千代田」「瑞穂」、艦隊駆逐艦4   第三艦隊    第一空母群    第一航空戦隊 空母「天鳳」「大鳳」「雲龍」、防空駆逐艦4(秋月型)    第七戦隊   重巡「最上」「三隈」    第五駆逐戦隊 巡洋艦1(改阿賀野型)、艦隊駆逐艦8(改秋月型)    第二空母群    第二航空戦隊 空母「瑞鶴」「翔鶴」「飛龍」、防空駆逐艦4(秋月型)    第八戦隊   重巡「鈴谷」「熊野」    第六駆逐戦隊 巡洋艦1(改阿賀野型)、艦隊駆逐艦8(改秋月型)    第三空母群    第三航空戦隊 空母「赤城」「加賀」「蒼龍」、防空駆逐艦4(秋月型)    第九戦隊   重巡「利根」「筑摩」    第七駆逐戦隊 巡洋艦1(改阿賀野型)、艦隊駆逐艦8(改秋月型)   第四艦隊 直属の支援艦艇群を、統一的に運用する艦隊。艦隊司令部は陸上。   第五艦隊 北東ガルム方面艦隊から独立した機動打撃艦隊。小内海を遊弋し戦力誇示。    第十戦隊   重巡「青葉」「衣笠」「古鷹」「加古」、艦隊駆逐艦4    第四航空戦隊 空母「隼鷹」「飛鷹」「日進」、艦隊駆逐艦4    他に艦隊直属として、艦隊駆逐艦4、輸送艦10、連合陸戦隊1   第六艦隊    潜水母艦、特設潜水母艦、潜水艦を統一的に運用する艦隊。    艦隊司令部は陸上。   第十一〜十四艦隊    帝國本国を囲む大内海を守る方面艦隊。    第十一(旗艦は巡洋艦「妙高」)は北部海域、    第十二(旗艦は巡洋艦「那智」)は東部海域、    第十三(旗艦は巡洋艦「足柄」)は南部海域、    第十四(旗艦は巡洋艦「羽黒」)は西部海域を担当。   第十五〜十八艦隊    大内海に面した大陸沿岸部を守る方面艦隊。    第十五(旗艦は巡洋艦「高雄」)は西ロディニア方面、    第十六(旗艦は巡洋艦「愛宕」)は南ロディニア方面、    第十七(旗艦は巡洋艦「摩耶」)は南ガルム方面、    第十八(旗艦は巡洋艦「鳥海」)は東ガルム方面を担当。   第十九艦隊    北東ガルム方面艦隊。旗艦は巡洋艦「大淀」。   第十一航空艦隊    陸上航空部隊。   第十二航空艦隊    輸送航空部隊。   他、直属部隊・艦艇多数。