帝國召喚 『種族』 【ダークエルフ】 1、ダークエルフとは @この世界におけるダークエルフの位置  ダークエルフはこの世界において、その存在を『認められていない』唯一の種族です。  『いるはずが無い』どころか、『いてはいけない』種族とすらされています。  もしその存在が発覚すれば、待つのは『死』のみでしょう。それ故、彼等はその身を隠し続けてきました。  しかし帝國と出会いにより、彼等の運命は大きく廻り始めます。  これ以降、彼等は日陰の身から、一気に歴史の表舞台に躍り出ることとなるのです。 A種族としてのダークエルフ  ダークエルフは非常に優れた種族です。  彼等はエルフに匹敵する知力と魔力に加え、獣人に準ずる身体能力すら保有しています。  彼等はその能力を生かし、諜報活動や暗殺・破壊工作を請け負って生活していました。  彼等の結束は強固であり、そのネットワークは世界中に張り巡らされています。  彼等に匹敵する規模・能力を持つ組織は、他に存在しません。  彼等の顧客は非合法組織が主と思われがちですが、実は圧倒的に国家が依頼する仕事の方が多いのです。  彼等に仕事を依頼したことのない国家は存在しないと言っても、過言ではないでしょう。  ……もっともそれを認める国家などありませんが。  余程の大国でも、自前の諜報機関よりダークエルフの諜報力に依存しています。  さすがに列強ともなると自前の組織をメインとしますが、やはり重要な補完としてダークエルフの力はかかせません。  自前の組織だけではどうしても限界があるのです。  しかしこの情勢は帝國の出現により一変します。  帝國がダークエルフを独占してしまったからです。  これにより帝國は世界最大・最高の諜報機関を手に入れたのですが、その反面各国の諜報力は激減を余儀なくされます。  諜報機関が機能しなくなった国すら少なくありません。 B帝國とダークエルフ  帝國はこの世界において、ダークエルフの存在を『公式』に認める(認めるどころか優遇すらしています)唯一の国家です。  この『公式にダークエルフの存在を認める』という帝國の行為については、その国々の立場によっていろいろな見方(本音ではの話、『公式』には各国一致しています)がありますが、『帝國は思い切った事をした』という思い(驚き)は共通しているでしょう。  帝國にとって転移最初期にダークエルフと出会い、彼等の協力を得る事が出来たのは『天佑』でした。  彼等の御蔭で帝國は、自分達の置かれた状況を的確に把握出来たのですから。  その後、僅か1年程でまとまった資源が手に入るようになったのも、彼等が資源地帯を探し出してくれた御蔭です。  彼等はこの世界ではいまだ知られていない資源までも見事に探し出したのです。  ……そのために最初の1年は、ダークエルフの諜報能力全てを資源捜索に振り向ける羽目(現在でも諜報能力の半分は資源探索に当てられています)になりましたが。  帝國は、ダークエルフを最高の待遇で遇しています。  王位や領土だけでなく、帝國の爵位までダークエルフに贈っているのです。  贈った爵位は……  王         帝國公爵  王太子       帝國侯爵  長老格の家     帝國伯爵  族長格の家     帝國子爵  族長に準じる家   帝國男爵  よく並び称される獣人では王に帝國侯爵位、王太子に帝國伯爵位が与えられているだけですから、その異常な程の厚遇(現在では『帝國はダークエルフと結婚した』とすら揶揄される程です)が分かります。 ─────────────────────────────────────────────────── 【獣人】 1、マケドニア王国 @建国 昭和17年末 A面積 約1000平方キロメートル B人口 約6万人(昭和18年末現在) C歴史   マケドニアは、元々は森林地帯であり、猟師や少数の山民が暮らしているだけでした。  しかし付近一帯が帝國直轄領となり、更にこの地域が獣人に与えられた事により、大きな変化が起こります。  多数の獣人が移住し、大規模な開拓が開始されたのです。  これが『マケドニア王国』の誕生です。 D産業   未だ軌道に乗っていませんが、農業と林業です。  ですが口の悪い者達は、『役所』が最大の産業だと陰口を叩いています。  これは『マトモに収入を得ている者は役人だけで、他の者達は彼等の消費を当てにして生活している』という、マケドニアの現実を皮肉ってのことです。 E税収   主な収入は帝國からの支給金です。  国内からの収入は極僅かに過ぎません。  この支給金は、帝國直轄領で働く獣人達から得た税金から支払われています。  (これとは別に、建国時にも多額の準備金が帝國より下賜されています) F政治   王政です。建国時の中心人物達が政治を独占しています。 G王国軍  常備兵力1500名。総人口の2.5%にも達しています。  この値は世界的に見て非常に高い、はっきり言って『異常』な程の率です。  これだけでも、マケドニアの『特殊性』が理解出来るでしょう。 H王国の中の帝國   公的機関として外務省が連絡事務所を設置。帝國軍も補助飛行場を保有し、少数の管理部隊を置いています。  また帝國大陸鉄道が鉄道を敷設中です。  私的機関としては、某商社が事務所(材木・その他の品の買い付け、食料・生活必需品等の売却の斡旋)を設置。  こうして見ると、国の収入から輸出入に至るまで、その全てを帝國に依存していることが分かります。  帝國無しでは、明日にでも立ち行かなくなるでしょう。  『国家ごっこ』と揶揄される所以です。 I王国と獣人  帝國直轄領には20万以上の獣人が暮らしていますが、彼等はマケドニア王国には所属していません。  マケドニアが管理しているのは、あくまで自国内の獣人のみです。  ダークエルフは全員スコットランド王国が管理しているのにも関わらず、です。  元からダークエルフは一つの組織(国)に所属していたのに対し、獣人はバラバラだったからというのが表向きの理由ですが、本当の理由は別の所にあります。  マケドニアの建国時、帝國は全獣人(帝國直轄領の獣人も含めて)をマケドニアの管理下に置こうとしました。  しかし思いがけない事態が起こります。獣人が『国内のことは全て獣人のみでやる』と通告してきたのです。  帝國は驚愕しました。  下手をすれば、『叛意あり』ととられかねない所業だったからです。  加えて、国家運営の経験が皆無(それどころか恐ろしく人材の乏しい)の獣人達に、小国とはいえ一国を運営出来る筈もありません。  ダークエルフでさえ、かなりの規模の顧問団を要求(これには彼らの政治的な目論見もあります)した位です。  混乱するのは目に見えていました。  当然、帝國は翻意を促しましたが彼等の決意は固く、最終的には帝國が折れることで合意しました。  これ以降、帝國は帝國直轄領の獣人達をマケドニアではなく帝國の直接管理下に置くことを決定したのです。 ─────────────────────────────────────────────────── 【ドワーフ】 1、ドワーフとは @暮らし  ドワーフは各々保有する鉱山に住居を構えて暮らしています。  人間と同様、ドワーフ社会は階級社会となっていて、各家(一族郎党含む)→族長→大族長というヒエラルキーとなっています。  ちなみに大族長が事実上の最高位であり、彼等の集会たる大部族長は単なる連絡機関でしかありません。  大族長の数は不明ですが、全世界で数十とも数百とも言われています。  各家のヒエラルキーについては、大雑把ですが郎党→分家→本家となります。  分家や郎党の中にも上下関係があり、このヒエラルキーはその家の規模が大きくなるほど複雑化していきます。 A性質  彼等は、外界のことには基本的には無関心――余程の事が無い限り――です。  自分達の領域さえ侵さなければどうでも良いという考えでしょう。鎖国中の帝國みたいなものです。  しかし、かつて――はるか昔ですが――はドワーフ達も自分達の生き残りのため、必死に世界の動向に注意を払っていました。  今の「永世中立」を人間達に認識させたのも、この先人の努力の結果です。  ……まあ現在では、この「永世中立」に胡坐をかき、すっかりかつての政治センスを失ってしまいましたが。  太平を貪る北東ガルムのドワーフにとって、帝國の出現は「黒船襲来」と同じような衝撃を与えたのです。 Bドワーフと魔法金属  この世界では、ドワーフが魔法金属の鉱山と精錬・加工技術を独占し、魔法金属とその関連技術を自らの安全保障の道具として扱っています。  供給量を調整することにより、不当に値を吊り上げ、人間に「宝石並に希少」――確かに希少だが幾らなんでもそこまで希少では無い――と錯覚させ、それを餌に外交・交易を行っているのです。  ……勿論、人間に大量に扱わせては危険ということもあるでしょうが  人間との交易ついては、売るの物こそ少量ですが非常に高値で売るため、その利益は相当なものです。  彼等はこの金で、人間界の旨い酒やら食い物を買い漁り、美食の日々を過ごしています。  (ドワーフの食料自給率は非常に低い為、専ら食料は人間から手に入れています)  ドワーフは、贅沢な食事に慣れきっています。  人がドワーフから輸入する魔法金属に依存しているのと同様、最早ドワーフも人無しではやってはいけないでしょう。 2、北東ガルムのドワーフが帝國に降るということ  さて、北東ガルムのドワーフが帝國に降りました。これは非常に重要な意味を持ちます。  ざっと上げただけで―― @帝國は北東ガルムのドワーフの全面的な技術協力を得られる  旧列強レムリア、ダークエルフ、ドワーフの協力により、帝國の魔法研究が飛躍的に進みます。  またドワーフの協力により魔法金属の加工法・利用法を学ぶことができるようになるでしょう。  (彼等の冶金技術は一部帝國を凌駕する物さえあります) A帝國は希少な魔法鉱物の安定的に供給される。  この世界の魔法金属はドワーフにより独占されています。  彼等の調整により人界にはごくごく少量しか入ってきませんでした。  その独占の一角が遂に崩れたのです! B長い間保っていたドワーフの中立が崩れる  長い目で見れば、長い間保っていたドワーフの中立、ひいては人以外の全種族の人間に対する中立が崩れ始めます。  これはその第一歩です。将来的には、多種族も人の争いに彼等も巻き込まれる様になるでしょう。  エルフ・ドワーフを始めとする異種族は、人間に対して長い間中立を保ち、どちらか一方に肩入れする事などありませんでした。  そのため人間達も、「そういうもの」という常識が作られてきた訳です。  今回の事件はその「常識」を見事にブチ壊しました。  ――等。  まだまだありますが、取りあえずはこれだけ挙げておきます。  今回の事件は、以上の様に歴史的に重大な意味を持つ大事件なのです。 ─────────────────────────────────────────────────── 【エルフ】 1、エルフとは @この世界におけるエルフの地位  この世界におけるエルフの地位は高く、人間の間では一般に、『エルフは高貴な存在』と認識されています。  エルフは自らを、『世界の調和を司る者』『世界の守護者』としており、常にこの世界を観察していると言われています。  (驚くべきことに、この様な夜郎自大的な考え――帝國の本音です――は、この世界の人間達にも認知されています) A、この世界におけるエルフ社会  エルフの社会は各地方でほぼ独立しており、各地方は緩やかな連帯を保っていると言われています。  エルフ社会は基本的に自給自足であり、交易も行なわない閉鎖的な社会です。  エルフにとっては『追放』が最も屈辱的かつ恐怖される刑であることからも、その閉鎖振りが分かるでしょう。  故に、エルフ社会と人間社会との交流は殆どありません。  殆どの人間は、一生エルフと出会うことは無いでしょう。  (物語に良く出てくるハーフエルフも、現実的にはまず存在しません) Bこの世界におけるエルフの身体的特徴  エルフは、ダークエルフに匹敵する程の強力な魔法の使い手ですが、その反面、ダークエルフほどの肉体的強靭さを持っていません。  (ダークエルフはかつて一族ごと追放されたエルフの末裔であり、苛酷な環境を生き抜くため、一族ごと自らを『調整』したなどという噂もあります)  エルフ、ダークエルフともに、老化こそ極度に遅いものの、寿命そのものは人と大差がありません。  ただしエルフの場合、『聖地』にいる限りは不老不死――不死身では無い――でいられるとされています。  肌の色は、エルフはアルピノ並みの白さ、Dエルフは元の世界の白人程度の白さです。 Cこの世界におけるエルフと人間の関係  彼等の他種族に対する態度は非常に尊大です。  彼等を一言で表すとすれば、『選民思想のかたまり』であり、人間など獣の一種だとすら考えています。  エルフは、自然の営みに大きく反する存在――彼等から見て――である人間のことを、快くは思っていません。  (とはいえ、一応自分達に敬意――崇拝者すらいる!――を表していますし、とりあえずは放置しています)  この世界の人々は、エルフのそういう性質を知っていますし、エルフに対する憧憬も大なり小なりありますので、今までそれで済んできました。  ……帝國がやって来るまでは。 Dこの世界におけるエルフと帝國の関係  帝國とエルフとの仲は、御世辞にも良好とはいえませんが、流石に敵対までは至っていません。  帝國も、『エルフと敵対しても損するだけ』と分かっているからです。  (ダークエルフを優遇しているだけでも不利なのに、エルフと敵対したら、それこそ……)  そんな訳で、帝國中央は『帝國の神々は差別しない』という理屈の下、ダークエルフを優遇しつつ、エルフにも礼儀を払っています。  ちなみに以前出てきた『直轄領内へのエルフの立ち入り禁止』は、現地の中央に対する精一杯の抵抗――現地の幹部連には大のエルフ嫌いが少なくない――です。  ……表向きの理由は、『エルフとダークエルフの争いを避けるため』ですが。  帝國のエルフ観は、『対話不能』『己の実力もわきまえぬ蛮族』。  エルフの帝國観は、『生意気な人間』『ダークエルフを保護する邪悪な者』『世界の理を理解せぬ愚か者』 。  ……です。